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thoughtless mind +++
哀川ナオ
同僚の女性教師に誘われて、江崎に振られた俺は彼女と花火大会を観に行った。
別に何の他意もなく、ただ、一人で花火を観に行くのは空しいと思ったし、兄弟揃って歩いている江崎の姿が見てみたいと思っただけ。
けれど他の同僚もいると思った俺の思惑とは全く外れて、やってきたのは彼女だけで、花火大会なんか生徒もたくさん歩いていると思うのにやたらと身体を押しつけてくる。
さすがにどうしようかと困っても、毎日顔を合わす同僚だけあってあまり無下には出来ないし・・・・と頭を悩ませていると、視界の隅に江崎の姿が飛び込んできた。
「あ、・・・」
思わず小さく声が漏れたけれど、屋台に気を取られていた女性教師には気付かれなかった。
どうしたんだ?
たった一人で、人波とは逆方向に歩いてゆく姿は見ている胸を大きく抉った。
そして、そんな今の彼にやましいことはなくてもオンナと一緒に歩く自分の姿は絶対に見せられないと思ったし、一瞬でも早く彼の側に行ってやりたかった。
ぼんやりとしている間にも、江崎の姿は人波に飲まれて見えなくなり始める。
「あ、」
ちょっと大きな声で言うと、女性教師が首を傾げながらコチラを見上げてくる。
「どうしました?」
「いや、スミマセン。俺、用事思い出しちゃって。」
ヘラヘラ笑いながらそう告げる。
「あら?そうなんですか・・・・・・・どんなご用なんですか?」
問われて、なめらかにウソが口から零れる。罪悪感の欠片もなく。
ただ、遠くに歩いて行ってしまう江崎のことだけが気にかかった。
「まぁ、そうなんですか・・・・・仕方がないですね。」
本当に残念そうに恨みがましい視線を向けられているのには気が付いていたけれど、最後に一言謝ってからすぐに江崎を追って身を翻すと人波を掻き分けた。
人が次第に少なくなって、やがて誰もいなくなる。
本当に江崎はこっちに来たのだろうか・・・・?
そんなふうに考え始めた頃、小さな公園が見えてソコに佇む人影を発見する。
間違えるはずのない愛おしい姿。
そっと背後から近づいて、決して小さくはないその背中を抱きしめた。
途端に腹に肘が飛んでくる。
でも、そんな彼の行動すらとても愛おしく感じてしまう・・・・
俺だと言うことに気が付いた江崎は、憎まれ口を叩きながらも瞳が揺れて今にも泣き出してしまいそうで、それに本人が気が付いていないのが本当に哀れだと思った。
哀れ、っていうコトバは良くない。本人が聞いたら、多分怒るだろうけれどそれ以外の言葉が思いつかなくてそんなふうに思う。
「う〜ん、だって俺とお前って恋人だろ?なら一緒に居たいじゃないか。」
隣に腰を下ろしてそう言ってやると、そっと目を閉じて息を吸い込む。
しばらく息を詰めた江崎が、小さな声で俺の名前を呼んできた。
「・・・・・恭介。」
それは、初めて呼ばれた名前で一瞬驚いてしまったけれど、あまりに小さな呟きのようで、変な反応を返すとそのままウソになってしまいそうだったから、何事もなかったように返事を返した。
「ん?なんだ?」
言うと、再び江崎は息を詰める。
そして、囁くような声で
「俺のコト、見つけてくれて嬉しかった・・・・」
そんなふうに言う。
本当に、寂しかったんだと思う。
人混みの中、楽しそうに語らうカップルの中をたった一人で歩く。
そして、俺が現れて嬉しかった。
本当に心細かったから、だから安心して、いつもなら言えない言葉が出てしまったんだと思うと愛しさが募ってメチャクチャにしてしまいたくなる。
でも、そんな心をじっとこらえて、そっと肩を抱き寄せて優しく口付ける。
高校生のガキ。それも男子生徒にこんなに惚れてしまっている自分に本当に驚く。
