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12月24日
最初に二つの指輪を見せられた瞬間、僕の頭にビビ!と浮かんだのは教会で誓い合う僕と樹・・・。
そうならいいのに・・・って思ったけれど、違ったら恥ずかしすぎるからわざと答を間違えて樹を困らせた。だって・・・、いいの?そんなのもらっちゃったら、僕、ほんとうにこの先ずっと樹を放してあげられなくなってしまうよ・・・。その小さな指輪が、どのくらい僕を樹にしばりつけてしまうのか、僕が怖いほど一番自覚してる。
それなのに樹は、なんのためらいもなく、これは約束の、誓いの指輪だと口にして、僕の左の薬指にその証をはめてくれた。
指に触れた冷たい感触と反対に、胸が熱くなって、じゅ・・・って好きの気持ちがにじんでくる。
「結婚しちゃったみたいだね?」
って冗談で言ったら、樹は真顔でうなづいた。
キスをしようと顔を寄せてくるその目が、泣きたくなるほど真剣で、僕はうれしいのと同じだけ怖くなる。
僕でいいの・・・?
本当に、この指輪をもらっていいの・・・?
後で後悔したって、もう、返してあげないよ・・・?
聞く勇気もないくせに消せずにいる問いかけは、だんだん濃密になってくる樹の指や、唇の動きで思考回路ごとトロトロにとかされて・・・・・・まっしろになって、消えた。
サンタさん、もしいるなら、今夜は僕らのところへはこないでね。
僕は、もう、新しく欲しいものなんて、何一つないです。
12月21日
明日は第四土曜日でお休み。そして、週があけたらクリスマス!樹とは今日も一緒に帰れなかったけど、いいんだ。だって、内緒の贈り物を用意するのに、一緒にいたら困るでしょ?
お天気が良くないから今日は自転車もない。傘をさして校門をでるところで、
「先輩!」
大きな声に振り向くと芝崎君がちょっと情けない顔で立っていた。傘をもってきてたのに、心無い誰かに持って行かれちゃったんだって。芝崎君は電車通学のはずで、きっと駅まで同じ道だから、
「入ってく?」
ってお気に入りの真っ赤な傘をさしかけると、傘に負けないくらい赤くなった柴崎くんは首がもげそうなほど何度もうれしそうにうなづいた。
「傘、オレが持ちます!そういえば、さ、最近、帰りお一人ですよね・・・。」
巨体をすぼめて傘に入りながら、今日も周りを警戒してる。
「樹ならバイトだから駅とは反対がわにいっちゃってるよ?」
教えてあげると雨の日の太陽みたいな笑顔。ふふ、樹が知ったら怒りそう・・・。クリスマスの話をしながら並んで歩いた。それから、駅前のかわいい雑貨屋さんでボクのプレゼント選びにまで付き合ってくれる。
「カードですか?」
「うん。つきあいだして、最初のクリスマスだから、いつもよりちょっとゴージャスなカードにするんだー」
にこにこしちゃうのが止められないよ。きっとステキなイブになりますように・・・。
「カードだけでいいんですか?」
無骨な手できらきらのカードをめずらしそうに眺めながら聞かれたから、内緒の計画をそっと教えてあげることにした。
「耳かして?・・・あのね、カードと一緒にね・・・・・・・・・、・・・・・・・。」
「そっ、そ、それはっ・・・・・・!!!??!」
今度こそボクの傘より真っ赤ッかになって芝崎君が目をぱちぱちさせた。イイ考えでしょー?って自慢したら、ぼそぼそと独り言みたくこんな風に返された。
「先輩って・・・、実はものすごく、エッチなんスね・・・・・・」
「オトコはどこまでも、うんとエッチになっていいんだよー!」
好きな人限定、でね・・・?
