アトピー性皮膚炎学習会テキスト(図、表は省略しています)
2006.4.15 森田元章

●アトピー性皮膚炎とは
 かゆみを伴う湿疹が繰り返し出る。良くなったり悪くなったりを繰り返す経過の長い疾患。 
 アトピー体質という遺伝的な要素が関係する
 アトピー素因とは:
(1)気管支喘息やアレルギー性鼻炎などにかかりやすい
(2)家族にもアレルギーの病気の人が多い
(3)IgE抗体を作りやすい
●アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患の一つ
 他のアレルギー疾患を合併しやすい。アレルギーマーチを起こしやすい。
●軽症アトピー性皮膚炎の所見
 重症アトピー性皮膚炎の所見
●症状の現れやすいところ
 年齢による特徴
●症状の経過
 だいたい4つのタイプがある
 1)乳幼児発症短期間治癒 2)乳幼児発症ゆっくり治癒 3)いったん治癒思春期以降再発 4)5歳以降発症
●アトピー性皮膚炎の原因
 皮膚炎体質に悪化因子が加わって起こってくる
●原因・悪化因子
 年齢によって違いがある。
 年齢が小さい間は食物の関与が大きいが、年齢が高くなるにつれて、小さくなる。
 年齢が大きくなると環境因子や発汗などが悪化因子となりやすい。
●コナヒョウヒダニ
●年齢別にみた特異抗体(IgE)陽性頻度(RAST>3)
 小さい間は食物が陽性にでやすいが、年齢が高くなるにつれて陽性率は低下する。年齢が大きくなるにつれて、ダニ抗原の陽性率が高くなる。
●治療の基本的な考え方
 アトピー性皮膚炎かどうかを診断したら、重症度を判定する。
 治療は3つの柱からなる。
 1)原因・悪化因子の検索と除去
 2)炎症を予防するスキンケア
 3)炎症を抑える薬物療法

治療の基本 その1 原因・悪化因子の検索と除去
 1)食物アレルギーの関与が証明された場合
 ・原因となる食品の除去
 ・離乳食の進め方の工夫
 2)ペットの回避、ダニ対策
 3)物理的、化学的刺激の回避・・・衣類、洗剤など
 4)感染対策
●食物アレルギーの診断
 1)ある食品を食べて明らかに症状が出る
  食べてすぐに反応が出れば明らか。しかし、食べてすぐに反応が現れないことも多く、診断は簡単にはいかない。
 2)血液検査(RASTなど)が陽性
  陽性でも原因とは限らない。あくまでも参考。
  しかし、陰性でも原因のこともある。
 3)除去負荷テストで確かめる
●食物除去負荷試験
 1)問診などでアトピー性皮膚炎に食物が関係があると考えられる場合に行う。
 2)まず、外用療法でいったん皮膚をきれいにし、反応がわかるようにする。
 3)2週間、その疑わしい食品を除去する。
 4)医師と相談しながら、疑わしい食物を与える。
 5)食物を与えて、アトピー性皮膚炎の悪化が2〜3回繰り返されるようであれば、その食品が悪化因子と考えられる。
●除去食療法
 1)悪化因子と考えられる食品を除いた食べ物を食べる。
 2)3〜6ヶ月ことに耐性獲得のチェックを行う。
 3)食べても反応が出ないことを確認しながら、徐々に除去をゆるめていく。
●除去食療法を行うときは必ず代用食を用意する
 卵     ⇒牛肉・豚肉・魚・大豆製品
 鶏肉   ⇒豚肉・魚
 牛乳   ⇒小魚・海草
 加工や加熱などの調理法で食べられるものは食べてよい。栄養を落とさないように気をつける。
●除去食を緩めていく時の注意
 強い反応が出る恐れのあるときは、病院で食べさせてみる。家庭で食べさせるときは何かあったらすぐ病院 にかかれるようにして。
 まず抗原性の弱いものから
 はじめの1カ月くらいは週1回とする。
 一度に多くの量を与えない。肉や魚類は20〜30g程度とする。
 高温加熱調理をする。
●ペットの回避、ダニ対策
