日本、あれやこれや F
日本の原理2.―日本の神様と地球
平成16年11月
1日 | 産霊―むすひ |
神道の根本原理の一つ、「物を生み成し、造り成す」という自然の働き、或いは摂理を母胎に形成された「産霊」の観念がある。 |
太古以来、自然の根源にあって、自然の内側から支配する、計り知れない活力が神威であろう。それは自然に内在する不滅の活力でもあろう。 |
2日 | 造化三神 |
自然に内在する不滅の活力、創造生成・生殖成長・結合・生産豊穣など、あらゆるものを結び合わせ、生命と形態を創出、若々しい生命力と活力を与える自然の摂理と働きを神格化したものが「産霊」である。その天地万物を創造したのが記紀神話の造化三神である。 |
造化三神とは、原初に「天之御中主神」あめのみなかぬしのかみ。次に「高御産巣日」たかみむすひの神である。最後は「神産巣日」かみむすひの神である。この造化三神は、天地・山河・自然を創成したと伝えている。これを、自然の原理のシンボルと捉えると素晴らしい理解が得られる。 |
3日 | 「甦り」こそ神道の原理 |
「一からやり直す」「生まれ変わって出直す」「死んだつもりでやる」「裸になって出直す」と日本人の口癖。現状打破、打開、再出発の励ましである。 |
過去の自分を捨てて、新しい自分になろうとする。蘇生であり甦りである。絶えざる蘇りこそ神道の原理だと指摘したい。新年の拍手による参拝による気持ち一新、20年毎の伊勢遷宮、本質は同じである。 |
4日 | 水で始まり水で終わる日本人 | 男女の結びーむすひーにより「むすこ」と「むすめ」が誕生する。 |
誕生した時「産湯」で心身を浄め産着を着る。生命の終わりに日本人は「末期の水」を飲み一生を終わる。 |
5日 | 水と神話 | 神話で最初に水源の川上に登場したのが、隠れた日本の覇王といわれ、全国神社祭神の6-7割を占める「スサノオ命」である。 |
「須佐之男命」は島根県斐伊川の上流、鳥髪の地に現れた。清浄な霊威の高い神として甦り、英雄神として仰がれた。天王、また水神として牛頭ーごずー天王とされた。 |
6日 | 「和魂」 「荒魂」 |
神霊の働きには二種類ある。同一神霊に、和魂―にぎたまーと荒魂―あらたまーがあるとした。これは別々に祭ることができる。人々の詣でるのは和魂の働きの加護を祈るためである。 |
和魂―平時の和やかな働きを齎す一面。 |
7日 |
「禊」と |
水はあらゆる罪や穢れを浄化するとした日本人の根本思想。水に神霊を感じ、清浄観と生命観を万葉時代から歌っている。 |
落ち激―たぎーつ走井の水清くあればおきてはわれは行きかてぬかも |
8日 |
神道の浄化法 |
祓いは水・火・塩・幣で行う―水による祓い「禊―ミソギ」 |
水で罪、ケガレ、災悪を洗い流す。「ミソギハライ」禊祓である。 |
9日 |
「ミソギ」の語源 |
伊邪那岐命が伊邪那美命に会いに行きて、黄泉の国から現世に帰り「身が穢れた」と言い、 |
黄泉のケガレを祓う為に、筑紫の日向ーひむかーの橘の小門ーおどーの阿波岐原ーあわぎはらーで(祝詞と同じ)海水に入り身を洗い清めたという「古事記」の伝承がその始まり。 |
10日 |
大嘗祭 |
大嘗祭とは新嘗祭であるが天皇即位の時を特に大嘗祭と言う。古代から連綿と行われてきたものである。 |
天皇は大嘗宮に設けられた廻立殿で、浴衣を着て浴槽に入られ、沐浴・斎戒され、御祭服に召し替えられ、悠紀殿に渡御して祭儀を奉仕される。これはミソギである。 |
祭儀の始めに「御手水」を使われ天照大神に新穀の神饌を供し、御直会をされる。 |
終わると再び「御手水」を使われる。手を洗い口をすすぐ略式のミソギである。 |
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11日 |
心身清浄 |
ミソギは心身を清浄にするもので、今日、風呂に入る、浴衣を着る、食事の前後に手を洗う美風も、この大嘗祭・新嘗祭に由来する風習である。 |
全国の神社の「大祓」「形代流し」「上巳の祓」「流し雛」「雛祭り」「浜下り」など全て水が特別の浄化力を持つという日本人の信仰から生まれた祓いの行事で霊性を高める行事である。 |
12日 |
「火」による祓い |
火により一切の罪・ケガレ・不浄を焼き払う浄化法である。―火を通すことで、あらゆるものが神聖性を得るという観念は神事の「火祭り」、修験道の柴灯護摩、火渡り行事の護摩など広く見られる。 |
山梨、浅間神社の「吉田の火祭り」熊野那智大社の火祭り、鞍馬神社の火祭りなど松明の火の粉を浴びる。ドンド焼きなどで無病息災、除災招福の信仰である。 |
