日本、あれやこれや その25 武士道

 1日 凛呼たる道義感

武士道のエッセンスとは何か、それは命を懸けた使命感、一言で言えば、「サムライ精神」であり「武士の魂」である。

名でもなく、利でもない。自ら正しいと思う志の為に命を懸けること、道義を第一義と考える思想。中国とか韓国とかには、欠片もない思想である。
 2日

命が懸かっているから、何事にも迫力がある。勇気も湧いてくる、思い切った大胆なことも出来る。

最近の政治家に最も欠けている資質である。だから中国・韓国にしてやられる。
 3日 サムライ精神

サムライ精神は、日本人が長い歴史の中で育んできた徳目である。

日本人の、真正日本人のバックボーンとなっていたものである。
 4日

新渡戸稲造がベルギーの大学教授と懇談中、「あなたの国の学校では宗教教育はないと言われるのですね。」新渡戸「ありません」

大学教授「宗教なし?それで、どうやって道徳教育するのですか」。新渡戸、咄嗟に即答できなかったが、日本人のそれは「武士道」であることに気づき著作したのであった。
 5日 新渡戸稲造「武士道」の冒頭 それ、武士道は、今なお我々の間に於ける「力と美との生ける対象」である。それはなんら手に触れうべき形態をとらないけれども、それにもかかわらず道徳的雰囲気を香らせ、我々をして今なおその力強き支配のもとにあるを自覚せしめる。 それを生みかつ育てた社会状態は消え失せて既に久しい。しかし昔あって今はあらざる遠き星がなお我々の上にその光を投げかけているように、封建制度の子たる武士道の光は、その母たる制度の死したる後にも生き残って、今なお我々の道徳の道を照らしている」
 6日 武士道の精神とは 仁であり、義であり、勇であり、礼であり、信である。 仁とは慈愛、義とは正しきこと、勇とは義をなすこと、礼とは思いやり、信とは誠のことである。
 7日 サムライは金銭を卑しんだ。 貴族を商業より遠ざくることは権力者の手へ富の集積を予防するものとして、賞賛すべ き社会政策である。とは新渡戸稲造の言である。
 8日 権力と富との分離の武士 権力と富との分離は、富の分配を公平ならしむ。 ローマ帝国衰亡の一原因は、貴族の商業に従事するを許し、その結果として少数元老の家族による富と権力の独占が発生したからである。
 9日 貧しさをむしろ誇り サムライはあくまでも精神的貴族である。貧しさをむしろ誇りとする君子である。 生甲斐は「義をなすに在り」、その為に死することこそ本望と考えられたのである。
10日 サムライ精神 サムライ精神は、古代中国の「士大夫」、西洋の「騎士道」や「ピューリタニズム」に通じる。 それはノーブレス・オブリージュ、即ち、高い身分に伴う義務である。純化された精神である。これが戦後の国会議員諸君に欠けているから国家がおかしくなっているのだ。
11日 道義国家の矜持

