|
肥満をなおして成人病を予防しよう ![]() 森田元章 (2006.8改訂) |
| 皆さん。鳥取市肥満児教室にようこそ。これから夏休みの間に3回にわたってみんなで一緒に肥満について勉強をします。今日はその第1回目です。 皆さんは学校の先生に勧められてここに来たと思います。「たいぎいなー」と思った人もあるかもしれません。でもこれから勉強することは学校ではあまり教わらないけど、とても大切なことです。肥満の害を知り、それを治すにはどうした良いかを勉強するのです。皆さんが健康で長生きし、楽しい人生を送るためにはどうしたらよいかを勉強する場なのです。 これから勉強することを実行したら、学校に行くことががもっと楽しくなります。友達から太っていることをひやかされることもなくなりますし、走るのも今よりずっと速くなり、スポーツが今よりもっと得意になります。そして、みんながあなたのことを、肥満を治すことができたかっこいいすばらしい人、と思ってくれるにちがいありません。 この教室でいろいろなことを学んでみて、「これなら自分にもできる」と思ったことから実践してみましょう。ここで勉強したことを生かして夏休みの間体重をふやさなかったらまず第一段階の成功です。 家族の皆さんもこの機会に、家族全体の食生活やライフスタイルについて振り返ってみてください。子供に努力を強いるだけではうまくいきません。家族みんなで援助してください。根気良く治療を続けてぜひ肥満をなおしてください。私たちも応援します。ここに集まったみんなが友達になって一緒にがんばりましょう。 |
| 第1章 肥満はなぜいけないのか 肥満はいろいろな病気のもとになるからです。生命保険会社は病気にかかりにくく長生きしやすい人はどのような人かをよく調べていて、そのような人には優良体と称して保険の掛け金を安くしています。それは、<1>肥満でもやせでもない人、<2>血圧が正常の人、<3>たばこをすわない人、<4>優良運転者 です。つまり、太っている人は正常の体格の人に比べ平均寿命が短いということなのです。 次のいくつかの図表は、私たちが以前「肥満児のサマースクール」を行っていた頃、参加した子どもたちの体にどんなことが起こっているかを詳しく調べた結果、見つかった異常です。子どもとはいえ、油断はできません。 |
![]() |
75gOGTT=経口糖負荷試験 |
| (1)心肺機能の低下 太っていても心臓の大きさは変わりません。肥満している人は車に例えれば小さなエンジンで大きな車を動かそうとするようなものです。 太っていると、車のエンジンに相当する心臓や肺にはいつも負担がかかるので、長く使っているうちに故障が起こってしまうわけです。 |
![]() |
(2)高脂血症 肥満していると血液中のコレステロールが高くなりやすくなります。血液中のコレステロールが高いと血管の内側にコレステロールがたまり、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞を起こすもとになります。 |
![]() |
![]() |
| (3)高血圧 肥満があると高血圧になりやすくなります。 高血圧は脳卒中の原因になります。 (4)糖尿病 肥満すると糖尿病になりやすくなります。血のつながった人に糖尿病の人がいると、糖尿病になる確率が上がります。家系に糖尿病がある人は絶対に肥満をなおしておきましょう。 糖尿病はおしっこの中に糖がでる病気です。糖が出ること自体はあまり問題ありませんが、いろいろな合併症が起こってくるので問題です。合併症は、感染に弱くなる、腎臓、目、神経がやられるなどです。 (5)脂肪肝 余分な脂肪は皮下ばかりでなく、内臓にもたまります。肝臓にたまると脂肪肝となり、肝臓の働きを悪くします。脂肪肝は肥満の子供に高率にみられます。 |
![]() |
![]() |
