登山ひと言  山の温泉巡り      

今年に入り、県内外の山々を既に75日歩いた。山を歩いていて、いろいろ思う。それは、哲学していることでもあるし
、他愛無い思索でもある。しかし、森羅万象の一つの在りのままの姿を観察していることでもある。
また、自分自身を内省し、言動を反省し、日常生活を色々と思案する場所でもある。友達を思う場所でもある。
「花言葉」というのがある。山には無数の花や植生がある。花言葉とは、花に思いを託すことなのであろう。
私も山への思いをとりとめなく綴ってみたい。                平成23年6月1日  徳永圀典

山を想えば人恋し 人を想えば山恋し 百瀬慎太郎

1  山は癒し 山には入ると癒される。山には健康ホルモンが満ち溢れている、四季を問わない。安らぎがある。
2 私の花 花言葉は人の花への思いいれであろう。
私には、薄い紫がかった薄いピンクの「岩うちわ」の花と、「やや薄い紫色のヒメシャジン」の花には深い思いいれがある。
3 山を愛する者は寿し。 寿と書いて「いのちながし」と読む。
孔子は「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。知者は動き、仁者は静かなり。知者は楽しみ、仁者は寿し」と云われた、論語である。
4 フィトンチッド 森林地帯にはフィトンチッドが流れており健康にいい。畳一畳くらいのブルーの生地に「フィトンチッドを浴びよう」と白く染め抜いて、住友ハイキングクラブとした大きな旗を作らせた。そして3回以上の出席者には、住友ハイキングクラブのバッジを手交したのは本店人事部在勤中、行友会山岳会長をしていた30年前の時である。山の辺の道を歩き、神戸山手女子大学の某教授に古代の話をしてもらったこともある。謝礼は10万円だった。
5 花の名前 私には花の先生がいる。生徒が悪いので中々記憶できぬが大変有難い存在であり心から尊敬している。分らない花とか木は、帰宅してからが勝負で、それをやらないで現場だけでの記憶は中々出来ぬ。その点、先生の帰宅してからの解明努力には本当に徹底している。だから覚えられるのであろう。
6 山足 谷足 私が「登山学プロフェッサー」と呼ぶ親友は有難い存在だ。花だけではない、山と谷の細い道などで、この山足と谷足を使うことができた。山側の足は通常だが、谷サイドの靴の先を少し谷サイドに向けて歩くのだ。スリップ防止だ。山は科学だと何時も思うようになったのも親友教授のお蔭だ。
7 シロヤシオ この樹の花は最高に好きだ。親友と最初に見たのは大峯奥駈道の深奥の山であった。それと凄い大樹のシロヤシオの群生を見たのは、大台ケ原のある大高山脈の深奥にある池小屋山山頂であった。もう二人で感激した。この花は愛子内親王の紋所らしいが、五葉ツツジとも言う。池小屋山には落差80米ある轟々たる滝の真上を通過しなくてはならず逡巡していたが親友に背中から押されて登山決行した懐かしい、怖い、二度は御免の山だ。
8 歩幅 初めの頃、大股で歩いていたのだろう、太もものの付け根が山中で少し痛くなったことがあった。それを訴えたら、歩幅が広すぎと指摘受けた。特に登りには極力歩幅を小さくすると、殆ど休憩なく数時間は歩くようになったと思う。我々は4-5時間の登山なら昼食以外は休憩タイムは無いようなものになった。これも山の科学であろう。
9 行程表 我々は、綿密な行程表を各自が夫々調べて登山する。私など粗いものだが、親友のそれは緻密である。初めての山の行程が事前に確実に頭に入っているから驚く。例えば歩行15分で左折予定の三叉路が到来しないと、直ぐ迷っていないか検討が出来る訳だ。親友はガイド何冊かの調査は勿論、ネットで直近のものを丁寧に色々と調べて登山をする。これは実に私には勉強になり、まだ粗いが身についた。有り難いことであった。
10 魔の14時 登山学博士から聞いた言葉だ。食事して、下山であるし、この14時頃は「魔がさす」と云う。やれやれ下山と、気が緩む解放感、食事が招く睡魔が原因であろうか、事故はこの時間帯に多発していると云う。私はいつも心して下山している。
11 展望は立ち止まる 登山学教授によると、山岳事故の大半は、下山中と景色展望中だという。私はいつも注意された。立ち止まって景色は観よと。その為にいい習慣を身につけることが出来たと感謝している。
12 靴紐

