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| 12月22日 |
| 「なんか、・・・・あった?」 亮から電話があって、そんな風に言われてしまったのは話しはじめて5分とたたないうちだった。普通に、普通に、って必至でとりつくろってるからかな、オレ・・・すごく緊張して、聞かれた瞬間乾いたノドに空気を飲みこんでた。 「亮・・・・、オレね・・・。」 「んー・・・?」 優しい声。嬉しそうな声。ずっと聞いてたいよ、オレ、亮に嫌われたくないよっ・・・。 「楽しみ、だなっ。あさって!」 油断したら揺れそうになる発音を、ばれないように大声で言った。 「・・・なんだよ。そんな叫ばなくたって、カワイイ声ちゃんと、届いてるのに・・・。」 可笑しそうにつぶやく亮の吐息が、受話器ごしに耳に触れて、たまらない気持ちになった。 「・・・あ、ゴメンっ秀兄が呼んでる!あさって、待ってるからな!ちゃんと来いよなっ!」 ウソをついた。 秀兄はさっきスーパーに買出しに行ったのに・・・。 コレ以上声を聞いていたら、オレ、きっと泣き出してしまう。 亮は、信じてくれたみたいで、じゃ、あさってな?って言って電話は切れた。 ツーツーっていう無機質な音が、まるで亮とオレの関係の危険信号を知らせる音みたいに聞こえた。 どうしよう、どうしよう、どうしたらいいんだろう。 亮に会って、オレはちゃんと言えるだろうか。ずっとずっと待っていてくれた亮に、どうやって伝えたらいい?それとも、隠し通して・・・亮と・・・!? 考えただけで、ゾクっと震えがきた。 違うのに・・・、亮は鷹野じゃないし、無理やりオレの事痛めつけたり・・・絶対にしないのに・・・! まえははっきり自覚していた亮とセックスしたいと思う気持ちが、いつのまにか心の中から消えていることに気がついて、オレは自分が泣いてることにも気づかず、ただ呆然とカベを見つめて立ち尽くしていた。 目の前のカレンダーの24日の欄。アキラ・・・、と2週間前のオレが書いた踊るような文字がそこにあった。 |
| 12月17日 |
| 芙ちゃんに聞かれて、答えて、はじめて気がついた。 いじめられてなんか、ない。鷹野がオレにあんな事をした理由・・・。なんども言われたのに、全然理解できてなかった。 好きだ・・・っていう、短い3文字・・・。 オレは、知ってる。誰かを好きだと思う気持ち。その想いが、届かないと分かった時の気持ち・・・。鷹野は、すぐそばでオレと亮がヤラシイことしてる声を・・・聞いたんだ・・・。 オレが秀兄に恋をしてたとき、あのセンセイと秀兄のそんな場面にでくわしたら、どうなってしまっただろう。オレ、自分でも知らないうちに、鷹野にひどい事・・・してたんだ・・・。文化祭前の放課後、寝てるオレのまぶたに鷹野がキスしたのは・・・、勘違いじゃ、なかったんだ。 鷹野だって、痛かったんだ・・・。だけど、オレだって、すごく、痛かった・・・。 朝、教室に入ろうとした瞬間、中から出てきた鷹野と鉢合わせて、心臓がドクンと震えた。 「・・・ぁ」 声が出なくて固まる。あの時の痛さを体が覚えてて、怖いと思うオレの本能がおびえたように距離をとってあとずさった。 鷹野は、唇を噛んで目をそらして、オレのヨコをすりぬけて出ていった。 ふいに、思い出した、鷹野の笑顔。いつもオレのあたまをぐしゃぐしゃしながら、落ち込んでた時は元気付けてくれて、部活があるのにオレの為に時間をとってくれて・・・。居心地がよかったのは、鷹野がオレを大事に思ってくれてたからなんだ。 オレがなくしたもの・・・すごく、おっきい・・・。 「好きだ・・・。」 鷹野の声が耳に甦った。 たったの3文字・・・。だけど、すごく大事な3文字。 亮からは、まだ、もらっていない・・・3文字・・・。 |
| 12月14日 |