| (6)骨折しやすい (7)睡眠時無呼吸 高度に肥満した人の中には、眠っているときに時々呼吸が止まる人があります。首やのどのまわりに脂肪がつきすぎたのと、睡眠で筋肉の緊張がゆるむために起こるようです。睡眠中に長い時間息が止まる人、昼間にとても眠くなる人は早めに医師に相談してください。 (8)ひやかしの対象になる 人のからだの欠点をひやかしの対象にすることは良くないことでが、実際にはよくみられることです。登校拒否や拒否傾向の一因になることもありますから、肥満は積極的になおしておきましょう。 |
| 第2章 肥満とは 食べ過ぎや運動不足のため、体の中の脂肪が異常に増加した状態です。 日本肥満学会は小児の肥満を次のように判定することにしています。 肥満児の判定: 18歳未満の小児で肥満度が20%以上、かつ有意に体脂肪率が増加した状態 体脂肪率の基準値は以下の通りです。 男児(小児期全般):25% 女児11歳未満:30% 11歳以上:35% 肥満症の定義: 肥満症とは肥満に起因ないし関連する健康障害(医学的異常)を合併する場合で、医学的に肥満を軽減する治療を必要とする病態をいいます。 小児の肥満の評価を行うためには、やや面倒ですが、肥満度を用いるのが最も良いとされています。 医療現場以外ではカウプ指数、ローレル指数がよく使われていますが、ぜひ肥満度で判定するようにしましょう。また、成人の肥満の評価に使われるBMIを用いると年齢により肥満を過大評価、過小評価する可能性がでてきます。 簡単な方法で肥満を評価するためには次のような方法があります。 (1)肥満度を測定する。 |
| 肥満度(%) =【(実測体重ー標準体重)/標準体重】×100 |
|
| うちの子の肥満度はいくらかな? 標準体重は、身長別標準体重を求める係数と計算式で求めることができます。 |
|
|
| 自分で計算してみましょう。 肥満度30%を超すと、第1章で述べたような合併症が出現する率が高まります。 |
|
|
(2)皮下脂肪の厚さをはかる (3)体脂肪計 (4)身長・体重の成長のグラフをかいてみる |
| 第3章 どういう人が太りやすいか 皆さんは、自分では太ろうと思っていないのに太ってしまう、我慢しようと思ってもたくさん食べないではいられない、他の人と同じような食事をしているはずなのに、自分だけ太ってしまう、などと感じている人もあるのではないでしょうか。 そうです。肥満するのには体質が大いに関係しているのです。皆さんは他の人に比べて意志が弱いわけでも、だらしがないわけでもないのです。近年、この「太りやすい体質とは何か」についての研究がかなり進んできて、体の中のある種のホルモンが食欲と関係しているらしいことがわかってきているのです。 皆さんは、食べたものを体の中に脂肪としてたくさん貯えておくことのできる、本来は優れた体質を持っているのです。これは、食料が足りなくなった時には大変得をする体質と言えます。しかし、今の日本のように、運動不足と食べ過ぎになりやすい社会では、この体質は残念ながら大変不利に働いてしまうのです。 |
| 以下、どんな人が太りやすいのか、国が調べた調査結果がありますので、紹介しておきます。 (1)お父さん、お母さんが太っている人 お父さんが太っていると モ その子供の太る率は40% お母さんが太っていると モ その子供の太る率は60% 両親が太っていると モ その子供の太る率は80%といわれています。 |
| (2)大食いの人 (3)早食いの人 (4)脂っこいものが好きな人 (5)甘いものが好きな人 (6)肉類が好きな人 (7)ジュースや炭酸飲料を多く飲む人 (8)野菜が嫌いな人 |
| 第4章 肥満を治すため、予防するためには 苦労しないでやせられる方法があるといいですね。実際に、食欲を抑えるための薬を開発する研究が行われています。良い薬ができれば、肥満の治療は今よりもっと楽になるに違いありません。しかし、そのような薬が開発されるまでにはまだまだ時間がかかると言われています。現在も食欲を抑制する薬がないわけではありませんが、安全性と効果の面でまだ問題が多く、広く使われるには至っていません。当分の間は、薬以外の方法で治療せざるをえないのです。また、仮に良い薬ができたとしても、運動療法と食事療法は欠かすことはできないでしょう。 肥満しやすい人は、肥満しないために意識して努力をしなければなりません。この努力を苦痛と感じないで、当たり前の習慣にしてしまうことができればしめたものです。いろいろ工夫してみてください。家族の協力は絶対に必要です。 |