明治初期の「欧米使節団」の一行が、仰ぎ見るような西洋文明の隆盛ぶりに、劣等感を持たなかったのは、なぜか。

サムライは物質や金銭にもともと、それほどの価値観を置かなかったからである。英米蘭などは町人国家なり、日本は道義国家だとの矜持が窺われ、道義に置いて日本のほうが欧米より進歩していると自信を抱いていたのである。
12日 欧米使節団のバランス感覚 日本と欧米の文化の比較の実地検証と研修により、地球上のあらゆる事凡てが相対的なもので、各地域に住む人々が時間的・空間的な制約の中に生きており、歴史的・風土的な条件の中で生活していることを認識した。 そして使節団の持つ、和漢洋の教養の,いわば三点測量的観察と分析により、初めて世界の中に於ける日本の置かれている場所を発見した。
13日 欧米使節団のバランス感覚2. 例えば「共和と自由」に関してその利点を認めつつも欠点のあることも指摘している。 固より人為の法に、完全なるものあるべからず。人民に伸べば、政府に縮む、自由に切なれば、法度に慢なる、一得一失、理の自然なり、本質を見抜いている。
14日 欧米使節団のバランス感覚3 処が続けていう、「アメリカ人は、共和と自由の原理を信じて、その弊害を知らず、只、その美を愛し、世界を挙げて、己の国是に就かしめんとす」と辟易気味である。 更に、ウイーン万国博では、欧米の文明は、この改革の深浅に源し、その精華は、発して工芸の産物となり、利源は滾滾として湧出す」これは「黒か白か」の単純な論理ではない、それを越えた哲学が見られる。
15日 欧米使節団・実記「ロシア編」 世界の真形を瞭知し、的実に深察すべし。 世界の真の姿をはっきり認識し、的確に深く洞察すべしと指摘している。虚のイメージに踊らされないて実際に即してよく観察し、上っ面だけでは駄目で深く背景にあるものまで見通せというのである。
16日 大久保利通のリアリズム 使節団、明治の元勲、大久保利通は、常に現実を踏まえて沈着重厚、軽挙妄動から遠い存在であった。 大久保は言う「ややもすれば坐論と言えるものは、実地を末にして道理を本にする故、必ず事上に疎く、その幣全国に及んでは、つまり天下の大患と相成り候事、御座候」すべて政治は「土地風俗、人時情勢の関連のみで考察すべきで、普遍的に妥当する「至良」の政体など認めないというのが大久保の立場であった。
17日 大久保利通のリアリズム2

凡そ国家を経略しその彊土人民を保守するには、深慮遠謀なくんばあるべからず。故に進取退取は、必ずその機を見て動き、その不可を見て止む。恥ありといえども忍び、義ありといえども取らず、これその軽重をはかり、時勢を鑑みも大期する所以なり。

実情を無視して目標に直進するのは空論であり、情況に埋没して目標の展望を欠くのは因循姑息だとしている。不可となれば潔く方針を転換して、決して無理押しはしない。義と見ても時には行わない、恥と見られても時勢を待って事をなすと、現実的である。
18日 サムライの教養の素地

四書五経、記紀、万葉、日本外史らに象徴される漢学や国学であり、古代中国と日本の古典から学んだ「歴史と倫理」に裏打ちされたものであった。

洋学の代表と言われた福沢諭吉でも漢学の素養はたっぷり持っていた。
19日 福沢諭吉 どんな物を読んでいたか、
「経書を専らとして、論語、孟子は勿論すべての経義の研究を勉め、詩経、書経、蒙求、世説、左伝、戦国策、老子、荘子、史記、前後漢書、晋書、五代史、元明史略」
ことに私は左伝が得意で、大概の書生は左伝十五巻のうち三、四巻で仕舞うのを、私は全部通読、およそ十一度び読み返して、面白いところは暗記していました」
20日 久米邦武 佐賀藩の上級武士であり要職を歴任した能吏の父の下で育ち、七才で既に「和漢三才図会」という百科図鑑に熱中、十二才の頃は、父から与えられた史記評林、四書大全、歴史綱鑑、明鑑易知識、誌林良材、前太平記、北条時頼記などを読破している。 久米は「余が父は、儒学を駭薬(がいやく)(おろかな学)と看做して、余が読書熱をさまし、実務に心を寄せしめんとするにあり。然れども、余は才知を発達さするには、古の聖師、賢友に就いて外にその便りはなしと信じたる反動力の衝突により、斜めに史学研究の方針をとりて走りたるなり」と凄まじい向学心である。
21日 武士の教養の背景 歴史から社会のルールや知恵を学び、倫理から人間としてのルールと知恵を学んだ。 素読の繰り返しによる学習方法は、勢い熟読玩味して血肉に至るものとなる。大事な処は暗記してしまうので、身についた真の教養になったのである。西洋文明に遭遇しても、正面からこれを見据えよく対象を把握し本質を洞察し得たのであろう。
22日 リーダーの条件1. 司馬遼太郎の「明治という国家」を読んだ。その中で司馬氏は「明治の政治家は、透き通った、格調の高い精神で支えられたリアリズム」保有者だと言う。 少なくとも日清・日ロ戦争までは現実的を踏まえたリアリズムが生きていて、その上で政策が決定されていた、という。
23日 リーダーの条件2. 明治も末期から大正に入ってくると、愈々目が見えなくなってしまい、現実から足が離れてしまい虚像の上に判断がされるようになつた。 原因の第一は幻影、耳学問、机上の空論、理想論は幻影を生む。現場知らずの観念だけでこねあげられたものは事実から遠く離れてしまう。主義、イデオロギーにより構築された政策は、生きた世界を反映せず、虚影でしかない。
24日 リーダーの条件3. 第二は驕りである。慢心、傲慢である。目標の達成から大地から足が離れてしまう。現実が見えなくなってしまう。 夏目漱石の明治44年、和歌山県での有名な講演は明日に披露する。
25日