13日 | 「塩」による祓い |
古代から塩により不浄を祓う強い霊力があるとしてきた。海水のエキスの塩を降り注ぐことで人々の心身の浄化と万物を祓い清める特別の浄化力があると信じてきた。 |
塩は大切に神饌、祭り場、祭具、神棚、相撲の土俵などに塩を撒いて清める。料亭などの玄関の「盛塩」、葬式の後の「浄め塩」である。 |
14日 | 「幣」による祓い |
一般的な方法が幣による祓いである。神霊の力が宿っている御幣により罪・ケガレ・災厄を祓う。 |
ミソギが身の浄化に対して、ハライは心の清めを主とする。 |
15日 |
都美1 |
本居宣長は神道の罪について語っている。何事にもあれ、わろきことのあるをいふを、体言―からだごとーになして都々美―つつみーとも都美ともいふなり。 | されば都美といふは、もと人の悪行のみにはかぎらず、病もろもろの禍又穢―きたなきーこと、醜くことなど、其外も、すべて世に人のわろしとて、にくみきらふことは、みな都美なり。 |
16日 |
都美2. |
神の心にかなわないような美でないものは罪であるという。 |
悪行、病気、災禍、不浄だけでなく、我執、利欲、怨念なども罪であるという。 |
17日 | 神道の基本思想 | 「恥を知る」がある。 眼に見えぬ神を畏れ己の愚を戒めた。 |
「己の心に問え。天知る、地知る、我が知る」 |
18日 |
ケガレの回復 |
神道では罪も含めた全てのケガレは、清めることにより回復する。 | ミソギや祓いを行い心身を浄化し神に額づいて反省して祈ることにより、清められる「もとつ心の直きにかえる」のである。 |
19日 | 生霊 いきみたま |
古来から日本人が最も重視してきたのがこの生霊である。「気心がしれている」「やる気がある」「気が合う」「心が優しい」「心がゆがんでいる」。この気や心の深奥にあるのが霊魂である。 |
人間の生命や活力を支配しているのが霊魂であり、霊魂は「気」や「心」のように意識にこない存在。 |
20日 | 「神道は祖先崇拝」 |
「ご先祖様のお陰です」「ご先祖様を粗末にすると祟る」と古来から日本人は言い続けてきた。 |
自然崇拝と祖先崇拝は神道の大きな二本柱である。 |
21日 | 「祖先の霊を最高位にする神道」 | 祖先の霊、或いは祖先につながる神を祖先の「カミ」とする。 |
神・上―と崇めて最高位におく信仰である。仏教に言う精霊ではない。 |
22日 | 「山は神そのもの」 | 日本人の祖先にとり、山は神そのものであった。 | 伊勢は神路山・千古の樹林・五十鈴川。浅間神社は霊峰富士山。諏訪大社は諏訪湖と八ヶ岳。 |
23日 |
「神奈備信仰」 |
神奈美山とは、山容の美しい小型の山をご神体と仰ぐもの。なだらかな山を祭るもの。 |
三輪山・御許山などのような三角形か笠形をした小型の山で、千米以下。緑樹が鬱蒼と生い茂りこんもりとした小高い山や森に特別に神霊が宿るとした。 |
24日 |
「高嶺信仰」 |
たかね信仰。高く聳える高山を神体山と仰ぐ信仰。 |
富士、立山、白山、岩木山などのように円錐形に尖った秀麗な高山。山麓に祭る神社がある。 |
25日 |
「浅間信仰」 |
燃える火山の霊威を畏怖する信仰である。 |
霧島・白山・富士・乗鞍・鳥海・那須・千島等である。 |
26日 | 「天つ神」 |
日本の神々は「天つ神系」と「国つ神系」に分けられる。天地の始まりから次々に姿を現し高天原に住む神々を天つ神と言う。 |
天照大神はその代表的存在。国つ神と併せて「天神地祇」「八百万神」と呼ぶ。 |
27日 | 「国つ神」 | この地上で活動する神々を言う。大国主命はその代表的存在。 |
天照大神が建御雷神―たけみかづちのかみーを遣わし「中つ国は本来天つ神の治める国である」と言い大国主命に国を返すよう説得させるエピソードが「国譲り神話」である。かくして大国主命は出雲に鎮まり、中つ国の経営権は天つ神に移る。即ち天孫降臨であり、天照大神は最高の神格を得るのである。 |
28日 |
「神職の種類」 |
宮司・禰宜・権禰宜・権宮司。 |
神主は神に仕える主の意。古くは天皇の代理という重い役目。禰宜は神に「祈−ねーぐ」。権は仮りの禰宜で補佐役。 |
29日 | 「神殿」 |
「神明造り」は伊勢神宮。「大社造り」は出雲大社。最古の建築様式を伝えている。 |
「千木」は屋根の棟の両端に交差し聳えている。 |
30日 | 「神徳を分業する神々」 |
「海の神」ー大綿津見神―おおわたつみのかみー |
「風の神」ー志那都比古―しなつひこー |