肩を落として歩いている姿を見れば、見境無く追って慰めてやってしまう。
それは、彼を慰めたいという心もあるけれど、あくまでも自分のため。
悲しそうな彼を見ているのが辛いから。
精一杯、肩肘を張って生きている姿が痛々しくて見ていられないから・・・・
守ってやりたい。
安らげる場所を作ってやりたい。
それが自分の腕の中だったら良い。
初めて見たときにそう思った。
「今日も帰らなきゃいけないのか?」
肩を抱き寄せたまま耳元に小さく囁く。
それはセックスの誘いでもあったけれど、それ以上に、もっと側に居たいというお願い。
滅多に自分の腕の中で眠ってくれない恋人への切実な願い。
「・・・・・・・」
那智黒の瞳がほんのちょっとだけ傷ついた色を浮かべる。そして自嘲気味に笑って答えた。
「家に帰っても誰も待って無い・・・・・」
あ、・・・・・・
自分の発言が、再び江崎の傷を抉ってしまったことに気が付いて一瞬息を止める。
「じゃ、俺んちの子供になれよ。」
出来るだけ冗談めかせて言った。抱き寄せた肩に回した腕に、ちょっとだけ乱暴に力を込める。
「しっかり可愛がってやるぞ〜」
笑って言うと、いつもの調子をちょっとだけ取り戻した江崎も
「バカ、可愛がるが違うだろ?淫行で捕まるぞ」
と、冗談なのかそうでないのかわからないような口調で返してきた。
自分の部屋に連れて帰ると玄関のドアを閉めたところで、ギュッと抱きしめて口付けた。
はじめから、深く唇を合わせてムリヤリ口腔を犯す。
歯列を割り、舌を絡め取る。
抱きしめた腕に痺れるほどに力を込めて、絶対に離さない、オマエが大切なんだと身体全部で訴える。
それでも、自分に無関心な彼にはなかなか伝わらない。
自分が愛される、というビジョンが頭の中で上手く想像できないようだ。
「んっ、ん、・・・・・」
苦しげに眉根を寄せて小さく首を振る。
息継ぎのように唇を離して、そしてすぐに再び唇を合わせる。
「っん、っ、」
ほんのちょっと非難するような響き。
そして胸の間で腕を突っ張ろうとする。
それでも、その腕を引き寄せて動きを封じるとそのままキスを続けた。
「なんなんだよ・・・・」
ようやく唇を解放された江崎は呼吸を整えながら、俺のことを上目遣いで睨め付けてくる。
「今日な、笹塚女史と花火観に行ってた。」
答えになって無いな、とは思ったけれど余裕の無くなってきている自分に気が付いていたから、言うべき事は先に言っておこうと口にする。
「は?」
案の定、ワケが分からないと言うふうに返事をする。それに構わず続ける。
「二人っきりだったし、ベタベタされたから、明日ガッコウでウワサになるかも知れねぇけど、やましいコトは何もしてないから、分かるな?」
言い訳がましいことは分かっていたけれど、自分の知らないところでそのウワサを聞いた江崎が一人で悩んで苦しむのは目に見えていたから、だから先に格好悪くても言い訳を口にする。
「やましいコトして無い、って言う方があやしい・・・・」
江崎はそう言ったけれどよく見ると表情はちょっとからかうように笑っていて、ホッと安心する。
そのまま腕が伸びてきて首を引き寄せられる。
引かれるままに顔を寄せて、柔らかで軽い口づけを受けた。
「・・・・・っん、はっ・・・・ぁ」
薄暗がりの中に濡れた声が響く。
白く浮かび上がった肢体は整っていて、濡れ羽のような黒い髪が小さな光を跳ね返して、しっとりと汗をかいた肌の表面を掌で確かめるように辿ると、しなやかな身体がうねる。
「江崎・・・・」
耳元に注ぎ込むように囁くと、ビクンと身体が震えて焦点の定まらない瞳がこちらを向く。
「なぁ、・・・・名前、呼んでくれ・・・・」
その言葉に、ふっと瞳の焦点が戻ってくる。
俺の目をじっと見て、そして逸らす。
「アンタ、が・・・・」