| (1)正しい食事(食事療法) @決められた時間以外には食べない。 A食事のバランスに心がけ、カロリーの高い 食品は避ける。 B夜の食事は軽く。寝る前には食べない。 (2)運動をする(運動療法) @毎日続ける。(激しい運動をやる必要はなく、ウォーキングなどの有酸素運動が有効です) A日常生活の中でもこまめに体を動かす。 |
| (3)肥満の治療、予防で気をつけること @成長期であるので極端な食事療法はダメ。 A肥満度を減らすことを目標にする。 子供の肥満では、体重を減らす必要のない人も多くいます。体重を増やさないようじっとがんばって いると身長が伸びてきて肥満が治ってきます(Bさんの例を参考に)。 2cm・1kgの法則:標準の1.5倍の肥満児でも、身長の伸び2cmに対して体重1kg増にとどめることで、3〜4年で正常域にはいることができます。この法則は、年齢が10歳以下の子供で、それほど極端な肥満でなければ、たいていの子供に当てはまります。 |
![]() |
| (4)思春期の肥満の80%は成人肥満に移行するといわれています。努力をしないと大人になっても肥満のままです。 |
| 第5章 成人病予防のために生活行動で心がけること(家族の心得) 良くない生活習慣を改善するにはどうしたらよいか、家族で話し合ってみましょう。たとえば、以下のような方法もあります。できることから始めてみましょう. |
| (1)お菓子や好きな食べ物は見えないように保存し、冷蔵庫に入れるときは、ラップよりもアルミホイルで包むようにしましょう。 (2)空腹時に子供を連れてスーパーやお菓子屋へ行かないようにしましょう。 (3)機嫌の悪い時、転んでケガをした時、ごほうびを与える時など、食べ物やお菓子を与えないようにしましょう。 |
| (4)子供が遊びに来たら、お菓子のもてなしより、遊びや会話でもてなしましょう。 (5)訪問する時のおみやげは、食べ物ではなく、おもちゃか絵本を選びましょう。 (6)台所の手伝いを親と一緒にさせましょう。料理の楽しみを教えながら学習する良い機会です。 |
| (7)おやつ(ケーキやポテトチップスなど)の買い置きは少なくしましょう。 (8)食事は大皿盛りをやめて、個人別の盛り付けにしましょう。そうすれば食べた量が確認できます。 (9)お母さんはおっくうがらずに、まめに料理を作るようにしましょう。 (10)夜遅くにおみやげに食べ物を持って帰らないようにしましょう。 (11)祖父母へも食生活で気をつけていることへの理解・協力を依頼するようにしましょう。 |
| (12)職業を持っているお母さんの場合は、1週間の食事計画を立ててみましょう。特に朝食の管理はしっかりしましょう。 (13)食生活で心がけていることは、子供だけでなく、家族全員が協力しましょう。 (14)週に1度は好きな食べ物、お菓子を食べる日をつくってもかまいません。ただし、あまり食べすぎないようにしましょう。 |
| 無理をせず長ーく続けられる自分なりの方法を見つけましょう。減量は1回失敗したらもうダメと考えないで、根気よく続けましょう。人間は弱いもの。だれでも失敗することはあるものです。長ーく減量の努力を続けるための私からのアドバイス。 |
| (1)おふろに入る前に毎日体重をはかる。(肥満している人はたったこれだけのことができない人が多いのです。是非やってみましょう。) (2)月に1回医者に通う。(医者に限らず、誰かにチェックしてもらい、励ましてもらうことが成功の秘けつなのです。) |
(成人男子) |
|
|
第6章 先輩の経験に学ぶ では皆さんのご健闘を祈ります。 |