アトピー性皮膚炎の治療について
その一 誰にもやってほしい治療法

鳥取生協病院 森田元章

 かゆいかゆいアトピー性皮膚炎。簡単に治す良い治療法はないのでしょうか。
 残念ながら、今のところアトピー性皮膚炎をあっという間に治すことはできません。何年も根気よく治療をする必要があります。一時的に良くなっても手を抜かず、一時的に悪くなってもがっかりしないで、長期戦になると思ってください。症状が変わればクスリも変わりますので必ず医師を定期受診し、相談しながら治療を続けてください。そして、自分に(子供に)あった治療法を見つけましょう。
 アトピー性皮膚炎は原因が一人一人違うので、治療法を一般化することは難しいのです。しかし、実はアトピー性皮膚炎の全ての人にやってほしい基本的な治療法があります。最低限次のことを実行しましょう。

(1)スキンケア(お肌の手入れ)
 皮膚は体の内部を外部から守るバリアーの役目をしていますが、アトピー性皮膚炎の人の皮膚は顕微鏡などで調べてみると大変傷ついています。バリアーが破壊されるとダニや細菌など湿疹を悪化させる物質が皮膚からどんどん侵入してきますし、皮膚に保たれるはずの水分は急速に失われていくので、すぐ乾燥してザラザラになり、それがまたかゆみの原因になるという悪循環を繰り返します。
 汗をかいたり、よだれや食べ物が顔についたらすぐ洗い流して軟膏を塗ります。お風呂に入ったら肌が乾き切らないうちに軟膏を塗ります。石鹸やシャンプーを使っても構いませんがそのあとよく洗い流しておくこと。石鹸はよく泡立ててから手か柔らかいタオルを使用して洗います。
 爪は短く切ってやすりをかけておき、なるべく掻き傷を作らないようにします。厚着にしないこと。チクチクする肌着を着ないこと。寝ている時に暖めすぎないこと。肌着の洗濯は洗剤を使い過ぎず、すすぎを十分に行うなどの注意も必要です。


(2)軟膏を塗る
 医師と相談して、現在の状態にあった軟膏を毎日欠かさず、塗りましょう。かなり重症の人でも「朝は忙しいから」と塗らない人もありますが、皮膚を守るため大切なので、少なくとも朝晩は塗りましょう。

(3)ダニの少ない環境を作る
 家のホコリの中に住むダニはアトピー性皮膚炎を悪化させる原因として重要です。傷ついた皮膚から直接ダニ成分の物質が侵入してくるといわれています。極力ダニの少ない居住環境を作ることによって、アトピー性皮膚炎を軽くすることができます。
 ダニは、高温多湿を好みます。室温が十八℃以上、湿度が六十%以上になるとダニがよく繁殖します。現代の住居は冬でも暖房が効いており、アルミサッシで外気が入りにくく、ダニとっては最高の繁殖条件が作られています。
 ダニ対策のポイントは、(1)冬の暖房は二十℃以上に上げない。夏は除湿器を使い湿気を減らす。(2)こまめに掃除機をかける。布団にも掃除機をかける。(3)畳の上にじゅうたんは敷かない。(4)毛のあるペットは飼わない。などです。

アトピー性皮膚炎の治療について
その二 自分にあった治療法を見つける
鳥取生協病院小児科 森田元章


 前回は、だれにもやってほしい治療法として、(一)スキンケア(お肌の手入れ)、(二)軟膏を塗る、(三)ダニの少ない環境を作ること、について述べました。今回はこれら三点の他に、私どもがよく行っている治療法について紹介してみます。ただし、これは誰にでもあうというわけではありません。いろいろな治療法の中から自分にあった治療法の組合せを選んでいただきたいと思います。

(1)内服薬を飲む
 まず、抗アレルギー剤があります。速効性はありませんが、体内で起こるアレルギー反応を抑えてくれるクスリです。かゆみが強い人では、抗ヒスタミン剤を使うこともあります。漢方薬があう人もいます。皮膚炎に細菌感染を合併している場合は一時的に抗生物質を使うと効果があります。

(2)除去食療法
 アトピー性皮膚炎の中には食べ物のアレルギーで起こっている人があります。問診や血液検査などを参考にし、さらに食物の除去・負荷テストを行って原因となっている食物を確かめます。
 例えば、卵が原因ではないかと考えられる人には、一〜二週間卵と卵を含む食品をすべて除いた食事をしてもらいます。その結果皮膚炎の状態が良くなっていれば、卵が原因である可能性があります。そのうえで今度は卵を食べてもらいます。一旦良くなっていた皮膚炎が卵を食べた後、悪化すれば卵が原因と診断できます。こうして原因が特定されたら、数ヵ月から数年間卵を使った食品をすべてとらないようにします。
 このような除去食療法を続けていると、年齢が大きくなるにつれて、だんだん食べても大丈夫な体になっていきます。それを確認しながら今度は徐々に除去をゆるめていきます。
 注意すべきことは、除去食療法は自己流にやらずに必ず医師と相談しながら進めていってほしいということです。




(3)消毒療法
 アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚には黄色ブドウ球菌などの細菌が付着していることが多く、これが皮膚炎を悪化させています。
 病院で手術の時にも使われるポピドンヨードという消毒液は強力な消毒作用があります。症状に応じて一日一〜三回皮膚炎の箇所にこの液を塗り、二〜三分たって乾燥したら水や湯で洗い流すという方法をとりますと、細菌を絶えず取り除くことになり、正常な皮膚を回復させることができます。欠点は人によって消毒液がしみたり、消毒液自体にアレルギーを持つ人もあるということです。

(4)強酸性水療法
 強酸性水は水を電気分解することによって作られます。強い殺菌作用を持つのでポピドンヨードによる消毒療法と同じような原理で作用します。使い方は水を皮膚にかけるだけ。使用後、洗い落とす必要がありませんので、消毒療法よりも手軽に行えます。ただし、効果は消毒療法よりやや劣るようです。そのかわり、アレルギーなどの副作用はありません。

おわりに
 皮膚は健康のバロメーターといわれ、健康状態を反映します。アトピー性皮膚炎のある人の肌はとても敏感です。睡眠不足、疲労、カゼ、不摂生な生活、試験勉強、イライラなどでも悪化します。心身をリラックスさせ、規則正しい生活をこころがけることはとても大切です。