| 鷹野の顔を、見たくない。もう、会いたくない・・・。そう思うと、ずっとずっとうちにこもっていたかったけど。 そんなことをしていたら、秀兄たちをもっと心配させてしまう。 いっぱいいっぱい優しくされて、抱きしめてもらって、それなのにオレの気持ちの根っこの部分はいつまでたっても暗いまんまだった。トイレに入るのが怖いくらい痛かったおしりが大分ましになっても、気がついたら涙がこぼれだして止まらなかった。 そのたびに、心の中に亮がうかぶ。優しい指先や、なだめるようなキス・・・、それから柔らかい金色の髪を透して、オレの全部を包みこんでくれるような濡れた黒い瞳。そこに、亮はいないのに、匂いまで思い出せて、何度も布団を抱きしめた。 どうして、こんなふうになっちゃったんだろう。オレは、どうしてもっと早く、亮にホントの気持ちを言わなかったんだろう。 オレと、セックスして・・・って、ハロウィンの夜、どうして・・・オネガイしなかったんだろう。 くやしくて、悲しくて、どんなに後悔しても、過ぎた事は巻き戻しできないんだ。鷹野に会うのが怖いのと、おんなじくらい、亮に会うのも、怖いと思ってる。だって、知られたく、ない。こんなオレ、見られたくない。全部をさらけだせる勇気もないのに、受け入れて欲しいって思ってる、そんな自分がイヤで、また涙がでた。 三日ぶりに行った学校は、何も変らない。 「風邪ひけてよかったなー!バカじゃないって証拠だろ?」 とか、ふざけて笑う友達に、うるせーって言い返しながら自分の席についた。 窓際の席に見える、背中。振り向かない、背中。 休む前と変らず、1度も目さえ合わないまま、うちに帰った。 |
| 12月11日 |
| ケツに穴があいたと、思った。 もう開いてるのに、もういっこ、開いたかと、思った。 痛くて痛くて泣いた。 涙でかすむオレの目の前で、鷹野も泣いてた。 なんでこんなひどい事をしながら、鷹野の方が辛そうな顔してんの? 痛いのはオレだろ?辛いのは・・・オレだろ・・・? 鷹野がオレの上からどいた後。 シーツに赤い血が見えて、またひっくり返りそうになったけど、オレはふんばって立ちあがった。 オレを支えようと伸びてきたアイツの手を、思いきりはねつけた。 保健室を出る瞬間、江崎、って呼ばれた。 もう、振り向こうとは思わなかった。 ドアを閉めた後、好きだって、また、聞こえた。 朝、起きようと思ったのに身体がだるくて動かなかった。おしりも、ずきずきする。なんにも考えられなくて、また目をつぶった。 誰かにそっと髪をなでられて目を開けると、秀兄がオレのことをじっと見つめてた。 「昼休憩、抜けてきた・・・。熱下がったか・・・?」 おでこをこっつんこされて、布団から出てる手をぎゅっと握られたら、まばたきもしないのに涙がつうと、落ちた。 「まだ、苦しいな。」 目もとをちゅっとすわれて、オレは声が出た。 「う・・・・うぅ、えぇっ・・・・」 小さい子供の泣き声みたいだった。秀兄、って泣き声で呼んだら、大きな胸に抱き寄せられた。 頬擦りされて、抱きしめられて、わぁわぁ泣きながらあったかい首筋に顔を押し付けた。 ずっと、ずっと、ここに居られると思ってた。 だけど、気がついたら、秀兄にも見せられない部分が、オレの中に、あった。 もう、戻れない。 だけど、今だけ・・・。お願い、今だけは、小さい子供みたいに、優しく抱いて、なぐさめて・・・。 そんなオレの願いを叶えてくれるその腕は、俺が泣き寝入りしてしまうまで、何も言わずにオレを包みこんで、いてくれた。 |
| 12月10日 |
| 放課後、校門前の掃除当番のオレは、あつめた落ち葉やゴミを袋に詰めて、一人焼却炉へいくために校庭のすみっちょを歩いて居た。 校庭では、もう陸上部が練習をはじめてて、鷹野がストレッチしてるのが遠くに見える。きちんと話したくても、前みたいにいつも一緒じゃないし、二人だけで話しができる機会も全然ないんだよなぁ。・・・あぁ、いつになったらちゃんと聞いてもらえるんだろ。 そっちに気を取られてたオレは突然叫ばれた声が自分に向かって言われたなんて全然思わなかった。 「危ない!!!」 ・・・なにが? ってぼんやり振り返った瞬間、オレの意識はそこでプッツリ途切れてしまった。 気がついたら真っ白い天井がぼんやり見えて・・・・ あれ?ここどこ・・・?起き上がろうとしたら頭がズキンと痛んだ。 「・・・江崎?」 聞きなれた声がすぐそばでして、そっちに目を向けたら、オレの事を心配そうに見下ろしてる鷹野が、いて・・・ 「オマエ、なんでそうあぶなっかしーんだよっ。サッカーボール顔面に食らってそのまま後ろ向きにひっくり返って脳シントウおこしたんだぞ・・・。」 