| 聖なる夜には奇跡が起こる・・・とは限らない 〜芙束と樹の場合〜 |
| 「・・・うそ、こんなのいつ買ったの・・・?」 銀色に輝くシンプルなリングを指につまんで、芙束はただでさえ丸い両目をさらにまるくして聞いてきた。 「昨日。」 正直間に合わなかったらどうしようかと悩んだが、どうにか今日までに目的だったペアリングを買う事ができた。 同じくシルバーのリングを摘んで、かざして見せながら言うと、 「え?なんで二つもあるの??二つも同じの、くれるの??」 「や、そうじゃなくて・・・」 「なぁに?」 純粋に首を傾けて問いかけてくる眼差しに、「二つともオマエにやるよ・・・」と言ってしまいそうになる心に鞭打って教えてやった。 「コレは俺の・・・。」 そう言って自分の指にはめると、芙束は突然悲しげに顔を歪ませた。 な、なんだっ・・・!?やっぱり二つ欲しかったのか!!?? 「樹・・・僕のプレゼント物足りなかった・・・?」 意外な事をポツリと言われる。 芙束からのプレゼントは、手作りのクリスマスカードで、秀や雅也、おまけに亮の分とまったく同じかと思うと多少の切なさは込み上げたのだが、中を見て、コレ以上のものは無いと思ったのはうそではない。 ころころした不ぞろいな文字がカードの上で踊っていた。 『樹、メリークリスマス。世界で一番大好きです。これからも、どうかずっと僕と一緒にいてください。 愛をいっぱい込めて・・・芙束より。』 横にはお得意の俺と芙束が手を繋いでいる微笑ましいイラスト。ぎゅっと胸が熱くなり・・・その下にノリで張られた3枚の紙切れに書かれていた赤い文字が、俺の脳天を直撃した。 『僕になんでもしていいよ券』 『僕を好きにしていいよ券』 『僕になんでもさせていいよ券』 と、ハート付きでしたためられていたのだ。 雅也あたりに見られないうちにしっかりとカードを閉じて芙束の方を見ると、パチっと目が合った瞬間はずかしそうに下を向いてしまった・・・。 あぁ・・・、なんてカワイイ恋人を手に入れたのだろうと、改めて芙束を産んでくれた両親に感謝したほどだった。 内容はどれも似たりよったりなのに、懸命に違う書き方を探した様子が目に浮かんだ。 その宝物はしっかりと机の引き出しに保管されている。 思い出して黙りこんでいる俺に、誤解した芙束が指輪を握ったまま今にも泣き出しそうな声で告げた。 「やっぱり・・・!僕のプレゼント毎年カードだから、気に入らなかったんだっ。だから、樹自分の分もプレゼント買ったんだっ・・・・!!ヒドイよ、僕、一生懸命書いたのにっ・・・よろこんで、もらおうと思ったのにっ・・・・」 「違う!!違うにきまってるだろ?!アレは一生宝物にする!!ものすっごくうれしかった・・・。ウソじゃないってば・・・。」 抱き寄せて、ペアリングの意味を伝える。同じモノを持っていたいという気持ち。世界でたった一つ、対になっているモノを身につけて、いつでも一緒なのだと誓う証・・・。 だから、二人で一つづつなのだと、耳元に短いキスを交えながらそっと説いた。 胸にすりよったまま、芙束は、そうだったんだ・・・と安心したように口にして、 「それじゃぁ、その樹の分は僕が買ったほうがなんだか、いいかんじだよね?」 と続ける。 「あ、でも・・・もう今月のお小遣い全部つかっちゃった・・・。来月のお小遣いもらったら、そのお金はらうからね・・・?」 ・・・・オレラの一月の小遣いで買えるような金額なら苦労は無かった・・・という思いを胸に秘めて、気にしなくていいからはめさせて? と、カラダを離す。 そして、華奢な薬指に想いの結晶をそっとくぐらせた。 「・・・きれー・・・ありがとう、樹・・・。一生、大切にする・・・。」 数日前から、今夜はこうしよう、と芙束が用意していたキャンドルライトにてらされたオレンジ色の俺の部屋のなか。 静かな光を帯びるリングをうっとりと見つめるその瞳が、何ものにも代えがたい俺の宝物なのだ。 二人、左手を並べて見せ合う。 「・・ふふ、おそろい。」 結婚しちゃったみたいだね?とうれしそうに笑う横顔に、抑えきれなくなって唇をよせた。 その頬を啄ばむ音に呼応するように向き合った芙束と、甘いキスを繰り返す。 「・・・芙束・・・ケーキの味がする。」 「・・・おいしくない?