ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

防衛大学の志願者がすっかりなくなる方向へ働きかけたい

1958年6月25日――作家 大江健三郎


 1994年にノーベル文学賞を受賞した大江健三郎氏は、天皇制や皇室を批判し、親北朝鮮的な発言で文壇の中でも左派的な言動で知られる(文壇自体が左派だったと言われればそれまでだが。)。

 表記の発言は、1958年(昭和33年)6月15日、毎日新聞夕刊に掲載されたコラム「女優と防衛大生」で出てきた発言。大江氏は当時23歳、デビュー2年目で、芥川賞を受賞した直後だった。コラムでは、「ここで十分に政治的な立場を意識してこれをいうのだが、ぼくは、防衛大学校生をぼくらの世代の若い日本人の弱み、一つの恥辱だと思っている。そして、ぼくは、防衛大学の志願者がすっかりなくなる方向へ働きかけたいと考えている」と書いた。

 自衛隊に対して憲法などとの兼ね合いや、その性質から、批判的な考えも含めて様々な意見があるのは当然だろうと思う。日本国の防衛政策も防衛省・自衛隊も、多くの問題を抱えている。しかし、個人攻撃や人格否定は許されてはいけないと思う。言論という武器を持つ人間が、自衛隊という組織ではなく、防衛大学生という個人を恥辱と言い放つその姿勢は、納得できない。しかしながら長らく戦後民主主義におけるマスコミや言論は、どこか自衛官という存在を、道を誤った人間、間違ったことをしている人間として捉えてきた・描いてきた側面はあったように思う。

 時代は変わり、自衛隊という組織は多くの国民に許容される存在になった。防衛大学出身者も規律を重んじ厳しい訓練をつんできた存在として、一般企業でも評価されている。それは、戦後、様々なクライシスを通じて個人としての自衛官の献身的な姿が国民の目に触れることが増えたからだろう。防衛大志願者はなくなるどころか、難関大学並みの高い倍率で推移している。

自衛隊・安全保障をめぐる言葉