久方ぶりの室生寺奈良県室生寺
もう、十数年ぶりであろうか。室生寺の美観は健在であった。おりしも桜花爛漫、若芽の新緑の瑞々しさが寺の情緒とマッチしていて素晴らしい安らぎを与えてくれた。今年初めて、石楠花も咲いていた。ただ、一部に数年前の台風により大木の倒壊があり無残な形骸が見られたのは残念、しかしこれも、致し方ない地球の形あるものの存在の限界を示すものであろう。それが生成発展の姿であろうから。画像を全て掲載できないのが辛い。

奈良後期の宝亀年間(770〜780)興福寺の僧賢憬(けんきょう)が創建、後に弟子の修円が寺観をととのえたという。室生火山群の一峰の急峻な山腹に伽藍を配し、どの建物も自然石の石段をアプローチにする。
山すそを清らかな室生川が洗い、朱塗りの可愛い橋が俗界とのかけ橋になっている。女人禁制の高野山に対して女性に門戸を開いたことから「女人高野」と呼ばれるようになった。弥勒堂(重文)に弥勒菩薩立像(重文)、衣文の美しい釈迦如来坐像(国宝)を安置する。いずれも貞観時代の仏さま。金堂(国宝)の釈迦如来立像(国宝)、十一面観音立像(国宝)も量感たっぷりの貞観仏。ことに十一面観音は光背、衣装とも極彩色で少女のような愛らしさ。本堂(国宝)に貞観の如意輪観音坐像(重文)がまします。女性たちを見守り続けてきた仏さまである。
五重塔(国宝)は高さ16.1m、屋外に建つ最小の塔。相輪の上部は水煙ではなく宝瓶を置き、その上に天蓋をもうけている。姿だけでなく細部の意匠も可憐だ。この背後から奥の院、御影堂(重文)へ通じるとびきり急勾配の石段が始まる。建物はどれも柿(こけら)葺き、もしくは桧皮葺き。瓦屋根でないのが室生寺の印象をいっそう柔らかくしている。

山 号 宀一山(べんいつさん) 開 基  賢憬  本 尊 如意輪観音  桜・石楠花・紅葉(石楠花と紅葉)