美しい日本歌 5月 京都の風物
平成17年5月

 1日 嵐山

新涼や雨風晴るるあらし山
ー青木月斗

雪月花ともよい嵐山、秋の紅葉も美しい。渡月橋まで短い間を「大堰川」と粋を感じる。

 2日 嵯峨野 白ばかり小督の墓の手向菊
白草居

小督の局の墓が渡月橋のほとりに、ささやかな五輪塔である。

 3日 大堰川

大堰川河辺の松に言問はむかかる御幸のありし昔を
紀貫之

大堰川の上流が保津川、船は早瀬を下り昔は木材を運んだのであろう。

 4日 嵯峨野

子規―ほととぎすー大竹原をもる月夜
松尾芭蕉

嵯峨野は優美でいかにも京都らしい風情があり特に野々宮の竹林は昔のままで懐かしい。
 5日 天竜寺 春の夜の月より明けて天竜寺
―暁台

天竜寺、足利幕府側の兵站部かもしれないが、昔はもっと広大な規模であったとか。

 6日 祇王寺

薄紅葉仏の墓をいづれとも
―富安風生

祇王寺、仏御前−ほとけごぜーと祇王に人生無常を覚えつつ、昨年秋に友人と紅葉を楽しんだ。

 7日 野の宮

野の宮の蔦吹く宵や秋の声
巌谷小波

再び、野々宮、昔ながら・・

 8日 嵯峨野

寒菊に去来とのみの墓小さし
―神保朋世

落柿舎、向井去来のわび住い

9日 嵯峨野

花見帰るさに見る釈迦堂念仏会―菁々

清涼寺、嵯峨の釈迦堂のことである。
10日 双ガ丘

兼好の立小便やおぼろ月
―巌谷小波

双ガ丘、兼好がこの麓に草庵を結んだ。
11日 御室

仁和寺や足元よりぞ花の雲
―召波

仁和寺、御室の仁和寺、里桜が美しい。

12日 御室

眠たさの春は御室の花よりぞ
―与謝蕪村

御室は花のさかりであった。林芙美子の放浪記。

13日 愛宕山

夏はやき愛宕の茶屋の蓬餅食−たうーべて山を下りしかな
―吉井勇

愛宕山、京都は西の愛宕山、東は比叡山。

14日 清滝

ほととぎす嵯峨へは一里京へ三里水の清滝夜の明けやすき
―与謝野晶子

清滝、念仏寺と一の鳥居を通って・。
15日 光悦寺

光悦寺砂にまじりて濡れている松の落葉をすがしみ拾う
―太田水穂

光悦寺、鷹が峰の芸術村。

16日 下加茂

二三騎は木の下かげにはたはたと扇つかへり下加茂の宮
―与謝野晶子

下加茂、山城の国の第一の社、王城鎮護の神。

17日 糾の森

糾の森かみのみたらし秋澄みて桧皮はひでぬ神のみたらし
―長塚節

糾の森、下鴨神社の社前の森、こんな素晴らしいものが残っている王城の町。京都は流石は千年の都である。

18日 上加茂

月うつる加茂大橋の宵祭
―長谷川かな女

上加茂、いかにも神苑というに相応しい。

19日

まつり見の川をへだてて会釈かな
―坂東蓑助

加茂の葵祭り

20日 一乗寺

うき我をさびしがらせよかんこ鳥
―松尾芭蕉

一乗寺の禅房、金福寺。

21日 北山

つゆけしや簪も杉立つ雲ケ畑
―樟樟蹊子

北山の丸太と周山街道。

22日 白川

散る花の哀れは深しひとり来て疎水辺に聞く法然の鐘
―臼井喜之介

疎水、白川沿いの小径。

23日 南禅寺

来なれたる萩の一路や南禅寺
―河東碧梧桐

南禅寺、山門の楼上に石川五右衛門が棲んだという。

24日 知恩院

時鳥―ほととぎすーあれに見ゆるが知恩院
―夏目漱石

知恩院はわが家の菩提寺本山。

25日 祇園

清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢う人みなうつくしき
―与謝野晶子

清水、松原坂、産寧坂、五条坂、みんないい。

26日 清水寺

石だたみぬれて二人を映しつるそは宵なりき清水の雨
―木下利玄

清水寺、舞台や音羽の滝は天下一。
27日 利休

生くることの清さ深さを知らしめし利休聖のまへに額づく
―吉井勇

千家、利休は武士だと思う。
28日 金閣寺

金閣の池のほとりをわがゆけば紅いふかし梅もどきの実
―新村出

金閣寺、鹿苑寺、禅宗、やはり京都を代表する一つ。

29日 平安神宮

元朝の心きほひをおぼえつつ応天門のまへにたたずむ
―吉井勇

平安神宮、美しい桜やカキツバタは華やか。

30日 円山

夜桜を篝に遠く眺めけり
―釈瓢斉

円山、東山三十六峰の一つ、長楽寺山の一部。
31日 堀川

堀川や家の下行く春の水
―炭太祇

堀川、京都の古い川。