天下の名湯・秘湯三昧「にごり酒」青森県十和田湖町奥瀬猿倉
八甲田大岳に登山する前日は実に秘湯らしい情緒と日本の秘密に触れた思いがした素敵な夜であった。
秘湯・猿倉温泉
八戸からレンタルカーで午後6時頃到着した猿倉はまだ陽があった。親切な女将さんの歓迎で、大急ぎで露天風呂に急ぐ。昔からの露天からはミズバショウの群落が見えますよという。私の最高に好きな白濁の硫黄泉である。憧れの秘湯にゆっくりと旅の疲れを癒した。この温泉は飲めるので少しづつ頂いた。夕食には流石に新鮮な山菜のものが多く名前は忘れたが、とても美味しい。ビールのお替りをしていたら、宿の主人が、差し上げますと言い、自分で醸造した「どぶろく」を風流な徳利で持参された。にごり酒は自家用でお金は頂けないと言われる。私はこの年まで「どぶろく」を飲んだことがない。一瞬躊躇ったが、ままよ、ここは東北の秘湯ではないかと、口につけると、なんとまあ、そのほろ苦いような、親友に言わせると、醸造酵母の味やら、まろやかな微妙な味ではないか、醗酵過程そのままが混然としていると。私は「これぞ日本の味」だと確信して、一気に「どぶろく」に傾倒した思いであった。この複雑な、表現の難しさの中にこそ日本文化があような思いであった。米の文化の究極は清酒でもない、この「濁り酒」ではあるまいか、私には強烈な体験であった。程よい気分にしてくれるいいお酒、心友も酒は強い、こころゆくまで酔いしいれた夜であつた。
   
「にごり酒、にごれるまでに酔いしいれ 語り明けたり猿倉の夜は」

泉質 石膏硫化水素泉(硫黄泉) 冬季休業 
酸ヶ湯温泉
八甲田大岳とか田代湿原を終えるとこの、酸ヶ湯に入ると決めてた。俗にいう千人風呂であり、過去、ここを通過しても入湯していなかった温泉である。いやあ、実に驚いた、これぞ「日本伝来の温泉」であろう。勿論、混浴である。髪など洗えないのもいいではないか。悠々と、しっかりした白濁に温泉は身体の隅々まで浸透して温まる。数日はお湯に入らぬほうがいいらしい。大満足の酸ヶ湯であった。
卓越した効能と豊富な温泉の湧出量、広大な収容施設、清純な環境、交通の便、低廉な料金等が認められ、昭和29年に数ある全国温泉のモデルケースとして国民温泉第1号に指定。酸性硫黄泉(含石膏、酸性硫化水素泉)(緊張低張性温泉)

蔦温泉

酸ヶ湯から焼山温泉に行くのだが、途中の蔦温泉にも入りたいと親友は言う、親友の言葉には深く耳を傾けなくてはならぬ。ここは経験のある私だが、透明な湯である。高い天井、湯船の底の板の大きなのはブナの樹であり、大きな隙間から、ホロロン、ホロロンと大粒の泡が湧いてくる。大ホテルとか温泉の紛いものではない、スコブル付きの温泉であり親友も大満足であり心から喜ぶ。焼山の宿の温泉は、猿倉温泉から引いてあり、今夜の宿の温泉にはとても今夜は入る気にならなかつた。
南八甲田連峰赤倉岳の東麓、ブナの原生林にひっそり佇む一軒の温泉宿。旅館周辺にはブナの森を縫うように作られた「蔦沼巡り散策路」があり、四季を通し自然を身近に堪能できる。十和田湖、八甲田山の中間に位置し、観光の拠点としても好評。明治大正時代の文豪、大町桂月がこよなく愛し、晩年を過した宿。

将に登山三昧、温泉三昧の一日であった。平成16年5月25日