食物アレルギーとは
原因になる食物(アレルゲン)を食べた後、IgE抗体やリンパ球など体の免疫学的な仕組みが働いて、様々な症状が起きる現象をいいます。
食物アレルギーのタイプ
即時型
●症状の多くが、食物摂取後数分から2時間以内に症状が現れる。
●全身じんましん、喘息症状などの重篤な症状を引き起こす可能性がある。
非即時型
●原因食物の摂取から2時間以上経ってから症状を呈するものをいう。しかし、この中には摂取後24〜48時間で症状が起こるものも含まれ、このような場合、因果関係を明確にすることが困難なことも少なくない。
特殊型
●食物依存性運動誘発アナフィラキシー
●口腔アレルギー症候群
食物アレルギーによる症状
アナフィラキシーとは
即時型のアレルギー症状が皮膚症状にとどまらず、呼吸器や消化器など複数の臓器に強い症状が急激に現れることをアナフィラキシーと呼ぶ。
さらに血圧低下や意識障害を伴う症状は「アナフィラキシーショック」といわれ、生命の危険を伴う場合もある。
重症度には個人差がある
アレルギー反応の特徴は、原因となる食べ物(アレルゲン)をある一定量を超えて摂取すると急激に症状が出現することである。
アレルギー症状を引き起こす最低量(反応閾値)には個人差がある。
食物アレルギーと間違いやすい疾患
食中毒・・・細菌、自然毒など有害なものが含まれる食品による
(例)夏に生卵を食べたら下痢→サルモネラ菌の混入
食物不耐症・・・体質的な消化不良
(例)牛乳を飲むと必ず下痢をする→牛乳に含まれる乳糖を消化する酵素が弱い
仮性アレルギー・・・食品に含まれる化学物質が原因
(例)とろろ芋で口の周りがかゆくなる→食品中のアセチルコリンが関与
即時型食物アレルギーの年齢分布
即時型食物アレルギーの原因食品 年齢別に見た原因食品
即時型食物アレルギーの原因食品 全年齢における原因食品
即時型食物アレルギー症状の出現頻度
アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係
食物アレルギー乳幼児期の特徴は
その多くはアトピー性皮膚炎を合併している。逆にアトピー性皮膚炎の乳児では、約75%が食物アレルギーを持っている。
主な原因食物は、卵、牛乳、小麦で,加齢とともに80〜`90%は耐性を獲得していく。
食物アレルギー学童期から成人期にかけては
卵、牛乳などが減り、甲殻類(エビやカニなど),小麦、果物、魚類、そば、ピーナッツなどが増えてくる。
学童のアトピー性皮膚炎の有病率は約10%であり、食物アレルギーを合併する割合は減ってくる。
これらは耐性が得られにくいのが特徴である。
食物アレルギーの傾向と問題点
アナフィラキシーショックに至るような重症の食物アレルギーを持つ子供が増えている。
原因食品が卵や牛乳、小麦に限らず、魚、魚卵、ピーナッツ、甲殻類、果物なども増えてきている。
小学校高学年を過ぎても治らないケースが増えている。
食物アレルギーの仕組み
食物アレルギーの即時型反応を起こすメカニズム
食物アレルギーを防ぐメカニズム
耐性獲得とは
年齢が大きくなると,消化能力や腸管免疫力が成熟することで過剰な免疫応答が抑制され、アレルギー症状が出なくなってくる。これをアウトグローとか耐性獲得という。
食物中のタンパク質がアレルゲンになる
免疫反応は,動物が自分の体と異なる物質を認識したときに起こる。
タンパク質は構造上個別性が強く、免疫反応のターゲットとなりやすい。そのため、食物アレルギーを起こす主な成分は、食品に含まれるタンパク質なのである。
交叉抗原性
異なる食物でも,構造の近いタンパク質があると。IgE抗体がどちらにも共通に反応することがある。
(例)白樺花粉とリンゴなどバラ科の果物
(例)スギ花粉とトマト
(例)ブタクサ花粉とメロン、スイカなどウリ科植物
除去食療法を行うにあたって
症状を予防するための必要最小限の除去を心がけよう
加熱などの加工処理で食べられる場合がある。
交叉抗原性のあるものは,同時に除去が必要な事がある。
同じ食品群や親子(鶏肉と卵など)でも、臨床的交叉反応性がなければ除去の必要はない。
疑わしい食品は,食物経口負荷試験で確認する。
食物アレルギーの診断は問診や食事日誌から原因アレルゲンを推定することから始まる
即時型食物アレルギー
原因と推定された食物に対するIgE抗体を証明
さらに食物傾向負荷試験
非即時型食物アレルギー
症状も発症のメカニズムも多様なため、診断は容易でない
食物除去負荷試験が必要
食物傾向負荷試験はリスクを伴う検査である
問診・食事日誌による原因アレルゲンの推定
何を食べたか?
どれだけ食べたか?
食べてから症状が出るまでの時間は?
症状の持続時間は?
症状の特徴は?
症状の再現性はあるか?
