徳永圀典の「易経・六十四卦」 抄解
私は易経に大変関心を抱き少しばかり学んできた。
トインビーが西洋的思考で行き詰まりこの易の哲学、即ち、
変化の原理で開眼したと故安岡正篤先生は言われた。
[窮すれば変ず、変ずれば即ち通ず]
などは易の最たる哲学である。易の哲学では物事は行き詰まるものはない。
限りなくクリエートして行く事こそ易の根本原理ではないかと自分は思う。
安岡正篤先生の易経講義から徳永流に引用する。
この卦の流れから何を汲み取るかが問題。含蓄と洞察を要す。
平成14年5月1日 徳永圀典
上経
五十易を学べばもって大過なかるべし。 |
五十才くらいから本当の勉強が出来る 論語 |
自然は創造無限。 |
宿命はクリエーションにならぬ立命が肝要 |
欲望は盛んなれ。 |
欲望なくば活動なし、欲望には内省が必須。 |
真の健康人 |
欲望、才能、気力、気迫もあり反省もよくし自己を粛清しテキパキと処理するのが健康人。 |
中する。 |
現実の矛盾を統一してクリエートしていく働き。総合的、統一的、進歩的作用である。中はジンテーゼ、矛盾を統一し、相対的なものを限りなく創造し展開していく |
行年五十にして四十九の非を知り-- |
今までの生活が全部駄目と知り自己改革し六十にして六十化す。改革をし六十になっただけの変化をする。准南子 |
陰陽相対の理法@ |
知能、感情は陽。統一的含蓄的、反省的は陰。この双方がうまく調和すれば解決しないものはない。 |
陰陽相対の理法A |
陰陽は対立すると同時に相待つ、陰は陽を待って始めて中していく、即ち進歩向上する。 |
乾 元亨利貞 |
天行健なり、君子自彊してやまず。 |
坤 君子、厚徳載物 |
徳を厚くし、物を載す。万物生成と包容。 |
屯 万物生成の始まり |
小貞はよろし、大貞は凶。過大は失敗する。 |
蒙 果行育徳 |
童の小貞は不可、キビキビした躾肝要 |
需 成長と教育 |
大童の成長は欲求-需-精神的飲食の必要 |
訟 作事謀始 |
童の成長は欲求-聞いて正しく教えること必要。始が肝要。 |
師 もろもろの複雑と争 |
童の成長と群居は争の源、力が必要。 |
比 いやな者を排斥 |
自分の感情、欲望、好みを主眼とする為悪くなりやすい。 |
小畜 知恵なくば機械化、唯物化する |
童が一定の年齢に達すると内面生活、徳の蓄えの指導を |
履 先輩友人の意見に従い進む |
社会人は童より修めた徳を履む必要。 |
泰 外が陰で内が陽 |
内面に活発な健康力あるも外は控えめ、才能に富み、満々たる迫力あるも外に表さないおだやかに保つのが泰。 |
否 泰の逆 |
外は陽気で活発だが内には大したエネルギーがないから直ぐ行き詰まる。見かけ倒し。 |
同人 手を携えると発展 |
色々と似た者が集まる--志、同業、同窓は力 |
大有 人が共同すれば 力 |
個人の持たないエネルギーと力と内容となる。 |
謙 円満な卦、美しい卦 |
大有から謙遜へ変化すれば、発展を抑制し永続化する。人間も立派な人はゆかしい、能力、才能、金力とも。 |
豫 余裕 |
同人から大有、謙の徳を養うと豫。先が見える余裕。 |
隋 ゆとりは魅力 |
時が来れば退いて自分を修める要。とんだ間違い発生の恐れ。 |
蠱 余裕は間違による腐敗の怖れ警告。 |
腐敗には障害の排除を。謙から予、隋そして蠱と機微がある。この理解が易。 |
臨 華やかな存在 |
余裕には悪い虫、その害を排除すれば新天地の卦 |
觀 俯瞰、迎観、 |
人格者が座につくと参列の人が粛然とすのが仰観、戒めの卦 |
噬こう 飲み込まない、咀嚼を。 |
好事魔多しの卦、十分考える必要。人間、自然、社会の変化に応じて展開してきている。 |
賁 賁臨は臨席より上 |
難問を処理して賁に到る。 |
剥 賁は一度で破れ、剥落する。 |
油断すると剥落しご破算 |
復 剥が一転すれば一陽来復 |
易は極まる事がない。冬来たらば春遠からず。 |
无妄 天の下落雷 |
妄は偽り、これが無いとは、出直しには真実をのこと。 |
大蓄 大きい内容と積極性 |
復元には蓄積と内容の充実を。 |
頤 あご-養うの意。 |
禍の基の「口」と健康の基の「飲食」を節し徳と身体を養う。 |
大過 陽-の過ぎる状況。 |
陽が過ぎ-責任過大-更に大なる努力要す。 |
坎 水は窪みに入る。 |
苦労は人を磨き勇気や力を生み敬を受ける。 |
離 何かにつき従うか |
慎重、厳正で吉慶を得る |
上経終る。乾坤から離まで自然の流れで推敲思索がある。