12月17日
最近の樹は前よりもバイトが忙しいみたいで、毎日晩御飯にも帰ってこない。それでも、秀兄はいつもどおり4人分のゴハンをつくるし、樹も遅くに帰ってきてもしっかりそれを食べてる。もうすぐ12時・・・。樹おそいなぁ・・・。
ソファでうとうとしちゃってた僕は、髪をなでられる感触で目がさめた。
隣に樹が座ってて、見上げると目元にキスが降ってくる。ただいま・・・って囁く声は、少し掠れて、僕の耳の温度をわずかに上げる。
「おかえりなさい・・・。」
返した声がノドでつっかえて、僕はコホコホ咳をした。
「こんなトコで寝てるからだぞ。風邪ひいたらどうするんだよ。この前オレの事叱っておいて・・・」
「だって・・・。」
いろんな感情が混ざり合って僕は樹に抱きしめられながら目を閉じた。
だって、寂しいんだもん。ここで待ってないと、夜、樹に会えないじゃない?おやすみのキスが、できないじゃない?晩御飯を一緒に食べられない、それだけだって僕は悲しいのに。
今はみんな一緒にいられて、待っていれば樹とだって毎晩こうして抱き合える。だけど、いつかは秀兄も働きはじめて、樹も働きはじめて、雅君も・・・。そうしたら・・・みんなずっとここにはいられなくなるかもしれない・・・。幼稚園の頃、お父さんとお母さんともずっと一緒にいられると思っていたのに、気がついたらそばに居ない事に慣れてしまってる僕・・・。こんなふうに、世界で4人だけの兄弟なのに、そばにいられなくなって、それが普通になっちゃう日がくるかもしれない・・・。そばにいても、力になってあげられないことだらけなのに、離れちゃったら僕なんて、なんの役にもたてないままで・・・
「・・・芙束?」
「なんでもない・・・。なんでも、ないから。」
どうして僕はすぐに涙がでてしまうんだろう。男なのに。強くなりたいって、思うのに・・・。かっこわるい。それなのに、樹はまるごと抱きしめてくれるから。こんな僕でもいいのかなって思っちゃうんだ・・・。
12月14日
雅君とオフロにはいった。
なんだかひさしぶりで、背中あらいっこしながら僕はうれしくてごしごししすぎて・・・
「芙ちゃん、イタイ・・・」
「あ、ごめん、ごめんね」
アワアワの背中をうしろからぎゅーっとだきしめた。細っこい、雅君。ちびっちゃい、雅君。うでのなかでもぞもぞしながら、首だけで振り向いて内緒声みたいに小さく言う。
「こんなトコみられたら、オレ樹にまたいじめられるよっ・・・」
なにげないそのコトバに含まれていた単語に、僕は知らず知らず、まゆが八の字になってた。
「・・・・雅君。しょうじきに、言ってよね?」
「なに?」
「学校で、いじめられたり、していない・・・?」
自分で言いながら、変な緊張でごくんてノドがなっていた。だって、ずっと辛そうな雅君、学校でなにかあったんだって樹も言ってたし・・・、お勉強のこと雅君が毎日泣くほど悲しむとも、思えないし・・・そしたら、残りは・・・・・・・・・・
「違うよ。」
あっさりと答えるその声は、全然隠し事をしてるようには聞こえなかった。
「ほんとに?いじめる子がいたら、僕がなぐりに行ってあげるからね!中等部まで飛んでってぼこぼこにしちゃうんだから!」
「えへへ、ありがと・・・。」
恥かしそうに笑って、雅くんはもういちどきっぱり言った。
「オレいじめられてなんか、ないよ。」
いじめられて・・・、ない・・・。
まるで自分の言葉の中に何かを見つけたみたいに、雅くんは口の中でもう一回繰り返した。ふっとうつむいたその横顔に僕は一瞬どきりとした。
雅くんが、あんな表情をするなんて、今まで僕はちっとも知らなかったから・・・
12月12日
今日も樹はバイト・・・。気になって気になって、後をつけちゃおうかと何回も思ったけど、今日はまっすぐおうちに帰った。もちろん、お買い物当番だから、ちゃんとスーパーには寄ったよ?