 1)毛のある動物は飼わない
 2)ダニ対策
  掃除をする。布団にも掃除機をかける。家具の上など、ホコリがたまりやすい場所も定期的に掃除をする。
  ホコリがたまりにくい床にする。
  ホコリのたまるぬいぐるみは持たない。 など
●物理的、化学的刺激の回避
 ・掻かない工夫をする
 ・チクチクする衣類を着ない
 ・洗濯をした後はよくすすぐ
 ・汗を掻いたらシャワーなどで早く落とす
 ・口の周囲などが食べ物で汚れたらすぐにきれいにする
●アトピー性皮膚炎の皮膚感染防御対策
 ・掻いて悪化しないように、普段から皮膚の状態をよりよく保つ
 ・夏はしっかり汗対策。行水、シャワーなど。
 ・掻かせない、掻いても傷がつかない工夫。長袖、長ズボン、袖、襟は手が入らないようテープでとめる。
 ・消毒療法、強酸性水療法、抗生剤など
●ポピドンヨードによる消毒療法
治療の基本 その2 炎症を予防するスキンケア
 1)入浴で皮膚を清潔に
 ・洗うときは強くこすらない
 ・洗浄力の強い石鹸、シャンプーの使用は避ける
 ・石鹸やシャンプーの泡はよくすすぐ
 ・高温のお湯は避ける
 ・刺激を感じるような入浴剤は避ける
 2)入浴後5分以内に保湿剤を塗る
●正常の皮膚とアトピー性皮膚炎の皮膚の違い
治療の基本 その3 炎症を抑える薬物療法
 軟膏療法
  非ステロイド軟膏
  ステロイド軟膏
  タクロリムス軟膏
 内服療法
●薬物療法 その1 軟膏療法
 1)湿疹病変に対しては、症状の程度に応じた軟膏の塗布が必要。
 2)軽症の場合は非ステロイド軟膏で十分。
 3)ある程度以上の皮疹にはステロイド軟膏が必要。ステロイド軟膏塗布は短期間が望ましいが、繰り返して必要な場合には、原因増悪因子の回避、スキンケアが適切であるかどうかを見直す。
●軟膏の塗り方の目安
●ステロイド外用剤の使い方と離脱法
 1)いきなり中止すると再発しやすい。保湿剤と併用しながら、ステロイドを塗らない日を徐々に増やしていくやり方がよい。
 2)効果のあるランクのステロイド剤を使うこと。
●ステロイド軟膏のランク
●保湿を目的とした主な外用薬
●ステロイド軟膏の局所副作用
 ステロイドざ瘡(ニキビ)
 ステロイド潮紅
 皮膚萎縮
 多毛
 細菌・真菌・ウイルスによる皮膚感染症
 アレルギー性接触皮膚炎
●新しい塗り薬  タクロリムス(プロトピック軟膏)
 抗炎症作用  ステロイド外用薬の3群と同程度
 注意点
   ・刺激がある
   ・傷のある部位や粘膜には使用不可
   ・妊娠中や授乳中は使用不可
   ・2歳未満の乳幼児には使用不可
 副作用 にきびやヘルペスができやすくなる
●薬物療法 その2 内服療法
 軟膏療法、環境整備、スキンケアなどで効果が不十分な場合や、患児・家族のQOLの維持を目的
 1)経口DSCG(インタール)・・・食物アレルギーに対して
 2)経口抗アレルギー薬・・・ザジテン、セルテクト、 ジルテックなど
 3)漢方薬・・・柴胡清肝湯、消風散など
●私たちが行っている治療法
 誰にもやってほしい治療法
  スキンケア
  クスリを塗る
  ダニ対策
 人によって選択する治療法
  抗アレルギー剤などの内服
  除去食療法
  消毒療法
  強酸性水
●アトピー性皮膚炎治療の心構え
 1)アトピー性皮膚炎は多因子疾患。一つの治療法だけではよくならないと心得よ。
 2)あっという間になおすことはできない。治療は根気強く続ける。
 3)本人・家族の日々の対処が必要。
 4)患者本人にあった治療法を見つける。
●アトピー性皮膚炎の合併症
 みずいぼ、とびひ、カポジ水痘様皮膚炎など
●症例から学ぶ
 スキンケアの大切さ
 スキンケアを徹底して行い、ステロイド軟膏をほとんど使うことなく、改善した人の例などを紹介。