のうしんとう・・・。サッカーボルが・・・顔面に・・・。思い出そうとしても、最後に見てたのは遠くの鷹野の姿だったことしか思い出せなくて、うーんと眉をよせた。 「もしかして、どっか、痛いのか?先生呼ぶか?放課後だからもう帰ってるかもしれないけど・・・」 ブラインドが下ろされた窓の外はもう、真っ暗。 そっか、ここ、保健室なんだ・・・。クリーム色のカーテンに囲まれた窓際のベッドに、オレは寝かされてた。 「・・・鷹野、もしかしてずっとついててくれた・・・?」 「しょ、しょーがないだろ!ほっとけない・・・、し・・・っ。」 うれしかった。 ずっとこんな風に話してなかったから、久しぶりにこうして居られて、そのうえオレの事心配してくれてる・・・。 うれしくて、目の前がちょっとだけかすんだ。 「鷹野、ありがと・・・。」 別にイイヨといいながらあっちを向いてしまった友達の顔を見上げて、オレはずっと言おうと思っていたことを口にした。 「あのさ、もう、言わなくても知ってると思うけど・・・オレ、亮のコト、好きなんだ・・・。」 鷹野の横顔から表情が消えたけど、かまわずに勇気をふりしぼった。 「鷹野が、溝口と付き合ってるのと、なんにも変らないんだ。気持ち悪いって、思うかもしれないけどさ、ほんとうに、みんなと変らなく、オレ・・・、ちゃんと恋をしてるんだよ。鷹野にだけは、分かってほしかったんだ。もう、前みたいにオレのこと友達だって思ってくれてないかもしれないけど・・・っ、ちゃんと言いたかった。オレ、亮を大好きなんだ。恋人みたいに、大好きなんだ。・・・それと同じに、鷹野の事も一番の友達だってずっとずっと思ってる。・・・だから・・・、前みたいに、また・・・、一緒に遊んだり、ふざけたり・・・、してたいよ。」 そこまで言いきって、はぁ・・・と大きく深呼吸した。伝われ、伝われ・・・!オレの気持ち、ちゃんと鷹野に届け・・・!!! 「・・・・じゃない・・・。」 ボソッと言われて、オレは、え?と聞き返していた。 「友達なんかじゃ、ない・・・。」 もう一度、はっきりと言われて、伝えられたことで胸の中をいっぱいに満たしていた暖かい気持ちが、ハリを刺された風船みたいに一瞬であとかたもなく消え去って・・・ 「友達なんかじゃ、ないんだ。」 また、言われて、とうとうオレの目からぽろりと涙が零れた。 鷹野が、オレの方に向き直る。男のくせに泣き顔なんて、恥かしくって見られたくないのに、もう溢れだした悲しい気持ちがどんどん涙にかわってオレのほっぺを落ちていった。 「どうして・・・?なんでだよ、そんなに、おかしなコトなのか・・・?溝口と鷹野、この前教室でっ・・・キスしてただろ・・・?同じだよっ、好きだったらキスしたくなるだろ・・・・!なんで、オトコ同士だったら、ダメなんだよぉっ・・・同じ、気持ちを大事にしてるだけなのにっ・・・・」 「・・・キスなんか、してない。」 「・・・え?」 「キス、しようと思ったけど、できなかったんだ。」 オレを見下ろしたままそんな風に言う鷹野を、だまって見上げる。 「付き合えば、好きになれるかもって思った。忘れさせてくれるかもって、思った。・・・だけど、やっぱ、ダメで・・・っ。好きな奴でもないのに、キスなんかできねぇだろっ!」 いきなり肩をきつく抑えつけられた。 真っ白な天井に、鷹野の真剣な顔が・・・・影になって・・・ 「なぁ、なんでオレ、オマエにこんな興奮すんの・・・?」 「・・・たか・・・の?」 「なんで、・・・・オマエだと、・・・・キスしたいって、セックスしてみたいって・・・そう思うの・・・?」 目を見開いた瞬間、唇に柔らかくて暖かいものがくっついてきた・・・・・・ なに? オレ今、なにしてんの・・・? 鷹野に・・・なに、されてんの・・・・・・? 唇に触った、濡れた舌の感触に、びくっと身体がすくんで、オレは覆い被さってる体を力いっぱい突き放した。 壊れたみたいに心臓が走り出して、まっすぐにオレを見る鷹野の目が、冗談でやってるんじゃないんだってオレに痛いほど悟らせた。 「・・・っな、なに・・・すんだよっ・・・」 震える泣き声で、やっとそれだけ言ったオレに、鷹野は決定的なヒトコトを言って、オレをベッドに押し倒した。 「オレは、っ・・・オマエが好きだ・・・っ!」 |