早く帰ったわけ、それは、昨日から雅君が風邪で、学校を休んでるから。病気の時に独りぼっちで居るのって、すごく寂しいもんね。
ただいまーって小さく言って2階の雅君の部屋を覗いたら、ベッドの中からちっちゃい顔がこっちを見て、おかえりって笑ってくれた。
「待っててね。リンゴ買ってきたからジュース作ってあげるね。」
お母さんが、僕がまだ小学校に入ったばっかりの頃、風邪を引いたらいつも自家製リンゴジュースを作ってくれた。缶のジュースと違って、ほんとにほんとに100%リンゴなんだよ?だってお母さんがすって、絞ってくれてたんだから。雅君、お母さんのリンゴジュース、飲んだ事あったかなぁ。僕、お母さんみたいに上手に作れるといいけど・・・。
洗って、皮を剥いたら、なんだか、実が減ってしまった・・・。でも、それでもあきらめずにゴリゴリすりおろしたら、もわもわのリンゴジュースの元ができた。ガーゼにくるんで絞って・・・、
「あれ?少ないナァ・・・。」
ものたりないからもう1個分、ジュースにして雅君に持っていった。
僕がのろのろしていたせいで、真っ白だったジュースがちょっと茶色くなっちゃってあんまりおいしくなさそう・・・。
「お兄ちゃんの特性ジュースだよ?おいしくないかもしれないけど、元気のビタミンがいっぱい入ってるから、ググっと飲んじゃって!」
雅君のお口がむぐっとストローのはじっこをくわえて、コクコク喉を鳴らして二口飲んでくれた。
「・・・おいしい。」
「ほんと?よかったー!お母さんの味みたい?」
「すっげぇ、おいしい。ふーちゃんの味、お母さんよりおいしいっ・・・!」
ウソじゃないって分かるくらい、雅くんはあっというまに僕のリンゴジュースを飲みほしてくれた。うれしかった。僕にもできること、ちゃんとあるんだ。雅君、早く良くなってね。また一緒にオフロ入ろうね。

遅くに帰ってきた秀兄が、流し台を見て嘆いてた。リンゴの実が捨ててある・・・って・・・。それは、僕が剥いた・・・皮・・・の、つもりなんだけど・・・。やっぱりちょっと分厚かったかな。
12月11日
眠いよー・・・、起きたくないよー・・・。
あったかいシーツの中で僕はもぞもぞ首を上げて時計確認・・・。
「・・・・・。」
7時、30分・・・。
起きなきゃ学校におくれちゃう。だけど、昨夜は遅くまで樹とテスト勉強してたからどうしても目がしおしおしぱしぱ。眠たいよ。
むくっと起きあがって寒くてまた布団にもぐりこんだ。今日もいいお天気なのに、毎日どんどん寒さがきびしくなるみたい。着替えるのも勇気がいるくらいだもん・・・。
カベにかかってる制服を見上げていて、僕は名案がうかんだ!お布団の中で着替えれば寒くないよね?
ぷちぷちパジャマのボタンを外して、足を縮めてズボンも脱いで。
素肌にシーツの感触が気持ちイイ。裸でお布団にくるまれてると、どうしても樹とエッチした時の事ばっかり思い出しちゃって・・・僕ってば朝から何考えてるんだろう。裸になってから気がついた・・・。お布団出るのが余計に寒いよ・・・。
「芙束ー。おくれるぞ。」
うごうごしてたらドアが開いて、もうしっかり制服を着こんだ樹がお部屋に入ってきた!
思わずしっかりと首の根元でお布団を握りこむ。樹は、いつもそうするようにまずカーテンをいっぱいに明けてから、僕の方にかがみこんできた。
「おはよ。」
透明な朝日に横から照らされた樹が、やさしく微笑む。おはようって返しながら、なぜだかドキドキが止まらない。
「ほら、いつまでもぐりこんでんだよ。もう朝飯食ってる時間なくなるぞ?」
ぶっきらぼーに言うくせに、目がとびきり優しいんだから。
答えずにうっとりと見上げていると、ニヤっと一瞬笑った樹のおっきな腕が伸びてきて・・・
「ひゃぁっ!」
いっきにお布団をめくられて僕は寒くて縮みあがった!
「もうっ、なにすんの?寒いじゃないっ!」
「・・・・・・オマエこそ、朝っぱらから裸で何してんだよ・・・」
低く問われるその声に顔が染まってく。お着替えの途中・・・って正直に言ったのに、樹は「すげぇ誘い方・・・」っていきなり真剣な顔で僕に覆い被さってきた!あぁっ、違うのに、誘ってないのに!!
・・・でも、うれしいから僕もそっと目を閉じる・・・。
キスで始まる一日なんて、ステキだよね?