7月--今日の格言・箴言15 荘子
先月は老子であった。老荘というくらいだから続いて荘子となるは必定である。
老子は至って寡黙、荘子はすこぶる饒舌。老子はポツン、ポツンと言う趣であろう。荘子は寓話を織り交ぜながら、これでもか、これでもかと畳み掛けてくる。荘子は手荒い、辺幅を飾らない無造作な格好を思わせる。口が悪い、人はごく善いらしい。不精者だが凝りだすと馬鹿に勢力を出す。荘子は型破りのようである。
7月1日 | 北冥に魚あり、その名を鯤-こん-となす。鯤の大いさ、その幾千里なるを知らざるなり。化して鳥となる、その名を鵬となす。 | 悠々と大空を天翔ける大鵬は世俗の価値にとらわれぬ自由の境地。これが荘子の世界。小さな世界に住む者には想像もつかぬ大きな世界があるのだと荘子はいう。 |
7月2日 | わが生や涯-かぎ-りあり、而して知や涯lりなし。涯りあるを以って涯りなきに隋-したが-う、殆-あやう-き己-のみ。己-すで-にして知をなす者は殆きのみ。 | 生命には限り、知は無限。命の有限を度外視して知の赴くままでは安らぎはこない。この道理を承知していても知から離れる事はできない。知の為に心とか生の充足が妨げられてはならぬ。 |
7月3日 | 時に安んじて順に処-お-れば、哀楽入る能わず。 | 時のめぐり合わせに身をまかせ、自然の流れに従って生きるなら、悲しみもも喜びにも心をかき乱されることはない、それが理想だと荘子はいうのだが・・。 |
7月4日 | 徳は名に蕩-うしな-われ、知は争いに出づ。名なるものはあい軋-きそ-うなり。知なるものは争いの器なり。二者は凶器にして、尽くし行なう所以にあらざるなり。 | 人間の徳は名誉にとらわれる事により喪失、知は争いにより発達した。名誉心にとらわれ知に頼っている限り、人間同士の対立は激化するばかり、名誉心も知も相手を傷つけ自らを滅ぼす凶器だ。 |
7月5日 | これを聴くに耳を以ってするなくして、これを聴くに心を以ってす。これを聴くに心を以ってするなくして、これを聴くに気を以ってす。 | 外界の変化に柔軟に対応するには耳より心で聴く、いや心より気で聴くことが必要だという。なぜなら、荘子はいう。「聴くは耳に止まり、心は符に止まる。気は虚にして物を待つものなり」と。あらゆる事象をあるがままに無心に受け入れることか。 |
7月6日 | 蟷螂-とうろう-その肘を怒らして以って車轍に当たる。その任に勝-た-えざるなり。 | 自分の力を考えないで巨大なものに立ち向かうのは無謀。凶暴な権力者に対する心構え。 |
7月7日 | 人みな有用の用を知りて、無用の用を知るなきなり。 |
世間で無用と思われているものこそが実は有用なのだ、それが発見できたら人生の視野が大きく広がるであろう。 |
7月8日 | 立ちて教えず、座して議せず、虚にして往き実にして帰る。 | 講義するでもない、議論するでもない、押し付けがましいことは何一つしないのに、それでいて彼のもとに行けば、なにかしら心が満たされるような思いで帰ってくる。素晴らしい、こんな人間でありたいものだが・・。 |
7月9日 | その異なるものよりこれを視れば、肝胆も楚越なり。その同じきものよりこれを視れば、万物もみな一なり。 | どれ一つとして違うという観点でみればみな同じものはない。あらゆるものは同じの観点でみれば万物はすべて一つである。勝った、負けたも道を体得した者からみれば本質的な違いはないという。あらゆる事態を虚心に受け入れよということ。 |
7月10日 | 自らその過ちをかざりて、亡-うしな-うべからずとおもう者はおおし。その過ちをかざらずして、存すべからずとおもえる者は寡-すくな-し。 | 人間学のイロハ。エクスキューズは社会人の信用に関わってくる。自分には厳しく対処の要を説く。 |
7月11日 | いかんともすべからざるを知りて、これに安んじて命にしたがうは、ただ有徳者のみこれをよくす・ | 命とはどんなに努力しても人間には、どおにもならないものだ。天の意志、神の摂理か。これを天命という。じたばた動き回って却って傷口を大きくする。命を自覚し余裕を以って対処する。努力しない事ではない。 |
7月12日 | 徳長ずる所あれば、形忘るる所あり。人はその忘るる所を忘れずして、その忘れざる所を忘る。 | 内面の徳が充実してくるにつれて外面的な、形式的なものにとらわれなくなって行くものだ。 |
7月13日 | 天のなす所を知り、人のなす所を知る者は、至れり。 | 天を支配する法則を究めれば一切の変化に順応して生きることができる。人を支配する法則を究めれば、知の限界内で無理なく知を働かせ得る。荘子は然し、知には大きい限界があるという。常に変化して止まない対象だからである、知を越えた真知が必要という。 |