登山は科学
尾瀬の山々を下山中、九州からの一人の女性が足が痛くて痛々しい程であった。我が先生は、それを見て、「靴紐の結び方が悪い」と、靴紐を結びなおしていた。我々は下山して小屋でトマトの冷えたのを食べていたら、その女性が晴れ晴れとして下りてきて感謝感激でしたと礼を言った。靴紐は、傾斜のきつい下山には、靴紐を最上部まで強く締めて結び、爪先がずり下がり靴の尖端に圧迫されないようにする事がコツで、とても大切な要領なのである。登山は科学なのである。
13 リュックの重さ これはリュックに容れる色々の登山用具から衣類などの総合の結果だが、私の先生は、100グラムを問題視する徹底さである。私など本当に不要品を沢山入れており改善の余地は存分に在る。だが、本格的な登山で行程の長い道では、体力に重大な関係あり日頃から訓練し研究しなくてはならぬ大テーマである。
14 手袋 春は4月21日のこと、吉野山に宿泊し、いい気分で温泉、翌日、ルンルン気分で大峯山五番関を目指した。青峰ガ峰にさしかかった時、猛烈な吹雪に遭遇した。物凄い風雪、樹氷が瞬く間に出来た、手がガチガチであった。15センチは積雪した。手袋無く手が冷たく動かない。親友から片手のみ借りて凌いだが、強烈な反省をした。アルプスでも真夏には手袋を準備した方がよい。手袋は「肌着一枚」と云うとも教授の話である。
15 山は常に初心 私は、本格的に登山を始めたのは60代の助走から70才からである。今日まで毎年100日以上は主として全国的な山々登山を継続してきたが、お蔭様で大過なく登山させて頂いている。安全で無事故である。
私は、常に小心者の如く、山に対峙している。足の一歩、一歩を下ろすのに全神経を注いでいると申していいくらいである。鳥取城のあった山である久松山の急登は有名であるが、既に4000回登山したベテランが最近、下山中に5米の滑落した。油断が大敵である。
16 ケモノ道 大峯奥駈道の南奥駈道の初日、一日で12時間の歩行を要する日のことであった。奥駈の最深奥部である。確か奥森岳のなだらかな丘状を越えて下りであった、確りした踏み跡を、前方に次ぎの山があるのだが、右へドンドン下った、中腹まで下りてオカシイと気づいて反転後戻りした、これは皆が間違えて作った道であった。下の谷まで下りたら間違いなく熊の巣もあろう。本当に注意しなければならぬと身震いした思い出がある。
17 里山の登山口 里山の登山口ほど探すのに難しいものはないように思える。全国的な山々は、それなりの明確な標識とかがある。だが里山は地元の人の山で知悉が前提に在るように思える。明確でないのは地元民には当然の登山口だからなのであろう。それは途中の標識の説明にも伺える。遠くから来た未知の登山者には辛いことだ。
18 標識に欠けているもの 山に入り、標識ほど有り難いものはない。だが、どの標識にも、現在地が記載されておらない。ここは、何処なのかが記載されていたら、どれ程登山者にとり有り難いことであろうかと痛切に思う。
19 怖いのは人間 単独行で人に遭遇する時に、ある種の怖さを感じていた時があった、里山である。特に、杉や檜の樹林帯であった。これらの樹林帯の大地は「死の世界」であるからであろうか。大きな山では、登山者に遭うとほつとする。何故であろうか。動物は、人間が怖いから人の接近を知れば、どうやら、逃げると思われる。人間は何をするか分らないからであろうか。想像にお任せすることとしよう。
20 歩行の間隔 特に下山時のことである。後ろの人は、絶対に2-3米、最低は等身大は離れて下山すべきである。万一、スリップして前の人を突き飛ばす危険があるからだ。若し、突き飛ばし人身事故となれば、加害者となるのは必定である。警察沙汰ともなるし、自己保身のためにも避けるべきである。
21 ストックの活用 二本使用している人がいるが、あれは便利なようで高齢者ハイキング向きであろう。本格派には一本だ。危険な岩場などには邪魔だ。ストックは長い下山時には、三本目の足として足への負荷軽減に極めて有効である。下山時には長く伸ばして使う。単独行の場合には、緊急時の武器にもなる。私は、近い日常のハイクにも常に活用している。
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三点固定 先日、大山系の甲山を船上山から縦走した時、手前の象岩群で撤退して下山している中年男2名がいた。怖いという、これには魂消た。不甲斐無い。一箇所だけ手がかりのない岩があるだけだが、昨年からロープがついている。多分、連中は、立ったまま歩こうとしたたのではないか。岩場には、腰を落とす、そして三点固定で大抵の岩場は越えられる。
23 笛のこと 恵那山登山口の早朝、地元のベテランに会い、熊がいるから、笛を数回吹いておいたら言いと云う。私はその通りにした。然し、これはタブーだと我がプロフェッサーは言う、笛は緊急時に使用するもので誤解を招くから止めるべしと。私は、その通りに忠実に守っている。
24 熊鈴 今年、雪彦山を下山中に、谷の左岸の樹林帯の中を逃げていた熊、要するに、我々の声を聞いて去って行ったのである。金属性の音が効果的なのであろう。私は、秋田製の、自動的に10-15秒間隔で金属音を発信する装置を場所により身につけてもいる。笹薮の茂った場所で、鈴竹採集時には彼らの好物でもあり特別に注意を要する場所だと思う。大勢の登山者がおれば全く懸念なさそうだ。
25 靴の手入れ 靴は登山の命綱である。だから、私は、靴の裏皮が万々一剥がれることも予測し、針金を、巻けるように常時リュックに入れている。勿論、代わりの靴紐もである。下山して帰宅した翌朝には、丁寧に洗い、陰で干して、1-2日後には皮の栄養補給、そして次ぎの登山出発前日には、油性クリームを塗っている。ブラッシングするから何時もピカピカである。
26 温泉のマナー 登山すれば必ず温泉入浴する。日本全国、どこにもいい温泉が湧いているから感謝だ。山奥では見かけないのだが、行楽地の温泉では、不愉快な入湯客がいる。要するに、自分が石鹸などで洗ったタオルを温泉で又、使っているのだ、実に頭に来る。日本人ならやめて欲しい、結構な年輩の男性に多いのである。聞く処によると、女性の風呂では、先ず無いらしい。私は、誰にでも厳しく注意することとしている。或る時は、外人に英語で、或る時は大学生に、不潔であるしマナーを守って欲しい。