「誰だお前は!!」

 ギコはもう一度強く言った。その人物は、忍者風の格好をしている。黒が基調の衣服だ。

「表で話は良く聞かせてもらった。なかなか面白そうな話なので、ついていくことにした」
「えっ! 何それ! 滅茶苦茶強引じゃん!! ってか、早く名乗れよ!」
「そんなに教えてほしいか。……ならば教えて進ぜよう! 私の名前は激しく忍者だ!!」





 暫く黙りかえった後、ギコとモララーは堪えていた気持ちを我慢しきれなくなり……

「……はっ、激しく忍者? プッ……プハ、ハハハハハ! 何だよ、その名前!! 『激しく』だって!! 
 頭いかれちゃってる? ハーハッハッ……わ、笑いが止まんねえよ!」
「フッ、ファッハッハッハッ! ヒー、腹が痛え!」
 二人はその不思議なネーミングに思わず大爆笑した。

 シュッ

 一瞬、ギコとモララーの前を、金属のようなものが高速回転しながら飛んできた。「ひえっ」と二人とも
 奇声を発し、物の飛んでいった方向を向いた。
「うわっ! 手裏剣だ!!」
「か、壁に刺さってる……あそこは漆喰の壁だぞ!」

「フッフッフ、どうだ! 私にはむかえばこの手裏剣が牙をむくぜ。さあ、お前らの持っている秘宝の地図
 をよこせ!」
「どういう事だ?」
 モララーは疑っている。
「フン、お前らはどうやらあの地図が何か知らないみたいだな」
「一体なんなんだ、説明しろ!」
「モララーとかいったな。お前の家にその地図があると知ってから、お前の家にある蔵を中心にこっそり張
 り込んでいたんだ。お前の家はムダにデカイからな」
「『ムダに』だと!? テメェ、もう一度言ってみろ!」
「落ち着け! モララー!」
 ギコはモララーの脇を掴み、怒りを静めた。

 忍者は続ける。
「で、とうとうお前が蔵の掃除を始めた。そして見つけたんだ、“アレ”を、お前が。そして、わからない
 ようにずっと尾行していたのさ。しかし、あの“デカ耳野郎”の言ってることは嘘だぜ。確かにあの山と
 この地図は似ている。だが、実際は東にずっといったところにある、『旧サコタ村』という廃村跡の地図
 だ。あそこには昔大富豪が居て、時代の波に埋もれ、消息を絶った、dat落ちした良スレのログが入ってい
 る、幻の壷を、手に入れたのだ。だがそいつは哀れなことに、それを隠し、地図を書き残したところで持
 病に襲われ逝っちまったのさ。後継ぎの居ない彼の家は没収、持ってた土地も皆売り払われ、いろいろと
 あって村そのものが消えてしまった、って訳さ」

 ギコは、モララーを一旦床に座らせ、自分も座った後、言った。
「村が無くなった理由は?」

 忍者も、玄関の戸を閉めて、入り口にある、段になったところに座った。日本の家なら大抵どこにでもあ
 る場所で、玄関と家の中の境目に当たり、そこに座って靴を履いたりしているはずだ。忍者は、二人に背
 を向け、玄関の戸のほうを向いて、話し出した。

「村が無くなった理由か。それにも、大富豪が関わってくるんだ。大富豪は、非常に警戒心が強くて、いつ
 もどこから何が出てくるかわからないと言って、ずっとボディーガードを付けている程だったんだ。で、
 自分の資産も、銀行は信じられないと言い、持っていた広大な土地のあちこちに、現金にして埋めていっ
 たのさ。勿論、それらの巻物も、忘れないように作ってあったのだ。だが病床に就いたとき、自分の資産
 を後から乗っ取るヤツがいるんじゃないかっていう事を言い出し、巻物を燃やしちまった。でも、運良く
 この壷の巻物だけ、焼け残った。この巻物のせいで、村が滅亡したと言っても過言じゃ無いな」
「この巻物が、村を潰したのか?」
 ギコはまだ相手に警戒心を抱いているという事をアピールしながら言った。

「ああ、そうさ」

 忍者はその気配を感じ取ってか、優しい口調で、しかし低い声で、静かに言った。

 忍者は続ける。
「『彼の死後、土地は売り払われた』と言ったよな。そして、この巻物も流出。土地を買った者は、宝の噂
 を聞いて、我先にと宝の発掘を始めた。だが、大富豪の土地を安く手に入れられると聞いて、集まったの
 は全国から来た輩達。もう治安はメチャメチャさ。元からその土地は大富豪の先祖代々の土地で、村の住
 民たちはその土地を借りて家を建て、田畑を耕していたもんだから、ここにも宝があるんじゃないかと、
 強引な連中は田畑を荒らし始めた。で、村民と、開拓者との間で対立は激化。もうここには住めないと、
 諦めて引っ越す村民も少なくなかった。元から数百人の小さな村だったから、開拓者の無茶苦茶なやり方
 で、村は一気に廃れて行ったのさ。勿論、欲深い奴らだから、開拓者同士の争いも発展。互いに首を絞め
 あった結果、もう村はメチャメチャになって、大富豪の土地もドンドン荒れて行った。変な話だが、本当
 なんだ。で、結局全ての人が、諦めてクニに帰っていったのさ。噂によると、分割して埋められたのは百
 箇所ぐらい。そのうち、二十箇所が見つかった。ほとんどは、何年も探しても見当たらなかった、ってワ
 ケさ。この壷もな」

「ちなみに、何ヘクタールも土地があるって噂だぜ。で、お前らのところまで巻物が流れてきてるというの
 を突き止めるのに時間がかかりすぎちまったな。俺はお前らと協力する気は無い。さあ、早く巻物をよこ
 せ!」
「ナニッ! 渡すものか! なあ、モララー!!」
「ああ!! ここまで良い話聞かされて、諦める気になるかよ!!」

「フフフ、面白い!! かかってくるか!」
「当たり前だ!」

「勝負だ! 忍者! 巻物は渡さんっ!!」



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