鳥取市自治基本条例」素案

この条例素案は、公募による市民等で構成する「鳥取市みんなでつくる住民自治基本条例検討委員会」が作成し、昨年123日に市長へ提出されたものです。
目次
 前文
 第1章 総則(第1条−第3条)
 第2章 自治の基本理念(第4条)
 第3章 自治運営を担う主体の役割及び責務等
  第1節 市民(第5条・第6条)
  第2節 事業者等(第7条)
  第3節 議会(第8条−第10条)
  第4節 市長等(第11条−第13条)
 第4章 協働及び参画(第14条−第16条)
 第5章 コミュニティと住民自治(第17条)
 第6章 市政運営(第18条−第29条)
 第了章 市民意思の表明及び尊重(第30条・第31条)
 第8阜 自治体及び国等との連携協力(第32条)
 第9章 条例の見直し(第33条)
 附則
 鳥取市は、唱歌「ふるさと」の情景を彷彿とさせる緑豊かな自然や千代川の清流、鳥取砂丘を代表とする美しい景観に恵まれています。
 その中で先人たちは、山の幸、海の幸など自然からの豊かな恵みを受けながら古代より因幡の国の歴史や多彩な伝統文化をはぐくんできました。
 そして、幾たびかの自然災害にも英知と不屈の精神をもって乗り越えて、今日まで生活を営んできました。
 私たちは、先人から受け維いだ幾多のかけがえのない財産に感謝しながら、将来を担う子どもたちが夢と希望を持って健やかに成長し、心豊かに暮らせるまちをつくることにより、これらの財産を次世代に引き継いでいかなければなりません。
 このため、私たちは、鳥取市民としての誇りを持ち、自治の主体が自らであることを目覚し、コミュニティを守り育てながら協働して地域の課題解決に向けて努力する決意をしました。
 ここに、住民自治の基本理念を確立し、個人の尊厳と自由が尊重され、豊かな地域社会を創造するために、市の最高規範としてこの条例を制定します。

第1章 総則
(
目的)
1条 この条例は、鳥取市の自治の基本理念を明らかにするとともに、市民、事業者及び市について、その役割及び責務を定め、参画と協働のまちづくりを推進することにより、もって将来に向けて豊かな鳥取市づくりに資することを目的とします。

(
定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意味は、当該各号に定めるところによります。
(
)市民 鳥取市に在住する人、鳥取市で働く人及び学ぶ人をいいます。
(
)事業者等 鳥取市内において、営利、非営利の活動及びその他の活動を行う個人又は団体をいいます。
(
)参画 市民として市の政策立案から実施、評価までの過程に主体的に参加し、意思決定に関わることをいいます。
(
)協働 市民、事業者等及び市がそれぞれの役割と責任を自覚し、お互いの主体性を尊重しながら、対等の立場で協力し合うことをいいます。
(
)コミュニティ 地域性や共同体意識を基盤としたつながり及びそのつながりのもとで自主的に形成された組織をいいます。

(最高規範性)
第3条 この条例は、市政に関する最高規範であり、議会、市長及びその他の執行機関は、他の条例及び規則等の制定又は改廃及び運用に当たっては、この条例の趣旨を尊重し、この条例との整合性を図ります。
2 市民、事業者等、議会、市長、その他の執行機関及び市の職員は、この条例に定められた権利、役割及び責務を最大限に尊重し、遵守します。

第2章 自治の基本理念

(
基本理念)
第4条 市民が自治の主体であることを基本として、豊かな地域社会を創造します。
2 市民、事業者等及び市は、市政に関する情報を共有し、協働のまちづくりを推進します。
3 住民自治は、市民及び事業者等の責任と参画のもとたゆみない努力により維持します。

第3章 自治運営を担う主体の役割及び責務等

第1節 市民
(
市民の権利)
第5条 市民は、人として尊重され、自由と平等の立場で、次に掲げる権利を有します。
 ()市が保有する情報を知ること。
 ()まちづくりに参画すること。
 ()行政サービスを受けること。

(
市民の責務)
第6条 市民は、自らが自治の主体であることを自覚し、次に掲げる責務を負います。
(
)まちづくりに参画し、協働するに当たり、自らの発言と行動に責任を持つこと。
(
)行政サービスに伴う負担を分任すること。

第2節 事業者
 (事業者等の権利及び責務)
第7条 事業者等は、第5条に定める権利を有し、地域社会を構成する員として地域社会と協調し、その責務を認識して、協働のまちづくりに寄与するように努めなければなりません。

