とある町に、ほんの6坪しかない、小さな家があった。昭和の30年代を想像させるような、木造のその家には、ギコという、一匹のAAが住んでいた。

「ちーす」
その家に、誰かがあがってきた。右手に「スーパー丸栄」の袋を持っている。

玄関から、細く急な階段を避けて、その奥にある部屋へと入っていった。中にギコが居た。イヤホンをつけて、FM放送を聴いているようだ。窓のほうを向き、右ひじを枕に寝ているので、こちら側は見えない。

「ったく、昼間からグータラしてるのは、相変わらずだなぁ……」
呆れかえったようにそう呟くと、音量つまみをMAXに回した。

「うああああ!」
ギコは、反射的にイヤホンのコードを引きちぎってしまった。
「な、誰だゴルァ!!」
そう言って振り返ると、そこにいるのは、どうやら知った顔らしい。急にほっとしたのか、はたまたがっかりしたのか判らないようなため息をついて、言った。

「モララーか。お前が来ると毎度毎度疲れるな、ホントに」
「そうかい、それは光栄だな」
「いや、褒めてない……」
そこで二人は向き合って座った。

ギコは続ける。
「何か用事でも? モララー」
「うん、わかるか、俺がここに来るときは、大抵用事があるからな。しかし、この家もまったくかわらねえな」
「そうか?」
「ああ。相変わらずぼろいな」

「ハッハッハ、冗談だよ、冗談」
ギコはカチンときた様子をアピールして見せたが、モララーは軽く肩を竦めただけで、続けて言った。
「肝心の用事なんだがな、」
そこで一旦言葉を切り、前のめりになって、小声で言った。

「いい物を見つけたんだ」
「何のことだ?」
「まあ、見れば分かる。この桐の箱の中に入ってるよ。それと、これは差し入れ」

「お、コーヒーか。戴くよ」
ギコは相当のどが渇いていたらしく、ゴクゴクと飲んでいる。本題のことは気にかけていない様子だ。
モララーは一口飲んで、続けた。

「宝の地図かもしれないんだ」

「ブッ!」
ギコは思いっきりコーヒーを噴き出した。
「あああ! 大事な巻物が!!」
モララーが巻物を広げて出したところでギコが噴いた為、地図にコーヒーがこれでもかというくらいに付いてしまった。
「何してくれてるんだよ! 早く! ティッシュ!!」
「ゲホッ、すまん、……ンッ、今、出すから……」

ギコも気管にそれが入ったようで、激しく咳きこみながら、部屋の隅に放り投げてあったティッシュ箱を持ってきた。

「中身が無いじゃないか!」
「おぅ、すっ、すまねぇ……」
「『すまねぇ』じゃなくて! 早く替えを持ってきてよ! しみが出来ちゃうだろ!! あーっ! 早くッ!!」

ギコは慌てて押入れを探すが、余計に咳きこんでしまって、なかなか探せない。ようやく、新しいものを持ってきた。

「なんでトイレットペーパーなの!」
「ティッシュ切れてた」
「ハァ? ったくもう、これで拭くか。……でもせめてダブルにしろよな」
「それは貧乏人にとって死刑宣告だぜ?」
「どんだけ切り詰めてんだよ、お前の生活……」

モララーは急いでトイレットペーパーを解いて、ボロボロの巻物を必死に擦っていたが、拭き終わった後で、ハアッと、深いため息をついた。体全体から落胆のオーラが滲んでいる。

「どした? モララー」
「お前が……ギコが! コーヒーをぶっかけたせいで!! 肝心の地名がぼやけちゃったじゃないか!」
「それくらい覚えてないのかよ」
「昔の字なんてクニャクニャしてて解るかよ!」
「そ、そう言われればそうだけど……」
「もう、お前に相談持ちかけて損した。何とかしろよな!」
「んー……」

ギコは考えて言った。
「んじゃ、費用俺持ちで、って事で。どうせお宝手に入ったら、そんな出費痛くないだろ?」
「そうか、それなら良い。ま、お前もそこまでの気があるんだったら、連れてっても良いか」
「いやっほう! じゃ、早速出発しようぜっ」
「何故お前が仕切る」
「良いから良いから。ささ、早く行きましょ」

ギコはそう言って、モララーの体をグイと引っ張った。







「ところでさ、お宝の分け前はこっちが多めな」
「おいギコ、聞いてないぞ」
「今決めた」
「おい!」
「いいじゃん、費用出すんだし」
「何っ……」
「まあまあ。決定ね!」
「…………」


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