埋め込んだままの俺が気になるのかそこで一度言葉を切る。
「先に呼べ、ば・・・・・」
「江崎・・・・」
「ち、がう・・・・・っ、」
漆黒の、瞳が潤む。
「違う・・・・、」
もう一度繰り返して、潤んだ瞳から一筋涙が流れる。
胸が痛くて、身体を抱きしめる腕に力を込める。
「ゴメン、分かってる。・・・・・・・・・・秀、」
ギュ、と江崎の俺を収めた場所が締まる。そして、江崎は爪が立つほどに強く俺の両肩を握り締めてから、
「恭介、恭介っ・・・・」
と、うわごとのように繰り返した。
突き上げるたびに漏れる嬌声もひたすら名前を繰り返して、まるで壊れてしまったレコードみたいに『恭介』と口にする。
自分は愛されているんだと思う。
でも、それ以上に今日の江崎は弱っていて、こんなに江崎のことを傷つけた彼の弟たちにやりきれない怒りを感じた。
子供が親離れするのは当然で、当たり前だし自然なことだと思う。
その子供達の親代わりに、そう年の違わない、自分だって子供の江崎が必死でなっていた。
寂しい思いをさせないように、悲しい思いをさせないように・・・・
なのに、彼らはそんな江崎のことなんかこれっぽっちも考えないで巣立っていってしまう。
理不尽だと思うけれど、そんな彼らに怒りを感じてしまうほどに自分にとって江崎は大切な存在になっていた。
もっと、大人になりたいと思う。
なのに、こんなに年を取ってもまだ自分は子供で、江崎を傷つける相手に腹を立て、どうしようも出来ない感情を持て余して江崎の身体にぶつける。
「きょう、・・・すけっ・・・・・!」
掠れて切羽詰まった声が自分を呼ぶ。
ああ、
もう、誰も江崎のことを傷つけることができないように、江崎が誰からも傷つけられたりしないように自分の腕の中に閉じこめてしまいたい・・・・
でも、彼がそれを望まないのは分かっているから、そうすることによって彼が傷ついてしまうのが分かっているから、だから、
自分の中に閉じこもらないで。
思ったことは何でも言って。
いつだって俺は、
目の前がスパークする。
白濁を江崎の中に注ぎ込んで・・・・・
お前のことを、一番に考えているからーーーーーーーーーーーー
over sleep+++
目覚めると広い胸の中で、優しく包み込むように回された腕がとても心地よかった。
なんだか『守られてる』っていうカンジがして、本当に心地良い。
大きく息を吸い込むと、嗅ぎ慣れた男の匂い・・・・
体臭とタバコの混じったその匂いに安心するようになったのはつい最近のことだと思う。
そっと顔を上げて、相手が眠っていることを確認してからその胸に頬を押し当てて擦りつけてみた。
ネコのように。
「んっ・・・・・?」
まだ覚醒しない腕が、自分の身体を抱き直して、そしてあやすように指が髪の毛を梳く。
胸が甘く疼く。
何て幸せなんだろう・・・・・・
絡めたままの下肢に生理的に勃ち上がった象徴が触れている。
それは熱く熱を持って、心をかき乱す。
穏やかに、静まっていたはずの身体を疼かせて、消えたと思っていた置き火が再び熾り始める。
どうしたんだろう・・・・こんなふうに欲情してしまうなんてイヤだな・・・・
そう思っても、一度火の付いてしまった身体はそう簡単には静まらない。
こんなに幸せそうに眠っているのに、その腕の中でこんなふうになっているなんて、自分が浅ましい人間になってしまったようでほんの少しだけ悲しくなった。
身動ぎして背を向ける。そして呼吸を整えようとする・・・・・と、ギュッと背後から抱きしめられて、双丘に高ぶったモノを押し当てられる。
「オハヨ・・・・・俺もムスコも朝から目ぇ覚めまくり・・・・・」
「バカか・・・・」
寝起きの掠れた声で耳元に囁かれる。
「秀。」
冗談をたしなめようと振り向いた途端に、そんなコトを言う。
ズルイ。