第3節 議会
(議会の設置)
第8条 市に、議事機関として、選挙により選ばれた議員で構成される議会を設置します。

(議会の権限及び責務)
第9条 議会は、市の重要事項の意思決定、市政に関する全ての事項に対する監視、政策の立案及び市政への助言を行います。
2 議会は、前項の権限を行使するに当たり、市民及び事業者等(以下「市民等」といいます。)の意思が十分反映されるよう必要かつ十分な審議を行うとともに、議会活動について市民等に情報を公開するなど、市民等に開かれた運営を行います。

(
議員の責務)
10条 議員は、市民の負託に応えるため、地域課題や市民の要望を十分に把握するよう努めます。

第4節 市長等

(
市の責務)
第11条 市は、自治の基本理念に基づき、総合的かつ計画的な市政運営を行うよう努めなければなりません。
2 市は、市民等の自主的なまちづくり活動を促進し、協働のまちづくりを推進しなければなりません。
3市は、重要な政策等の立案、実施及び評価の各過程において、市民等へわかりやすく情報を提供しなければなりません。
4 市は、多様な方法により、市民等への市政参画及び協働機会の提供に努めなければなりません。
5 市は、組織間の連携及び調整を図り、市民への総合的な行政サービスの提供に努めなければなりません。

(市長の権限及び責務)
第12条 市に、選挙により選ばれた市長を設置します。
2 市長は、市を代表し、市政を執行します。
3 市長は、市の職員(以下「職員」といいます。)を適切に指揮監督し、リーダーシップを発揮するとともに、市政の課題に的確に応えることのできる知識と能力を持った人材育成を図り、効率的な組職づくりと市政の運営に努めなければなりません。
4 市長は、協働のまちづくりを推進するため、市民等の意見を反映した透明性のある聞かれた市政運営に努めなければなりません。
5 市長は、事務の管理及び執行に当たっては、公正かつ誠実な職務執行に努めなければなりません。
6 市長は、市政運営の方針を明確にして、その達成状況について、市民等に報告しなければなりません。

(
職員の責務)
第13条 職員は、市民の負託に応え、法令を遵守し、公正かつ誠実で能率的に職務を遂行しなければなりません。

2職員は、職務の遂行に必要な知識及び技能の向上に努めなければなりません。
3職員は、協働の視点に立ち、市民等との信頼関係を築くよう努めなければなりません。
第4章 協働及び参画
(
協働の原則)
第14条 市民等及び市は、相互理解と信頼関係のもとに、協働のまちづくりに取り組むよう努めます。
2 市は、協働を推進するに当たり、コミュニティを含めた主体的な活動組織に支援を行うものとします。

(
参画の原則)
第15条 市は、市民等が参画しないことによって不利益を受けることのないように配慮しなければなりません。
2 市は、市民等の参画の権利を尊重し、市民等がまちづくり活動に参画できる機会を保障しなければなりません。
3 前2項に定めるもののほか、参画に関する手続きその他必要な事項については、別に定めます。

市民自治推進委員会
第16条 市長は、この条例の趣旨を徹底し遵守するとともに、市民等の市政への積極的な参画及び市民等と市の協働のまちづくりを一層推進するために、市民自治推進委員会(以下「委員会」といいます。)を設置します。
2 委員会の構成、委員の選出その他委員会の運営については、別に定めます。

第5章 コミュニティと住民自治
(
コミュニティと住民自治)
第17条 市民等は、コミュニティが住民自治に重要な役割を果たすことを認識し、コミュニティ活動への積極的な参加に努め、コミュニティを守り育てます。
2 コミュニティは、まちづくりを効果的に推進するために、相互に連携及び協働することが重要であるとの認識のもと、活動の活性化に向けて取り組みを進めます。
3 市は、コミュニティの自主性を尊重し、協働のまちづくりに取り組むとともに、その活動に対して、財政的な支援その他必要な措置を講じるよう努めます。
4 市は、地区公民館をコミュニティ活動の拠点施設と位置付け、充実及び強化に努めます。

第6章 市政運営
(
市政運営の方針)
第18条 市は、市政の透明性を高め、市政に市民等の意思を適切に反映することを基本とした市政運営を行います。

(
組織)
第19条 市は、社会情勢及び地域の課題に柔軟に対応した政策を実現するため、効率的かつ機能的な組織を編成するとともに、常にその見直しに努めなければなりません。

(
総合計画に基づく市政運営)
第20条 市は、自治の基本理念にのっとり、将来展望を示す総合計画を策定し、長期的かつ計画的なまちづくりを推進するものとします。
2 市は、この総合計画について、変化する社会経済状況等に的確に対応させるため、適宜検討と見直しを行い、その結果について市民等に公表するものとします。
(
財政運営)
第21条 市長は、総合計画に基づいた中長期的な展望に沿った計画的かつ健全な財政運営を図り、財政状況を公表することで透明性を確保します。
2 市長は、予算編成過程において、市民等の要望等を反映させるよう努めるものとします。