樹、甘いの好きじゃないから・・・」 「例外もある・・・・・・・」 キャンドルライトは、それだけで充分に二人のムードを盛り上げて、混ざり合うだ液が舌の動きでぬれた音を部屋に響かせた。 芙束が、ん、ん・・・っと鼻から切なく鳴き声を零し始めた頃には、俺の右手が彼のセーターの下にもぐりこんでいって・・・弱い脇腹をくすぐるように撫でると、「ひゃ、ん」と腕の中で身をよじる。 かまわず腕を奥へもぐらせて、まだ柔らかい胸の粒を人差し指で緩く撫でてやった。 零れる喘ぎをキスで封じたまま親指と人差し指で挟んで揉んでやると、すぐに芯を持って硬くなる。 見たい、と言う本能のままに、下のシャツもまとめて首までセーターをまくりあげると、「あっ・・・」と短く声をあげて芙束の潤んだ両目がまっすぐに俺をうつしだす。 白い肌に形を変えた突起が、ロウソクの揺れる明かりの中、誘うように色づいていて。 「・・・そこばっかり、見ないで・・・。」 はずかしげに胸を隠す仕草が、余計に俺の理性をとろけさせ、手首をベッドに抑えこんでそこへキスを贈る。 「あっ・・・ぁぁ、・・・・やっ・・樹、だめだよっ・・・声出ちゃう、雅君たちに、・・・聞こえちゃうっ・・・!」 「大丈夫。あいつら下で朝までビデオ見るって言ってたから・・・少しくらい声だしたって聞こえないよ・・・。それに、今更止めろっていわれても・・・手遅れ・・・・。」 震えている手を導いて俺の昂ぶりを教えてやると、芙束は自分からも遠慮がちに指をからめながら、ムリなリクエストをしてきた。 「・・・じゃぁ、僕があんまり声をださないような、えっちを、して・・・・?」 分かった、と安請け合いで頷いたのはいいが、そんな方法なんて聞いたことも無い。まして、個人差があるとして芙束がどのあたりに分類されるかを推測すると、間違い無く・・・感じやすくて声が止まらないタイプで。 二人きりの場合だと大いに結構なのだが、密かな情交をかわす場合この手の恋人は・・・・ 「あ、・・・っ、ぁ、んあ・・・っ、んっ」 両手で口を抑えながら、もうしっかりと目まで閉じてそこから涙まで零している芙束は、まだ指で中を探っているだけだというのに喘ぎが止まらない。 漏れてしまう声を必死で堪えるのが余程苦痛なのだろうか・・・。気遣う俺がいる一方で、もっと鳴かせたい、もっと快楽に溺れる肢体を見たい・・・。そう願う邪な自分も確かに存在していて・・・ 内心の葛藤は芙束の声と淫蕩な腰の動きに敢え無く後者圧勝に終わり、早く混ざりたいとさっきから痛いほど充血している俺のその部分は、既に先端を潤ませていた。 一糸も纏わず足を大きく広げたまま、ベッドで仰向けになっている芙束が、涙声に誘う。 「お願いっ・・・・いっちゃん、・・・っもう、いいから・・・っ・・・」 「・・・何が・・・、いいの?」 いじわるく訊き返しで、内部の一点を指で引掻くように擦った。 「あっ!・・・、やぁっ・・・・」 濃さをました透明な愛液が、芙束の高まりを体言するように健気に上向いた欲望を伝って、俺が指を挿し入れている部分まで流れてくる。もう充分に熱く蕩けている内部を、二本の指で掻き回した。 「やだっ・・・ぁっ・・・、あっあぁ・・・・っ」 下からの粘着質な恥かしい音を掻き消すように、切羽詰った芙束の声が濡れて光る唇から溢れて・・・ 「いっちゃんっ・・・!はや・・・くぅっ・・・!」 涙でいっぱいの目元を真っ赤に上気させて、腰を浮かせた芙束が強請る。もう、声を気にする余裕なんであるわけなくて。赤く咲いて収縮をくりかえす入り口に欲望をあてがい、その細い腰を両手で引き寄せて一息に根元まで突き上げた。 「あぁっ!」 芙束の目から涙が零れてこめかみに消えていく。 救いを求めるように伸ばされた手をぎゅっと握り返す。 お互いの目を見詰め合って。 「好きだ・・・。」 産まれてから今日まで、何千回と告げてきた想いを、伝える。 芙束は微かに頷いて、瞬きした瞳から新しい涙をぽろりと零した。 「・・・結婚できなくっても、ずっとずっと・・・、一緒にいよう、ね・・・?」 掠れた声でひとこと、ひとことをそっと呟く唇に、触れるだけのキスをする。 「結婚なんてしなくたって、俺達その前から家族だろ。それに、芙束がイヤになって逃げたってどこまでだって追いかけてしつこく一緒にいてやるから、覚悟しとけ。」 