ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

私は人民解放軍の野戦軍司令官

2009年12月10日――小沢一郎 民主党幹事長


 2009年12月10日。9月11日の衆議院議員選挙で民主党の歴史的圧勝によって、戦後初めて選挙による政権交代が実現し日本の政権与党が自民党から民主党に代わってから3か月。小沢一郎民主党(現民進党)幹事長を名誉団長とする民主党所属の国会議員143名を含む、計631名にもなる大訪中団が海を渡った。これは、民主党と中国共産党の定期協議も兼ねたものだった。

 この訪中では、小沢一郎 民主党幹事長は10日午後、中国共産党の胡錦濤 国家主席と会談。日中関係の強化と民主党と中国共産党の政党間交流の促進を図ることで一致したという。

 この会談の後で記者会見をした小沢 幹事長は、その中で翌年7月の参議院議員選挙に触れ、「こちらの国に例えれば解放の戦いはまだ済んでいない。来年7月に最終の決戦がある。人民解放軍でいえば、野戦の軍司令官として頑張っていると伝えた」などと語ったと報じられた。

 まがりなりにも一国の政権与党の幹事長が、人民解放軍の最高指導者に対し、自らをその配下である軍司令官などと言おうとは。また中国共産党が、1949年のチベット侵略を平和的な解放と呼び、真贋は不明ながら日本解放第二期工作要綱のような対日工作が記されているという怪文書もあり、中国の最高指導者に伝える言葉として“日本解放の戦い”などという言葉を使ったことを、中国共産党はどのようなメッセージとして受け取ったか。あるいは日本国の防衛にあたり、中国の脅威から日本を守り続けている自衛官たちに、どのような印象を与えたか。

 この訪中団では、胡錦濤 国家主席と参加した全ての国会議員が一人ずつ記念撮影を行った。中国の国家主席と満面の笑みを浮かべて写真に写るその姿は「まるで高校生の修学旅行のよう」「朝貢団か」と揶揄された。それをまるで中国の“皇帝”に拝謁する冊封国の臣下のようと見たものも多かっただろう。これ以前にも、以後にも、自民党の親中派代議士が大訪中団を率いて海を渡ったことはあったが、小沢訪中団は、自身を日本の最高実力者であることを誇示するかの如き行動と受け取られ、民主党政権の反米媚中の姿勢を内外に知らしめる形となった。

 小沢 幹事長が日本解放の最終決戦と語ったという2010年7月の第22回参議院議員通常選挙では、鳩山内閣の失政、民主党政権でも発覚した様々な政治と金を巡る問題、小沢 幹事長への権力の集中に対して問題視されるなど、内閣支持率は発足当初の70%から大きく下げることになった結果、参議院議員選挙の34日前に鳩山 内閣総理大臣、小沢 幹事長が辞意を表明。急きょ発足した管 内閣がご祝儀的な高い支持率で選挙戦に突入したが、国民の審判は厳しいものとなり、民主党は党勢を後退させ、自民党が議席を伸ばした、結果、衆参で第一党が異なるという、ねじれ国会となり、民主党は難しい国会運営を迫られることとなった。

自衛隊・安全保障をめぐる言葉