易は円転滑脱、無限無窮にして数千年の薀蓄がある。
変化極まりない人間学と自然観察による人間の考察、解明がある。
これにより限りない自由が得られる。
明日からの下経となると具体的で実践的なものとなる。
易経の下経
限りなくクリエートして行く事こそ易の根本原理であり人間社会万般に
亙り活用可能と思う。
政治もすぐれた同人を集合し大きい力-大有--謙虚に大いに-能力を
発揮すれば、いかなる困難も突破可能である。この易で我々は精神、
頭脳を豊かに明らかに出来る。
トインビーも易の六十四卦循環の理を知り活眼を開いた。
下経は具体的、実践的で親しみやすくなる。
平成14年6月7日 徳永圀典
下経
咸 感と同義-心のふれあい |
陰陽、男女が感応、結合する事から凡てが始まる。 |
恆 永遠性 |
咸が恋愛、結婚と永遠性即ち恆、次第に雷風が波乱起こすも初心と道を忘れねば影響なし。 |
遯 解脱-のがれる |
遯は深い意味あり雅号に多い。夫婦も結だけでなく解脱が必要。 |
大壮 遯の消極は駄目、活動力盛んなれ。 |
大壮なるも非礼なし。人格、生命、活動は礼による、即ち正しい生活で壮なれ。 |
晉 大壮により進歩あり晉む。 |
遯から大壮となり晉に到るとは自ら持つ明徳を発揮する。これが晉なり。 |
明夷 地の下にいる |
大壮で積極果敢は失敗の懸念、それには裏打ちの陰--反省--が必要 |
家人 敬服 |
熱意と勉強に人が敬服の卦。明夷で正しい生活の結果。 |
けい睨み合う、そむく |
家人の次に「けい」--組織の常、本質的同和の要あり。 |
蹇 悩み、睨み合い |
どおするか、君子身に反って徳を修む。 |
解 赦過宥罪 |
蹇-睨み合いでは解決不能、過失は無罪放免、罪は寛大に軽減し人心が伸び伸びするよう一新が必要。 |
損 人にばかり求めず
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自己抑制 克己的精神、生活を経て初めて得る自由。 |
夬 徳に居て即ち和。 |
こせこせしない無心がいい。 |
こう 陰気上昇 |
陰の卦、余程の注意を要する。組織、行動が乱れの恐れ。 |
萃 あつめる |
乱れたら人物を集め、結束と組織が大切。 |
升 進歩向上。 |
組織活動には徳の発揮を。 |
困 到命遂志 |
升ったから苦しむ。どのような仕事でも一命を投げ打ち初志貫徹を。 |
井 行き詰まった時の対処の卦。 |
その時は事業、生活、人物そのものを掘り下げるしかない。井戸を掘ると泥、泥水、更に掘ると清水、水脈となりコンコンと尽きない水脈にあたる。 |
革 破壊、掃除、捨てる-過去の破壊ではなくその前段階。 |
行き詰まった場合の解決法。代表人物が思い切って因習的生活、思想、行動を改め新体制を。 |
鼎 新建設の後段階 |
三者鼎立で成就。革命は革と鼎の組み合わせで成功。 |
震 雷が二つの卦。 |
震は天には雷、地に地震。改革、革命には困難は必然。恐れと慎みによる徳と反省の要を示す。 |
艮 山二つの卦 |
騒動あればうろたえないで泰然と。 |
漸 戒めの卦。 |
飛ぶ時は秩序を保つ雁の群れ、進歩向上は順を追って成長。 |
帰妹 女が嫁ぐの意。 |
末永く続けるを願いを、虫のいい一時的な考えを排除。 |
豊 最高点の状況 |
月も満ちれば欠ける。豊満に処する道を。 |
旅 危険 |
見聞を広め、知識吸収の楽しみあり。軽率を戒め慎重と真摯を。 |
巽 風が二つの戒。 |
そよそよと風が吹き草木がなびくように人を立て礼を尽くせ。 |
兌 君子以朋友講習 渙 一斉に物が解消 |
助け合い、磨きあい励ましあう卦。 兌の助け合いにより一斉に解決。 |
節 節操 |
自由自在の進歩向上には確りした締めくくりが要る。いわゆる節である。 |
中孚 まこと、信、誠心、虚心。 |
まことは絶えざる創造の力の源泉。卵の孵化は限りなきクリエート。 |
少過 分に安んじ足るを知る。 |
隠徳は控えめ、派手な行動は宜しくない戒め。 |
既済 成就、完成。 |
やがて無限の未来、無限の創造--有終の道。 |
未済 既済の反対。無終。 |
無終であるから、無限に循環する。無限の創造へ。 |
これにて易を終る。上経と下経の64卦により理論的実践的に、無限に進歩向上する為の
原理原則を把握できる。自分の頭で、現実の問題を今の状況は何の卦と判断して対処できる。
易を知るものは卜せず。易は永遠の真理、実践哲学である。
徳永圀典