真島さんに何と呼ばれたいですか?
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*何も記入しない場合、青山美香になります。



初デート

今日は真島さんと初デートだ。
玄関を出ると、柔らかい春風が頬を撫でた。見上げた青空には白くうっすらと引かれた雲が、ゆっくりと風に流されている。
腕時計をちらりと見た。一時だった。
(真島さん、まだかな……。この服で大丈夫だよね?)
私は、白のフレアスカートをパンパンと手で払う。

突然、クラックションの音が鳴り響いた。振り向くと、黒のジャガーが近づいてくる。よく見ると運転席に見えるのは真島さんだ。
車が止まり窓が開いて真島さんが顔を覗かせた。

「おう、待ったか?」
「いえ、今出たとこです」
「ほな、早よ乗り」

私は、助手席に早足で行くとドアを開いて腰を下ろした。ベージュの革張りシートがひんやりして心地いい。足元のスピーカーからは、ラジオのDJの軽快なトークが流れている。
ちゃん、今日も可愛いなあ。そのスカートええやん」
「いえ、そんなことないです……」
「その言葉遣いはアカンでぇ。『そんなことない』や」
「う、うん」
「今日は、お台場行かへんか?」
「はい、あ、うん」
恥ずかしさで声が小さくなっていく。私は、俯いたまま両手を膝の上でそっと重ねた。
(どうしよう。緊張して次に何話していいか分からない……)

その時、信号が赤になり車が止まった。真島さんが、笑いながら私の顔を覗き込んだ。
「なあ、そないに固くならんでええって。今日はぎょうさん楽しいことしよな」
真島さんが、私の手をぎゅっと握り締めると、車は静かに走り出した。

お台場に着くと、中世ヨーロッパの街並みをイメージしたショッピングモールで、真島さんが両手いっぱいの服を買ってくれた。
カフェでは、テラス席でレインボーブリッジを見ながらふわふわのパンケーキも食べた。

海浜公園に来たのは六時だった。私は真島さんと展望デッキを手を繋いでのんびりと歩いていた。
海の向こうには、高層ビルが建ち並び、その上を羽田空港に向かう飛行機が飛んでいる。
真島さんが海に面した木製のベンチを指差した。
「あそこに座らへんか?」
「あ、うん」
真島さんが私の横に腰を下ろしたけど、なんだか近い。
もぞもぞと身体を動かして距離を置くと、真島さんは、ふっと笑ってその距離を詰めてきた。
「何やねん。もっとこっち来たらええやろ」
ぐいっと肩を引き寄せられ、温かな腕に包まれた。ほのかな香水と煙草の匂いに私の胸がドキッと鳴る。

「なあ、今日はメッチャええ日やったなあ」
「うん。でも、こんなに服買ってもらって悪いな……」
「何言うとんのや。よう似合うとったんやから、それでええんや。せや、今度会う時、どれか着て来てくれや。ええ女になるでぇ?」
「そんな……でも、迷っちゃうなあ」
私は、横にずらりと並んだ色とりどりの紙袋を見て頬をゆるめた。
「ねえ、あのパンケーキも美味しかったね」
「せやな。ちゃんのは苺がぎょうさんのっとたからなあ」
真島さんがヒヒッと笑い、抱き寄せている手で私の頭をポンポンと撫でた。
「なあ、また来ような」
「うん」
(また絶対だよ……)
目の前には、オレンジシャーベット色の夕日が海に反射して輝いていた。

時計は十時を回っていた。真島さんの車が私の家に近づく。窓の外を覗くと、見慣れた近所の風景が広がっている。
私は帰りたくなくて、真島さんの横顔をちらりと見た。運転席が左側なので、眼帯をしてないほうの目が見える。
(真島さんて、まつ毛が長いな。目もなんだかキラキラしてる……)
もう一度真島さんを見た瞬間だった。ばちりと視線がぶつかった。

「何や、俺のこと男前やと思うとるんやろ」
「ち、違います!」
「ほう」
慌てて視線を伏せてちらっと真島さんを見ると、真島さんはにんまりと笑っていた。

窓の外を見ると、私のマンションの前だった。真島さんが車をゆっくり止める。
「そ、それじゃ、また!」
「おう。また電話するわ」
私がドアに手を掛けた途端だった。いきなり腕をぐいっと引っ張られた。
「えっ!?」
真島さんの顔がぐっと迫ってきて、キスされる……と思った途端、後頭部に回った手に押さえられ、唇を塞がれた。
柔らかな唇の感触に私の鼓動が激しく音を立てる。
唇が離れた瞬間、
「ほな、またな。大好きやで」
何事もなかったように、ニヤリと笑う真島さんだった。

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