ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

怪獣と巨大ロボットの共闘

ジェットジャガー――1973年『ゴジラ対メガロ』より


 1973年3月に劇場公開された『ゴジラ対メガロ』。観客動員数でも98万人と振るわなかったが、その評価はゴジラファンの間でもゴジラ映画史上ワーストの呼び声高い作品である。製作された時期には怪獣ブームは過ぎており、テレビの前の子供たちの人気は『ウルトラマン』(1966年7月放送開始)や『仮面ライダー』(1971年4月放送開始)に代表される変身ヒーロー物や、『マジンガーZ』(1972年12月放送開始)に代表される巨大ロボット物へと移っていた。そんな中で製作されたためか『ゴジラ対メガロ』では、ゴジラは人間の味方という立ち位置で製作された。『ゴジラ対ヘドラ』以降その傾向は顕著だったが、この頃のゴジラはゴジラの皮を被ったウルトラマンとなっていた。その結果、核実験の被害者であったゴジラが、核実験の被害者であるシートピア海底王国の守り神たるメガロと戦うという皮肉な展開となった。

 不人気理由はいくつもあるだろうが、低予算と製作期間の短さから戦闘シーンなど過去のフィルムからの流用に頼らざるを得ず、途中でゴジラの顔が変わってしまう場面があったり、街中だったはずが森のシーンに変わってしまったりといった粗さが目立つ作品となった。撮影期間も3週間ほどだったらしく、正直言って全体的に漂うやっつけ仕事名感じは否めないと思う。ストーリーもかつて地上で栄え、300万年前に海中に没しながらも地底の空洞で生きながらえてきた民族というシートピア海底王国が、地上人の核実験で大きな損害を受けたため報復としてメガロを送り込んでくるという深遠な背景を持ちながら、実際に始まってみると子供向けを狙いすぎてはっちゃけすぎというべきか娯楽性を求めすぎたというべきか、結果、ツッコミどころ満載の中身のない展開になっていると感じた。反核のメタファとして生まれ、社会の矛盾と戦う存在となることを宿命付けられたゴジラと、あくまでも娯楽作品として怪獣同士のプロレスの主人公であったゴジラ。この時期の作品ではゴジラの迷走が顕著になっているような気がする。

 そして、この『ゴジラ対メガロ』を『ゴジラ対メガロ』たらしめているのが、青年科学者・伊吹吾郎が製作した人型ロボット、ジェットジャガーの存在である。身長1.8m、体重150kgの人間とほぼ同じサイズで、遠隔操作タイプである。ただし、良心回路が備わっていて、人間に会ったらお辞儀をしたりといった簡単な動作を自分で判断して行う。ストーリーが進むと、ほとんど説明もないまま自我を持ち、さらに身長50mに巨大化するという驚きの展開を見せる。1966年7月から翌年4月まで放送された『ウルトラマン』は大好評を博し、シリーズ化もされており、円谷プロダクションや東宝映画にとっては、脈絡もない巨大化は驚くにも値しないのかもしれないが、ゴジラでこれをやるかとこの演出は、当時の観客も絶句したという。翌年の『ゴジラ対メカゴジラ』でも、メカゴジラという巨大ロボットが登場した。多彩な武器を駆使してゴジラと戦うメカゴジラは大人気となり、『ゴジラ対メガロ』の倍近い観客動員を記録した。ゴジラのファンも決して巨大ロボットを否定していたわけではなく、ゴジラシリーズとウルトラシリーズでは求めるものが違っていたということのなのだろう。

ゴジラとゴジラの敵たちの時代