ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

観客席の旭日旗を見て涙が出た

2011年1月26日――奇誠庸 サッカー韓国代表


 太陽を模した、日章と旭光を意匠化した旭日は、古来よりいくつもの種類が存在し、日本では縁起物として多用されてきた。旭日旗は旧軍で軍旗として使用され、戦後も自衛隊旗として使用されている。また、民間においても広く使用され漁船の大漁旗や朝日新聞社の社旗などが有名である。

 しかし、旭日旗はナチスのハーケンクロイツと同じ、戦犯旗だと主張している国がある。韓国である。この主張は、ある時を境に一気に韓国社会に広がったとされる。それが2011年1月25日に行われたサッカーのAFCアジアカップ2011の日本対韓国の一戦であった。韓国代表の奇誠庸(キ・ソンヨン)選手がPKによる先制点を挙げた際、猿を模したパフォーマンスを行った。韓国社会では、日本人を侮辱する際に猿を多用する。国際試合の最中に行われた行動に、波紋は広がった。

 試合直後のインタビューで奇選手は「事前に準備していた」と韓国メディアに語っていたが、翌日、twitterで「観客席の旭日旗を見て涙がでました。私も選手である前に大韓民国国民です」と、旭日旗に対する憤りが、その行動の理由であると主張を一変させた。なお、この試合を取材していた産経新聞の記者は、目立つような旭日旗はなかったと伝えている。

 その後、韓国サッカー協会(KFA)の聴取が行われ、そこでは「あのパフォーマンスは日本人に対してのものではない」「(所属する)セルティックで韓国人ということで猿呼ばわりされている。そういう差別主義者に向けて行った」と再び主張を翻した。KFAも「結果的に日本の皆さんに誤解を与え申し訳ない」と謝罪した。

 しかし、旭日旗の件がtwitterで流れた後の韓国社会では奇選手の行動を称賛する声であふれ、世論は旭日旗を糾弾する方向に流れた。旭日に似たデザインを身に着けたアイドルやタレントが謝罪に追い込まれたり、旭日に似たデザインを用いた企業に多数の抗議が寄せられるなど、問題はスポーツの応援や選手のマナーの問題を超えて広がり続けている。

 この問題は、日韓の安全保障関係にまで波及しつつある。2016年5月25日から6月3日に海上自衛隊、アメリカ海軍、韓国海軍などで行われた共同訓練において、済州島で行う予定だった閉幕式が、突然別の場所に変更されるという一幕があった。海上自衛隊の隊旗に対する韓国メディアと世論の反発に、韓国政府が配慮した結果だったとされる。

自衛隊・安全保障をめぐる言葉