リーダーの条件4.

夏目漱石の講演要旨、「現代日本の開化は皮相上滑りり開化である。・・しかし、それが悪いからお止しなさいというのではない。事実やむをえない、涙を呑んで上滑りに滑っていかなければならない。体力脳力ともにわれらよりも旺盛な西洋人が百年の歳月を費やしたものを僅かにその半ばに足らぬ歳月で通過しようと言うのだから、上っ滑りに滑るしかない。

日露戦争に勝ってから国民がすっかりふわふわしてしまつているのはどうしたことか。

「戦争以後一等国になつたんだという高慢な声は随所に聞くようである。なかなか気楽な見方をすれば出来るもんだと思います。」
ここら辺から敗戦への端緒が見られる。

26日 リーダーの条件5. その頃が日本は段々とおかしくなる。明治創業の心を体していた初代の元老が健在の間は「明治という国家」をなんとかうまく操縦していたが、二代三代となると,途端に現実を忘れ、知らず識らずの間に慢心して倣岸になり、目が見えなくなって国 の運転の仕方を間違えてしまった。戦後60年の日本がそうである。
今度は富国気分、すっかりいい気になり、ジャパン・アズ・ナンバーワンなどと煽てられ、驕れる日本人となりバブルに踊って精神もすっかりおかしくなった。
27日 リーダーの条件5. その結果、人格はいよいよ堕落し衰弱し、それから悪化の一途を辿って、今日のような深刻な事態に至って亡国的現象が起きている。 国内に外人の国ができようとしているのに気がつかない。歴史は繰り返す、技術は進歩しても、人間は進歩しない。しっかりした精神を持ち国史を学び教養を積んでゆくしかない。
28日 リーダーの条件6. 1.使命感、明快なる問題意識、目的、ビジョンが必要。
2.トータルに物を見るバランス感覚、木を見て森をみざる傾向が専門化で進んでいる。
3.したたかな現実認識、リアリズムである。単なる知識や情報でなく、歴史と倫理に裏打ちされた真の教養が必要。
サムライ精神とは「君子たるものの精神」「リーダーたるものの精神」である。
日本人の伏流水のサムライ精神の甦りこそ緊急課題、あの颯爽たる気概精神それにより日本人の再生を図らねばなりません。
29日 教育勅語 憲法を補完するもので、日本人の道徳基準とその教育の具体的指針を示すもの。

日本人特有の精神を確保し維持し後世に繋げ得るもので、どこの国の指針にしても通用する実に立派な指針である。

30日 明治の人

明治の人は偉かった。それは、勇気がある、劣等感が見られない、毅然としている、卑屈でない、堂々としていた。

現代の政治家、外交官、大臣、等々は、卑屈であり明治人の真反対である。それは、地位・金銭・経済にその精神成立基盤があるからだ。

明治人の元気の背景に何があるのか。それは第一には「日本が危ない」という危機感、2000年来一度も侵されていない独立が脅かされている。その為には命を張って働こうという気概である。

ウジウジしない、諦めもいい、失敗を恐れずチャレンジする。メゲないで次の手を打つ。その変わり身の早さ、見事であり実に颯爽としていた。見習うべきである。