子どもたちに伝えたい成人病予防のコツ
 鳥取生協病院小児科 森田元章
2000.6.23 鳥取市古海隣保館にて

 困ったことに、歳をとらないとかからないと思われていた病気が、最近では若いうちから出る人が多くなっています。中には子供のうちから成人型の糖尿病にかかってしまう人もあります。成人病の予防は子供の時から行わないといけないのです。

 今、日本人の平均寿命は世界のトップレベルにあり、男77.19才、女83.82才(1997年統計)です。一方、日本人の死因で多いものは全年齢では、一位:悪性新生物(がん)、二位:心疾患(心臓病)、三位:脳血管疾患(脳卒中)(1998年統計)です。
 これらの病気を少なくできたら、人の寿命は百歳に近づきます。しかし、このままだと今の子供たちの世代が老人になった時、今ほど長生きができるのかどうか、疑問です。若者や子供たちの食生活や生活習慣が、成人病を起こしやすいものに変化しているからです。

 成人病とは糖尿病、狭心症、心筋梗塞、がん、脳卒中などに代表されますが、これらは老化に基づく病気と言ってよいでしょう。糖尿病はインスリンを分泌する膵臓の機能の老化とみなせますし、狭心症、心筋梗塞、脳卒中は血管の老化によるものです。また、がんも免疫力の老化に基づくと考えられています。骨粗鬆症は骨の老化です。

 実は子どもの身体は成長している一方、動脈硬化等の老化現象は子供のうちから始まっていく事が知られています。
 現在、医学が進歩して、難しい病気の治療が可能になりましたが、それはいわば老化のなれの果ての姿を修理しているに過ぎません。子どものうちから老化を防ぐ(遅らせる)ような生活習慣を身に付けておくことがもっと大切なのです。
 今日は、成人病を防ぐために、子どものうちから特に気をつけていただきたいことを三つにしぼってお話しします。


(1)肥満を防ぐ、肥満をなおす
 今、肥満の子どもが増えています。
 体重が標準体重の1.2倍以上あると肥満と診断します。そして、1.2倍から1.3倍までを軽度肥満、1.3倍から1.5倍までを中等度肥満、1.5倍以上を高度肥満と呼びます。中等度以上の肥満になると、子どもでも体のあちこちに異常が出てくることが多くなります。
 子供の肥満は成長してから、成人病になる確率が高まることが明らかになっています。



鳥取生協病院小児科での調査


(a)糖尿病について
 1998年に厚生省が行った調査では、糖尿病の患者さんは推定690万人、将来糖尿病になる可能性が高い「予備軍」の人が約680万人いると発表されています。しかし、実際には約2000万人の人が糖尿病もしくはその予備軍であると考えられています。
 糖尿病の発病には、体質的な要因と「肥満、過食、運動不足、不規則な生活、ストレス」などの生活習慣がかかわっています。
 子どものうちからカロリーのとり過ぎにならないような食習慣を身につけておくこと、また、日頃から面倒がらずに体を動かす習慣を身につけておくことが大切です。スポーツするのも大変良いことです。
 特に、家系に糖尿病の人があって肥満している人は正常の体型に近づけておきましょう。

(b)動脈硬化について
 栄養のとりすぎはコレステロールを高め、動脈硬化を促進します。動脈硬化は10代の子供から始まっていることが知られています。
 まず、食べ過ぎないこと。スナック菓子、ジュース類をたくさん取り過ぎないこと。肉よりも魚をよくとること。野菜を食べること。インスタントものにたより過ぎない食事にしましょう。厚生省は一日に三十品目以上の食品をとるよう勧めています。実際にはなかなか大変ですが、これに近づくようにすれば血管の老化を遅らすことができます。そして適度に運動することです。


(c)子供の肥満の治療のポイント
●要するに、食べ過ぎないで体をよく動かしたらよいのです。
●子供だけでなく、家族全体の生活を見直してください。
●多くの場合、現在の体重を無理に減らす必要はありません。身長が伸びるからです。

(2)たばこを吸わない
 子供の間にできる最も実行しやすい成人病予防は、「たばこを吸う習慣をつけないこと」です。たばこを吸っていると、狭心症、心筋梗塞、癌を起こしやすくなることはよく知られていますが、その他にもたばこが原因で起こってくる病気はたくさんあります。10代で吸い始めた人は、吸わない人に比べ、喉頭がんで34.5倍、肺がんで5.7倍死亡率が高くなります。20代以後に吸い始めた人に比べ、害が強く出るのです。
 また、たばこは周りで吸われると吸っていない人にも害があります(受動喫煙)。
 タバコは習慣になるとやめるのが大変難しくなります。はじめから吸う習慣をつけなければ、やめるための苦労はいりません。
 たばこは最初から吸わないこと。だれかにすすめられても、「いやだ」と言いましょう。
大人は家庭の中でも、子供が小さいときから、たばこの害について教えていきましょう。たばこのコマーシャルや自動販売機のありかたも問題です。


(3)骨を強くする
 日本人のとる栄養素で不足しているのは、男性の場合カルシウム、女性の場合カルシウムと鉄だといわれています。カルシウムは骨のもとになるので大切です。
 骨量測定の機械が普及して、お年寄りの骨粗鬆症が話題になっていますが、もっと大事なのは子供のカルシウム摂取不足です。なぜなら、二十歳までにどれだけしっかりカルシウムが摂取できたかで一生の骨の強さが決まるということがわかってきたからです。
 子供のうちに、牛乳、乳製品、小魚、大豆製品、海草類、野菜などカルシウムの多い食品をを十分とることが大切です。
 同時に身体をよく動かさないと骨は丈夫になりません。スポーツをすると骨は丈夫になります。
 中高生や若い人の間で、肥満してないのにダイエットをする人が多いのは大変問題です。今はスリムでかっこいいと思っているかも知れませんが、将来骨折したり腰がまがったり、という形でつけが回ってきます。思春期は栄養を最も必要とする時ですから必要な栄養はしっかりとりましょう。