ふふっと耳にカワイイ笑い声が届いたのを合図に、ゆっくりと腰を回した。 さんざん焦らしたのは、自業自得で。 自分の欲望もあっというまに絶頂の麓までかけ上がる。 激しい律動にぶれる視界の中、その左手の薬指で淡い光を放っている愛の証が、21世紀最初のクリスマスを二人で過ごした一生の想い出になるコトを願いながら、聖なる夜は恋人の中で過ぎて・・・・・ 体力も気力も残りが尽きるほど抱き合った。 日付はとっくに変わって、もう2、3時間ほどで空が白むような時間。 燃え尽きたキャンドルライトの代わりに、枕もとの小さなランプが柔らかく部屋を照らしている。 俺の肩に頭を乗せてうとうとまどろむ芙束は、さっきからぼんやりと目を開けては、俺の胸の上の自分の左手をうれしそうに見つめて微笑む。 「・・・・・僕、いっちゃんのお婿さん。」 「お嫁さんじゃないんだ?」 額にかかる柔らかいネコッ毛をかきあげてやりながら問うと、だってオトコだもん。とチラリと上目遣いに主張する。それからまた、左手に目線をうつしながら、 「そりゃぁ、えっちの時は、オンナの子みたいに・・・いっちゃんのアレ突っ込まれてアンアン言っちゃうけどさ?」 と元も子もないセリフを言うと、そこで芙束は布団に手を潜らせてなにやらごそごそ確認しはじめた。 そして続ける。 「いつも、この辺がどろどろの水みたいになって溶けちゃうんじゃないかと思うの。」 どうやら、繋がる部分の話をしているらしい。いっちゃんは、どう?と訊かれ、返答に困っていると。 突然むくっとカラダを起こして俺を見下ろしてきた。 「・・・・・・・・・・やっぱり、違うのかな。」 まじまじと見つめられて、いったい何が違うのだと首を傾げる俺に、芙束はトンでもない事を提案してきた。 「入れてあげようか?」 ・・・は? 真意が測れずぽかんと口を開けていると、芙束の指がもぞもぞと俺の股間を通りすぎ、その先の場所へいきなり触れてきた! 「オイっ何処触ってんだよっ・・・!?」 「おしり。」 「だから、そうじゃなくて!!」 「きっとね、僕のほうがいっちゃんよりも、すごく気持ちよくしてもらってると思うんだよね。だから、今度いっちゃんもしてあげようかなぁって。」 まさかのコトバにザァーっと頭から血が引く音が聞こえたような気がした・・・。 いや、確かに芙束もオトコだし・・・オトコなら突っ込みたいという願望があったっておかしくはないがだからと言ってそれが自分の身に降りかかるとなるとこれはいったいどう対処したらいいのか今の俺には頭で理解するのに多少の時間が(以下略) 石になっている俺に向かって、芙束は相変わらず的外れなコトを問いかけてくる。 「あー、僕じゃきっとヨクないとか、思ってるでしょー?・・・たしかに・・・、僕のっていっちゃんのみたくおっきくないし・・・太くないし・・・入れてもそんなに感じないかもしれないけど・・・」 言いながら、布団の中の自分のモノをちょっと切なそうに見つめてハァ、と小さな吐息を漏らす。 「・・・・・・・・入れて、みたいのか・・・?」 ようやくそれだけ搾り出すように声にすると・・・ 「別に。」 という答えが返ってきた。じゃぁなんで?訊くと、自分の感じてる気持ち良さを俺にも感じて欲しいのだと言う。 自分の願望ではなく、どうやら俺にイイと感じて欲しい、それだけの理由らしい。 そういうコトなら俺はコレ以上はない快感をもらっているから充分だと説明して、なしくずしに明かりを落としてあったかい体を胸に抱きしめた。 「・・・おやすみ・・・。」 必殺、会話打ちきりの術・・・。 「おやすみ、いっちゃん・・・。」 大人しく腕の中で目を閉じた芙束の髪に顔を寄せて、なぜか妙な早さで打つ動機をしずめようと努力した。 オトコとして、同じオトコにオンナのような扱いをされる事への肉体的、精神的なカベ。 あらためてそれを感じると、初めての夜でさえ懸命に俺を受け入れようと躊躇いなく体を開いてくれた芙束の気持ちが、いじらしくてたまらなくなった。 そして・・・ 胸に添えられた芙束の手に感じるペアリングの硬い感触。 コレを みるたびに、 「入れてあげようか?」 ・・・・・・芙束の声が甦るような気がして、なんだか微妙な心境で目を閉じたのだった。 |
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