登山家の手記  (本人A) (62才男性C) (55才女性B)  (40才女性D)  (リーダーE)

今回の登山は凄いリーダーなのでビックリした。いくら仕事といってもフラフラの人を小屋まで導く指導力に感激したよ。でもああいう岩登りは天性のようなものがあるのだそうだ。

今回女性Bさんはクサリをつたって降りるところで足が下にとどかなくてクサリにぶら下って
           「助けてーもう手に力がはいらんーー助けてー」
と何度も叫ぶのには私も、もしあの手がはなれて落ちてしまったらどうしようと思って思わず叫んだよ。
           「リーダーが今助けに行きてるからもう少しシッカリ頑張ってー」 とね。

62才男性C60才女性Bの二人が脱落し奥穂高で下山してから、リーダーが言った。
 「あの時、60才女性Bが腰を落とせば自然に足は下につくものが、怖がってああ硬くなってしまったのではもうこれからは岩山は無理だね」と言っていたよ。
天狗の頭からの下りは60才女性Bもリーダーとロープを繋いでの行動だよ。だから時間のかかる事。

それと 62才男性Cもジャンダルムまで来た時にフラフラだし
 「今日の天気じゃヘリも来てくれないし、もう歩ける元気も気力もない」と言い出したんだよ。」
それからリーダーとその62才男性Cは腰にロープをまいての歩きだよ。

私は、本当に無事奥穂高小屋まで行けるのか?心の中で祈ったよ。
  「どうぞ62才男性Cを歩かせてあげてください」と。
そしてもしこの寒さの中で一晩過ごすとなると 「自分の着るのものは大丈夫かなぁーとか、食料はまぁー、今の段階では朝までは大丈夫だ、とか、矢張り、ホカロンの大きいのを持ってくれば良かった」とか。色々な事が頭を過って行くのだよ。

でもあのリーダーはビクともされずに 「奥穂高岳まで行けば後はいくら真っ暗になろうと小屋までは下ったら直ぐだし心配は何もない」と毅然とされてて流石だと思ったよ。

それにしても晴れていたなら、心は心配いらない登山が、ガスがかかっている時は気持ちも何もかも闇の中にいるような気分だったよ。歩けど歩けど岩山を登って下ってね。

足も知らない間に岩にぶつけていて青あざが何箇所にもあるよ。そして指先はささくれて髪を洗うのさえ痛いし、赤く腫れているよ。
その手も二日目は自信がついて軍手をして岩を握る事が出来できるようになり慣れて自由自在に岩をつかめるまでになったよ。最後にはその軍手さえ指先は穴があいてしまったけどね。
西穂高から槍ヶ岳そして今日の新穂高温泉まで長い長い四日間だった。素晴らしい、とても満足した登山だったよ。
で今朝は4時40分出発で3時40分起きだったのでもう眠くなってきたよ。   (本人A記)