「ソノヒトミニクルワサレル」

夜の公園。昼間の喧騒が消えただけで、そこは見慣れた風景とは異世界。街灯に照らされたベンチ。微風にかすかに揺れる無人のぶらんこ。少しペンキの剥げかかったすべり台。ジャングルジム。鉄棒。その他の遊戯道具。小さな公園だ。
俺も何年か前まではこの場所の主であったはずだが、高校生になった現在では懐かしさより余所者であるかのような居心地の悪さを感じて立っていた。それとも今が、夜であったからか、無人であったからか。
だが、俺の最愛の相棒はそんな違和感なんて覚えるはずもなく笑っていた。
「あっ、ぶらんこ。懐かしいなあ。」
などといいながら、公園へ入っていく。
「芙束、いくよ。遅くなる。」
そんな言葉は届いていないのか、届かなかったふりをしているのか。
「いつきー。何してんの、おいでよ」
芙束は、俺の違和感を吹き飛ばすように笑った。

ぶらんこ、すべり台、ジャングルジムをはさんでの追いかけっこ。結局公園定番フルコースで遊んでしまったあと、新設されたらしい、渇いた咽喉に親切な自動販売機で飲み物を買って休憩。
「いっちゃんて、やっぱりかけっこ速いよね。」
芙束の口調が昔に戻っている。気合を入れないといろいろな意味で捕まえていられないからな。という言葉は茶といっしょに飲み込んで別のことを口にする。
「芙束は、かくれんぼは上手かったっけな。見つかるのはいつも最後だった」
「うっそ、いっちゃんには、いっつもすぐ見つかっちゃってたけどなあ。」
それも、必死で、半端でなく必死で捜してたからだ。姿が見えないだけで不安になるのは昔も今も変わらない。とも言えないから、
「ふたばー、いくよー、って言うとすぐ出てきたじゃん。」
とごまかした。そうだったかな?と首をかしげながら芙束が歩き出すのについていく。
「しかし、こんなに小さかったっけ?すべり台とか。」
「いっちゃんは、身長伸びすぎー。小学校の頃は僕と同じか、僕のほうが高かったのに。」
膨れっ面さえ、かわいらしい。
「同じようなもん食べてるんだけどな。…ところで、芙束、何飲んでんの?」
「知らない。新製品だって。…いっちゃんは?」
「ウーロン茶。」
「…この選択の違いが身長に出るのかな?」
「そんなバカな。だっていつも交換してるじゃん。」
「じゃ、これも、飲んでみる?」
というわけで、いつものように交換した。
「どう?なんか、甘いんだけど、すっぱさもあるし、ちょっと苦くない?で、炭酸きつめだから、辛い気もするし。」
「それを、不味いっていうんじゃ…」
思いっきり飲んでしまった。だって、芙束は平気な顔して飲んでたから。…いつものことだけどさ。
「じゃ、口直し、しよっか。」
半分以上飲まれてしまったウーロン茶をさしだしながら言うので、このウーロン茶で口直しって意味かなと缶を受け取ったところで、頬を芙束の手に挟まれた。
勿論、こっちの口直しは大歓迎。
両手に缶をもったまま芙束の顔を見る。
閉じかけられた瞳にかかる長いまつげの影。
開きかけたくちびる。
薄暗い街灯のひかりがあまり届かないのに、寄せられる芙束の表情は俺を陶然とさせる。
芙束の舌が俺に触れたとき、俺も目を閉じた。
 耳に聞こえるのは、自分の鼓動と、芙束の息遣いのほかは、虫のすだく音。風に鳴る草のすれる音。ときおり遠くで響く車の音。そんなさまざまな音が、消えていく。
 何度かじらすように舐められてから相手のくちびるが合わせられた。お互いに相手の舌を絡めとろうと貪る。くちづけの角度が変わるたびに漏れる吐息が、情熱を煽る。混ざり合った唾液が飲み込みきれないで口角の端から流れていく。
 少し乱れた息のまま離れた芙束が、自分のくちびるを舐めながら言った。
「その缶、落とさないでよ。」
「…えっ?ちょ、ちょっと何、す、る。…あっ、やめ」
急に跪いた芙束がしようとしている行為がアレだったので、止めようとしたが、両手は、缶で塞がれている。
芙束の手と舌の愛撫と、下から見上げた瞳と妖艶と形容するしかない笑みとで、崩れそうだった理性が完全に溶けて消えた。

「たまには、いっちゃんを先にイカセテあげようかなって。」
イカサレテしまった俺の抗議に、照れた表情になった芙束が、ウーロン茶を飲みながら言う。
「この状態で、止められるかって!芙束。…欲しい。」
抱きしめた腕の中の芙束に荒い息のまま小声で口説く俺に、
「…ウナが、切れてたと思うんだよね、確か。」
と返してきた。
「…えっ?」
飛躍した話に戸惑う俺に続ける。
「液体ムヒは結構効くけど、キンカンってどうだろう?」
「…なんの話?」
「だから、ここですると、虫に刺されない?」
「……」
絶句。
「じゃあ、かえろっか。」
あのなあ。
「…かえって、続きしよ?」
…それは、賛成。賛成だけど。
ちょっと呆然としている俺に、歩き出した芙束が振り返って言った。瞳が笑っている。
「行くよー、樹。」
続きはカクゴしろよ、芙束。





28194(フタバ行くよ〜)HITを申告して下さったまる様が、リクエストと一緒にすってきな双子の一夜をプレゼントしてくださいましたv
ほんとにありがとうございます!!
本編ではまだもう少し・・・芙束には、樹をイカセテアゲルだけの甲斐性はないようで>笑
少し未来の二人のいちゃいちゃだと思って読みましたv
まる様には、おもシロキリバンの申告に加え、こんなプレゼントまでいただいちゃてほんとに感謝のヒトコトに尽きます。
感謝の気持ちを絵にこめて・・・vこれからも仲良くしてやってくださいませ!