真島さんに何と呼ばれたいですか?
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*何も記入しない場合、青山美香になります。



レジャープール

私は、更衣室にある鏡の前で黒いホルターネックビキニから肉がはみ出てないかチェックしていた。
「胸よし!お尻よし!ムダ毛もよし!」
私は真島さんと大阪のレジャープールに来ていた。真島さんは大阪へ毎月出張して、ある五つ星ホテルの会員になっている。そのホテルのレジャープールは、とても変面白いという評判らしく、今日のデートは、そのプールに連れて来てくれたのだ。

プールサイドに出てみると、真島さんはジャグジーの横にある白いデッキチェアに寝転がっていた。
「真島さ〜ん!」
彼のもとへと早足で向う。私に気づいた真島さんはゆっくり起き上がって、
「おう、、えらい長い着替えやったなあ。寝てもうたでぇ!」
と、大声で言ってから、こちらに手をひらひら振りながら歩いてくる。近くにいた親子連れがちらちらと私を見た。
(もう、真島さんのバカ……)

私は肩をすくめて更に足早で歩いた。真島さんは私に会うなり、
「ええやないか、黒のビキニ。黒はやっぱりエロイのぉ」
と、ニヤニヤして呟き、私の周りを一周しながら舐め回すように見た。熱い視線を向けられてどぎまぎしてしまい、思わず両手で身体を隠す。
「も、もう、あんまり見ないでよ。人が見てるから……」
「せやけど、はホンマにええ女やなあ」
誇らしげな笑みを浮かべた真島さんは、顔を赤くした私の肩を抱きながら、ウォータースライダーへ向かって歩き出した。

このレジャープールは、小学校の体育館十個分はありそうだ。ドーム型の建物に覆われたプールの中央には、くねくねとカーブしたり、螺旋状になったりした白いスライダーがある。激しい水流に乗った人々が悲鳴を上げながら、次々と滑っている。天井を見上げると、ドームの内側に張ってある白い幕が、コバルトブルーの水に映えて美しい。

私たちは、期待に胸を弾ませながら、ウォータースライダーのスタート台に続く階段を上り始めた。眼下のプールや、ヤシの木がだんだん小さくなっていく。到着すると、高所恐怖症の私は、足がすくんでしまった。
「ねえ、ちょっと怖いかも……」
「何言うてんねや。早う俺の前座れ」
「うん……」
と、言って私が渋々座ると、真島さんは私の後ろに座って脚を伸ばし、温かい手をしっかり腰に回してくれた。
「ここにおったら怖いモンなしやで。ヒヒヒッ」
振り返ると、ニッと笑った真島さんは係員に合図していた。
ピッ。
出発の笛の音が鳴った。
「ほな、行くでぇ!」
と、真島さんが言うと同時に、勢いよく滑り出した。滝のような水流に乗って息が止まるような速さで滑る。スライダーがカーブするごとに、大きな水しぶきが吹き上がり、顔面には、水がシャワーのように降ってきた。

「きゃ〜〜!」
私は悲鳴を上げて、真島さんの腕をぎゅっと握り締めた。振り返ると、真島さんが目をギラギラさせて顔を前に突き出して笑っている。
「メッチャおもろいやないけ〜!」
真島さんの弾んだ大声が私の耳に響く。その頬が私の頬に触れた。
「うん!怖いけど、楽しい……ね!きゃあ〜〜!」
次のカーブに差し掛かった。真島さんは、前かがみになって私をぎゅっと抱きしめてくれた。
(私が怖いって言ったからだ……)
その瞬間、急カーブになって私と真島さんの身体がふわりと浮いた。弾け飛ぶ水しぶきや人々の声が、一瞬にして止まったような感覚に包まれる。私と真島さんだけの静かな空間。誰にも邪魔されない二人だけの世界へと舞い込んだ気がした。

スライダーの出口で激しい水しぶきを上げながら、滑り終えると、滑りを良くする為の温水が勢い良く流れてきた。
「何や、、髪めちゃくちゃやで〜」
「しょうがないでしょ!」
唇を尖らせながら、焦って髪を直す私を見て、真島さんがゲラゲラ笑う。近くにあったデッキチェアに二人で腰を下ろした。
「ほれ、貸してみ?」
真島さんが、髪を直している私の手を振り払った。乱れた私の髪をかき上げて、前髪から指でゆっくりすいていく。真島さんの顔を見た。髪をときながら、私の顔を時々覗き込んでくる。
「ええ女にしたるからなあ」
と、小声で言っては切れ長の目を糸のように細めている。真島さんは、ためらうことなく私としっかり視線を合わせて、ストレートな愛情表現をするので、思い切り照れてしまう。私は、耳まで熱くなっていくのを感じた。

「よし、ええで。別嬪さんの出来上がりや!」
真島さんは、私の頭をポンと叩いて、目線を合わした。私の胸の鼓動をトクンと高鳴る。私は、慌ててバッグから鏡を取り出した。たぶんダサイんだろうな、と思いながら鏡を見ると、いつもとは違う私がいた。お嬢様風という感じだろうか。品があって私がいつもより綺麗に見える。真島さんは、こういう髪型が好きなのだろうか。
「おう、どうや?メッチャ可愛いやろ?」
「うん、私じゃないみたいだけど、気に入ってる。ありがとう!今度からこういう風にするね」
「ええんや、好きな髪で。そないなことより、またセットしたるからな。さっきなあ、メッチャ楽しかったんや。俺、美容師の才能あるかもしれへん!」
真島さんは、真剣な眼差しで腕を組んで考えている。

「もう!真島さんには大事なお仕事があるでしょ?」
「せやなぁ。せやけど、このプールおもろいでぇ。まだまだ泳がなアカンなあ」
「そうだね」
私は真島さんの顔をにっこりと見上げ、彼の手に指を絡めた。
「なあ、、また来うへんか?」
「うん!」
「ほんなら、今夜はこのホテルに泊まりやな」
「え?」
「明日もプールに決まりやろ!」
真島さんが口角を上げてニヤリと笑う。私が目をパチクリさせていると、いきなり真島さんの手が伸びてきて抱きしめられた。

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