(
情報を求める権利)
第22条 市民等は、市の保有する情報について、市にその公開と説明を求めることができます。
2 市は、前項に定める市民等の請求に対し、適切に応じなければなりません。
3 前2現に定めるもののほか、市の保有する情報の公開に関し必要な事項は、別に定めます。

(
情報の共有化)
第23条 市は、市民等の知る権利と市政への参画を保障するために、市の保有する情報につき、市民等との共有化を積極的に推進しなければなりません。

(
個人情報の保護)
第24条 市は、市民等の個人の権利及び利益が侵害されることのないよう、個人情報の保護に努めなければなりません。
2 前項に定めるもののほか、個人情報の保護に関し必要な事項は、別に定めます。


(附属機関等への参加)
第25条 市は、審議会、審査会及び調査会等の委員(以下「委員」といいます。)を選任する場合は、公募しなければなりません。
2 市は、前項の定めに関わらす、法令等の定めにより全部又は一部の委員の選任が公募に適さない場合又はその他正当な理由がある場合は、この限りではありません。この場合において、市はその理由を明らかにしなければなりません。

(意見、要望及び苦情等への対応)
第26条 市は、市民等からの意見、要望及び苦情等(以下「意見等」といいます。)に対して迅速かつ的確に対応しなければなりません。
2 市は、題せられた意見等について、その事実関係と原因を調査し、適切な対策を講じるとともに、施策等の改善に反映させなければなりません。

(
行政手続)
第27条 市は、市政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、市民等の権利利益の保護に努めなければなりません。
2 市は、条例等に基づく処分及び行政指導並びに市に対する届出に関する基準及び手続きを公表するとともに、市民等への説明に努めなければなりません。
3 前項に定めるもののほか、行政手続に関して必要な事項は、別に定めます。

(
行政評価)
第28条 市は、効果的で効率的な市政運営を着実に進めるため、総合計画等に基づく施策等について中立かつ公正な基準のもと内部評価を行うとともに、外部評価を受けることとします。
2 市は、前項の評価の結果を市民等に公表するとともに、施策等に適切に反映させます。

(
説明責任)
第29条 市は、政策の立案から実施、評価に至るそれぞれの過程において、その経緯、内容及び効果等について市民等に説明しなければなりません。

第7章 市民意思の表明及び尊重
(
市民政策コメント)
第30条 市は、市政の意思形成過程における公正の確保と透明性の向上を図るため、市民生活に重大な影響を及ぼす計画等の策定及び改定又は条例等の制定及び改廃を行う場合は、当該事項に関する情報を市民に提供し意見を求めなければなりません。ただし、緊急を要するときはこの限りではありません。
2 市は、前項の定めにより提出された意見に対する市の考え方を公表しなければなりません。
3 第1項に定める意見の聴取に関する手続きその他必要な事項については、別に定めます。

(
住民投票)
第31条 市は、鳥取市にかかわる重要事項について、直接、住民(永住外国人を含む鳥取市に住所を有する18歳以上の者をいいます。以下、この条において同様とします。)の意思を確認するため、住民投票を実施することができます。
2 住民は、その総数の10分の1以上の者の連署をもって、その代表者から市長に対し、住民投票の実施を請求することができます。
3 市長は、前項に定める請求があった場合は、これに意見を付し、議会に付議するものとします。
4 市長及び議会は、住民投票を発議することができます。
5 市は、投票に関わる事案について、適切な判断ができるよう必要な情報を提供しなければなりません。
6 市長は、市民等に住民投票の結果の取り扱いについてあらかじめ明らかにするとともに、その結果を尊重しなければなりません。
7 住民投票の実施に当たっては、投票手続き、投票成立要件、投票期日、投票結果の公表及びその他必要な事項は、その都度別に定めます。
                                                             
第8章 自治体及び国等との連携協力

  (自治体及び国等との連携協力)
第32条 市は、国及び県と対等であり、かつ、協力関係であることを踏まえ、市民全体の利益のためにその権限を行使します。
2 市は、積極的に他の市町村等と連携を図り、共通する課題解決に努めます。


第9章 条例の見直し
  (条例の見直し)
第33条 市は、この条例の施行の日から4年を超えない期間ごとに、本条例の基本理念を踏まえて、各条項が鳥取市にふさわしく、社会情勢に適合したものかどうかを検討します。
2 市は、前項に定める検討の結果を踏まえ、この条例及びこの条例に基づく制度等の見直しが適当であると判断したときは、速やかに必要な措置を講じます。
3 市は、第1項に定める検討及び前項に定める必要な措置を行うに当たっては、市民等の意見を反映するための必要な措置を講じます。

  附 則
この条例は、平成 年 月 日から施行します。