IgE抗体を証明するための検査
皮膚テスト
プリックテスト、皮内テスト、パッチテスト
血液検査
CAP RAST法 ,MAST法
ヒスタミン遊離試験
食物アレルギーの薬物治療
原因食物の除去が治療の基本
薬物療法はあくまで補助的治療
抗ヒスタミン薬
経口インタール
アナフィラキシーを回避するには
過去にアナフィラキシーを起こしたアレルゲンを含む食品の摂取を回避すること
加工食品を摂取するときは、食品表示を確認する
誤って食べてしまったとき(1)
アレルゲンを含む食品を口に入れたとき
→口内の違和感を訴えたら、口から出し、口をすすがせる
皮膚につけたとき
→触った手で目をこすらせないようにさせ、洗い流す
目に入ったとき
→洗眼後ステロイド薬点眼
皮膚の一部に発赤、じんましん
→30分以内に症状の改善傾向が見られるときはそのまま様子を見ることができる。
誤って食べてしまったとき(2)
症状が悪化するとき
皮膚の発赤、じんましんが全身に拡大傾向
咳、声が出にくくなる、喘鳴、呼吸が苦しい、ぐったりする、意識レベルが低下、吐く、腹痛など
→医療機関受診 救急車!!!
食事療法の実際
食事療法の基本的な考え方
感作はほとんどが1歳までに起こる。重要な時期は1歳までの乳児期
正しい原因アレルゲン診断を元に食品除去は必要最小限にとどめ、摂取可能は食品はできるだけ多くの種類を摂取させる。
耐性獲得を目指し、症状を起こさせずに「食べる」ことが重要。
除去食療法の適応
食物アレルギーが症状の原因となっており、食品除去が症状の消失、軽快に有効である場合
食品除去により、食物アレルギー児と家族のQOLの改善が見られる場合
食事療法の基本
適切なアレルゲン診断に基づく食事療法
「食べること」を目指した必要最小限の食品除去
調理による低アレルゲン化(卵の加熱など)
代替食摂取による栄養への配慮
低アレルゲン化食品(アレルギー用ミルクなど)の利用
薬物による食品除去の緩和
アレルゲン以外は1日30品目摂取を目標としてバランスよく摂取
成長に伴う耐性獲得を念頭に置いた対応
アレルゲン除去食の解除を考えるとき
症状の消失あるいは著明改善
除去食の効果がみられないとき
意図しない負荷(誤食)で症状が誘発されなかったとき
社会的要因
鶏卵の特徴
加熱することによりアレルゲン性が低下する。
主要アレルゲン(オボアルブミン、オボムコイド)は卵白中に含まれる
卵黄はアレルゲン性は弱いが、料理に使う場合には卵白の混入が起こりやすい。
加工食品に注意
薬品にも含まれる(リゾチームなど)
卵除去の程度と対応
生卵
加熱不十分な卵料理(茶碗蒸し/オムレツ/半熟卵/プリン)
十分加熱した卵料理(固ゆで卵など)
衣として卵を使った料
つなぎとして卵を使った料理
菓子・加工品中の卵
他の動物性蛋白(魚、肉類など)植物性蛋白(豆類など)
卵を用いないでも調理可能
アレルギー物質食品表示を見て、卵を含まないものを選ぶ
牛乳の特徴
牛乳中のカルシウムは他の食品中のカルシウムに比べ、吸収がよい
加工食品のアレルギー物質表示について
牛乳と牛肉には検査上は交叉抗原性があるが、加熱調理した牛肉で症状を起こすことはまれ
食品中の乳糖にはβ-ラクトグロブリンが混入していることが多いので「乳」と解釈する
小麦の特徴
いったん即時型反応を起こすと、食べられるようになるまで時間がかかる傾向にあるが、多くは成長とともに耐性を獲得する。
運動量の多い中学生・高校生の中には食べた後に運動するとアナフィラキシーを起こすことがある。
アレルゲンが小麦だけということは少なく、卵や牛乳など複数の食品にアレルギーを伴うことが多い。
加熱しても低アレルゲン化されにくいが、発酵させるとアレルゲン性がほとんどなくなる。
ライ麦、大麦、オート麦などは交叉抗原性がある。
アレルギー物質食品表示
一定濃度以上含まれている場合法律で表示が義務づけられている
特定原材料(表示義務)
卵、乳、小麦、そば、落花生
特定原材料に準ずる(表示の推奨)
あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、クルミ、さけ、さば、ゼラチン、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご
その他の食品の特徴
大豆・・・味噌、醤油、納豆などはアレルゲン性が低い
ピーナッツ・・・欧米ではアナフィラキシーショックを起こす代表。日本でも患者数が増加
米・・・即時型アレルギーを起こす例はきわめてまれ
魚類・・・即時型アレルギーを起こす
甲殻類・・・卵、牛乳、小麦に次いで多く、小学生頃から増加する。
そば・・・そばアレルギーは日本人に多く、アナフィラキシーを起こしやすい。
食肉・・・食肉アレルギーはまれ
果物・野菜・・・口腔アレルギー症候群を起こす
食物アレルギーへの社会的対応
体制作り
診断書を基本に、必要最低限のアレルゲン食品を除いた安全な給食の提供
誤食等における、急な誘発時への的確な対処の確認
食物アレルギーへの社会的対応
保護者の除去食療法への理解度と家庭での実施状況を把握する
どの程度の加工食品を食べてよいのかは、医師の診断書に網羅はできない。具体的に話し合って再確認し、給食での除去レベルを決定する。
対応の不自然さがみられる場合は、主治医と相談して整理してくるようアドバイスする。
家庭の食事で安全性が十分確認されているものを提供する。家庭で食べることに不安があるようなら主治医に相談することを勧める。