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○月×日・・・・・・雪。 今日は僕のお買い物当番の日・・・。なんにも言わなくても、僕がお財布を持って玄関へ向かうと、樹もコートを着こんでついてきてくれる・・・。 樹が当番の日、僕ぼんやりしていて一緒に行かない時もしょっちゅうあるのにね。 だまって手袋を渡されて、それを両手にはめながら思うんだ・・・。あぁ、思われてるんだなぁって・・・。 本当は、腕を組んだり手を繋いだり、いっぱいいっぱいくっついて一緒に歩きたい。 だけど、そんなふうにしたらご近所から樹までがおかしな目で見られちゃうから、ぐっとがまんして隣に並ぶ。 女のコとオトコのコの恋人同士が、うらやましい・・・。 すれ違うカップルを、思わず視線で追いかけてた。だって、ぽっけの中で手を繋いでる・・・。きっと、うんと暖かいんだろうなぁ・・・。 チラっと隣の樹のコートのぽっけに目をやった。黒い手袋の右手がその中に入ってる。 僕もあそこに手をいれたい。 樹のぽっけの中で、ぎゅうっと手を繋いでいたい・・・ ぽっけに向けられた視線に気がついた樹が、なに?って目で問い掛けてくる。 「なんでもないよ。」 って答えて、一緒にお買い物。 重たい牛乳とか、ペットボトルのジュースとかは、樹が自分の袋にどんどんつめて、いつも僕の袋は樹のソレより、うんと軽くなる。 「樹ー。」 ビニール袋をかさかさ言わせて来た道を戻りながら、呼んだ。 「ん?」 何気なく答えるその声が、好き。 冷たい風に後ろに流れてるサラサラの髪が、好き。 切れ長のその目が僕を映す時、微かに微笑む表情が、たまらなく、好き。 だからお願い、ずっとずっと、このさきも、僕をいっぱいその目で見つめていてね。 「なにニヤニヤしてんだよ、キモチワリー。」 「あ、ヒドー!気持ち悪いってなに?今、樹のコト考えてたのに・・・。」 抗議しながら手袋の手でホッペを覆った。 ・・・僕、樹を見てる時、樹を思う時・・・にやにやしてるんだろうか? いっつも、そんな顔してるんだろうか・・・? それって・・・気持ち悪い顔なのかな・・・。 「真に受けんなよ・・・。冗談だろう?」 樹の右手が伸びてきて、ツンと優しくほっぺを突つかれた。 「・・・だって・・・、僕、ニヤニヤ・・・・」 「そういうカワイイ顔は、二人きりの時にだけ見せるように。」 耳元で内緒声で呟いた樹は、ちょっとだけ早足になって道路を横切っていく。駆け足で追いついたら、樹の足はそのまま公園に向かって進んでいった。 「・・・寄ってくの?」 って聞いたら、イヤか?って聞き返されて、僕はもちろん首を横に振って後についていった。 街灯から離れた薄闇に包まれたベンチに、並んで座る。コートごしにも、おしりが冷たい・・・。 「・・・暗くなるの、早くなったな・・・。」 独り言みたいに言って、樹の腕がそっと僕の肩を抱き寄せてきた・・・。 「・・・。」 うれしくて、吐く白い息が小さく震える。 このくらい暗ければ・・・いいよね? もっとそばに行っても・・・、もっとくっついてても・・・・ 体をずらして、樹の方に体重を預けた。 頭を柔らかく抱かれて、樹の白い息がふわっと冷たい空気に溶けて、消えていくのが目に映る。 「恋人どうし、みたい・・・・。」 うっとり囁いたら、みたいじゃないだろうって叱られた。外でこんなふうにしていられるのは、夜の間だけ・・・。本当は、明るいうちにも樹と手を繋いで歩きたい。本当は、みんなにいっぱい自慢したい。 これが僕の彼氏なんだよ!って・・・知って欲しい・・・。だけど、僕はオトコだし・・・。 そう、思ってることを樹に言ったら、社会が変ればイイのになー、だって。 「芙束がオンナだったらなんて、考えたこともねぇよ。」 あっさりと言われて、だけどそのコトバはじんわりと僕の胸をあたためた。 このままの、僕を、好きでいてくれる。変るのを望むのは、僕の性別よりも社会の方だなんて・・・。 おかしくて笑ったのに、ちょっとだけ涙がでた。 ぎゅっと抱きしめてもらっているのになんだかとても、切なくて・・・滲んでくる涙は、なかなか止まらなかった。 帰り道。 僕の左手は、樹のコートのぽっけの中・・・。 早めに沈んでくれた太陽に、感謝・・・。 それと、僕のささやかな願いを叶えてくれた優秀な彼氏には、お礼におうちにかえってからいっぱいキスをしてあげようと思う・・・。 |
| 江崎 芙束。 |