7月14日 | 古の真人は、生をよろこぶことを知らず、死を悪むことを知らず。その出-しゅつ-もよろこばず、その入-にゅう-もこばまず。粛然として往き、粛然として来るのみ。 | 逆境にも不満を抱かず、栄達を喜ぶでもなく、万事あるがままにまかせて、作為をほどこそうとしない。失敗しても気に病まず、成功しても得意がらない。荘子的道を体得した真人の世界。 |
7月15日 | 四人あい視て笑い、心に逆らうことなし。遂にあい与-とも-に友となれり。 | 莫逆の友の出典。無が頭、生が背骨、死が尻である人間。死と生、存と亡が一体であると悟った人間。そういう人間はいないものか。いれば喜んで友達になるんだが・。四人は頷きあい友人となる。 |
7月16日 | 回、坐忘せり。 | 五体から力を抜き去り、一切の感覚を無くし、身も心もうつろになりきって、道の働きを受け入れることらしい。 |
7月17日 | 小人は即ち身を以って利に殉じ、士は即ち身を以って名に殉じ、太夫は即ち身を以って家に殉じ、聖人は即ち身を以って天下に殉ず。 | 小人は利益の為に命を犠牲にし、士人は名誉の為に、重臣はお家の為に、聖人は天下の為に命を犠牲にする。 |
7月18日 | 至徳の世は、その行くやてんてん、その視るやてんてんたり。 | てんてんとはせかせかしない。心の充足感のない状態。物は充足されても心に余裕がないから、せかせかとした表情となる。 |
7月19日 | 唇つくれば即ち歯寒く、魯酒薄くして邯鄲-かんたん-囲まる。 | 原因があるから結果がある。世の中には無関係のようで密接な因果関係で結ばれている。 |
7月20日 | 鈎-こう-を盗む者は誅せられ、国を盗む者は諸侯となる。 | 小物の盗人は誅殺されるが国を盗んだ大泥棒は大名となり大きな顔をしている。現代にも当てはまる。 |
7月21日 | 上-かみ-たるもの誠に知を好みて道なければ、即ち天下大いに乱れん。 | 上に立つ者が自然の道に反すれば人々は利己的になり天下は混乱に陥る。企業経営にも当てはまる。最低の道とはケジメかもしれない。 |
7月22日 | 衆に出ずるを以って心となす者は、なんぞかって衆に出でんや。 | 衆に出ず、などという意識を捨ててかからねば真の指導者たりえない。おれがおれがでは喜んで迎えられない。 |
7月23日 | 男子多ければ即ち懼れ多し。富めば即ち懼れ多し。壽-いのちなが-ければ即ち辱-は-じ多し。 | 男の子が多いと心配ごとばかり、金持ちになると面倒なことばかり、長生きすると恥辱ばかり増える。 |
7月24日 | 機会あれぱ必ず機事あり。機事あれば必ず機心あり。 | 文明の利器は便利だが、下手すると心まで機会の虜となり人間本来の良さが無くなる。頂門の一針だ。 |
7月25日 | 身をこれ治むる能わざるに、何ぞ天下を治むるに暇あらんや。 | 私利私益の土井たか子、田中真紀子、辻本。小沢一郎の民主党吸収始め政治家連中は私益ばかりで政治家の体をなしていない。 |
7月26日 | 官施してその宜しきを失わず、抜挙してその能を失わず。 | 人材の登用には適材適所の実、エコヒイキなど組織崩壊の元素、公正な人事こそ発展の要。 |
7月27日 | 三軍五兵の運は、徳の末なり。賞罰利害、五刑の辟は、教えの末なり。 | 荘子は、理想の政治とは徳を体得したトップが行うとした。無為の政治である。軍事万能、法律万能主義は徳の末の政治という。これは米国とか泥沼の日本政治への警告であろう。 |
7月28日 | 我を牛と呼べばこれを牛と謂わん。我を馬と呼べばこれを馬と謂わん。 | どう言われ様と、他人に、はい、はいそうですかと少しも逆らわない。意識的にそうしているのではない。自分の主体性はしっかり持っていますからね。 |
7月29日 | 君の読む所のものは、古人の糠魄-そうはく-のみ。 | 本当の所は言葉に言い表わせない、本も昔の人のカスみたいなもの。一面の真理。 |
7月30日 | 富を以って是となす者は、禄を譲る能わず。顕を持って是となす者は、名を譲る能わず。権に親しむ者は、人に柄を与うる能わず。 | 何を拠り所にして生きるかにより随分違う。荘子の言に耳を傾ければ違った視野が開ける。 |
7月31日 | 平易恬淡なれば則ち憂患入る能わず、邪気いる能わず。故にその徳全くして神かけず。 | あっさりしてこだわりがなければ、心が安らかで無欲の状態、そうなれば悩みや苦しみもは入らない。だから徳も損なわれない、心の働きも生き生きする。 |