本気でそう思った。
「オハヨ、秀。」
返事が出来なくて、黙って人なつっこい犬のような瞳を見上げる。
「おはようの挨拶して、オマエも。」
優しく見守られて、俺は顔を逸らしながら小さな声で言う。
「オハヨ・・・・」
「誰に言ってるんだ?」
笑う声。
「アンタにだよ」
「アンタって誰?」
「エロ教師」
「エロ教師って誰?」
楽しそうな声音が耳に心地良い。ずっとそんなふうにやり取りしていたかったけれど、ネタ切れで黙り込む。
「なぁ、言えよ。」
「・・・・・・・・・・・・・」
そんなふうに改まって促されると言いたくても口から出てこない。
そんな俺を見て嬉しそうに微笑んだ・・・・恭介は、抱きしめる腕を滑らせて、昨日さんざん自分のモノを突っ込んでメチャクチャした場所に指を差し入れてくる。
まだ柔らかいソコはまるで歓迎するように指を受け入れて、カーテン越しの朝日に恥ずかしくて身を捩る。
「仕方ないな〜。」
言って、本当に無造作な手つきで俺の腰を引き寄せる。
そして勃ち上がったペニスを本当に当たり前のような仕草で、さっきまで指が差し入れられていた場所に埋めてくる。
「あっ、・・・・!」
あまりにすんなりと飲み込んでしまった驚きと、やっぱり感じる圧迫感。
「な、呼んで?」
昨日のようにではなく、緩やかに優しく焦らすように腰を動かされて息を吐く。
ゆっくりと擦られる内壁は焦れったくて、もっと強い刺激が欲しいと腰が揺れそうになる。
「呼んで、俺の名前。・・・・・そしたら、オマエの望むようにしてやる。」
その声に誘われるように小さな声で呼んだ。
「恭介・・・・・」
グンと自分の中のモノが質量を増すのが分かった。それが嬉しくてもう一度名前を呼んだ。
「恭介・・・・・・・」
「偉いぞ、・・・・・・・で、どうして欲しい?」
笑いを含んだ声で耳元に、そう囁いてくる。
「なっ、・・・・!」
ズルイ、やっぱコイツはズルイ。
そんなコトまで言わせようとするなんて・・・・!
意地になって黙っていた。
ゆっくりと揺すられて、焦れったさに神経が焼き切れてしまいそうだったけれど、顔を背けて熱い息を殺す。
そんな俺の姿を見ていた恭介は、ほんのちょっと小さくため息を付いてそして笑う。
「分かった。俺の負け。」
大きく突き上げられて声が漏れる。
「ああぁっ!」
そして、ギリギリまで引き抜かれたペニスが再び根元まで押し込まれる。
何度も繰り返されて、ただ、広い背中に腕を回して愛おしい男の匂いに包まれる。
気持ち良い・・・・・死にそう。
「秀・・・・・・」
耳元に囁かれた名前に耐えきれなくなって、二人の間に吐精する。
そして、体を震わせると自分の中に恭介が暖かな液体を放つのを感じた。
息を整えて、そしてゆっくりと身体を離す。
「さて、ガッコウ行かなきゃな。」
「え?」
「今日、平日だろ?」
「・・・・・・・・・」
げ、信じらんねぇ・・・・・・・無理だって。だって・・・・・・
ベッドから降りようと、床に足をつけてもふわふわして頼りない。腰がバラバラになってしまいそうで思わず膝を付く。
「ん〜〜、可愛いね。でもオマエは寝てなさい。あ、その前にシャワーは浴びたいよな?」
言いながら、まるでネコの子のようにヒョイと抱えられてバスルームに向かう。
「もう、絶対に平日はアンタんちには泊まんねぇ・・・・・」
上目遣いで恨みがましく言うと楽しそうに笑う。
「じゃ、休み前には泊まって行けよ?」
全然話にならない。
でも、それがとても心地よくて、キレイにメイキングし直されたベッドに押し込められて、いつもの教師ルックに身を包んだ恭介が投げキッスをしながら出勤する後ろ姿を何とも言えない気分で見守った。
オワリ
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