ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

我が軍

2016年3月20日――安倍晋三 内閣総理大臣


 2016年3月20日の参院予算委員会で、維新の党の真山勇一議員が日米豪印の四カ国による「ダイヤモンド構想」や各国との共同訓練について法的根拠を質問した。その際、安倍晋三 内閣総理大臣(2016年4月現在現職)は、「我が軍の透明性を上げていく、ということにおいては、大きな成果を上げているんだろうと思います」と語った。

 戦後の歴代内閣は、自衛隊は憲法が規定している戦力ではない、という建前から、自衛隊を軍隊と呼称することをなるべく避けてきた。2006年の第一次安倍政権下でも、自衛隊は「通常の観念で考えられる軍隊とは異なる」とし、憲法9条第2項項で保持することが禁止されている「陸海空軍その他の戦力」には当たらない、とする答弁書を出している。(軍隊、戦力等の定義に関する質問に対する答弁書 平成18年12月1日

 しかしながら、日本は軍人の捕虜の扱いを定めたジュネーブ条約に加盟している。政府は平成14年の政府答弁書で「通常の観念で考えられる軍隊とは異なるものであって、憲法第九条第二項で保持することが禁止されている「陸海空軍その他の戦力」には当たらないと考えているが、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし自衛権行使の要件が満たされる場合には武力を行使して我が国を防衛する組織であることから、一般にはジュネーヴ諸条約上の軍隊に該当すると解される」という見解(http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/155/touh/t155002.htm)を出している通り対外的には“軍隊”であるとするのが自然である。

 野党がこの「我が軍」発言を問題視したのは4日も経った3月24日のことだった。民主党の細野豪志政調会長は24日の記者会見で「憲法の枠組みの中で積み上げた議論を全部ひっくり返すような話だ」と批判し、同じく民主党の枝野幸夫幹事長も25日の記者会見で「憲法に陸海空軍その他の戦力を持たないと明記されている。説明がつかない」と批判した。これに対して、菅義偉官房長官は25日午後の記者会見で「まったく問題ではない。外国の軍隊との共同訓練の質問があり、その流れの中で言った。すぐに「自衛隊」とも言っている」「自国の防衛を主たる任務とする組織を軍隊と呼ぶのであれば、自衛隊も軍隊のひとつだ。自衛隊は一般的に国際法上は軍隊に該当する」と説明し、野党の批判に反論した。

 27日の参院予算委員会で、安倍総理は「共同訓練に関する質疑の流れの中で答えた。相手国である他国軍との対比をイメージして自衛隊を“我が軍”と述べた。それ以上でもそれ以下でもない。自衛隊は私の軍隊とは違う」と答えると同時に、平成23年10月25日の衆院安全保障委員会で、民主党政権の一川保夫防衛大臣の「外国から攻められれば戦うという姿勢だから軍隊という位置付けでも良い」と答弁していたことにも言及した。

 30日の予算委員会で安倍総理は、民主党の後藤祐一氏の質問に対して改めてこの発言についての釈明を行い、維新の党の井坂信彦氏に対しては、「こうした答弁により大切な予算委員会の時間がこんなに使われるならば、いちいちそういう言葉は使わない」として、幕引きを図った。

自衛隊・安全保障をめぐる言葉