ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

鉄15tは15万円

2019年3月2日――川内博史 衆議院議員


 ベル・ヘリコプターとボーイング・バートル(現ボーイング・ロータークラフト・システムズ)が共同開発したV-22――通称オスプレイは、回転翼機と固定翼機の特性を切り替えできる軍用機である。ヘリコプターよりも飛行速度と航続距離に優れ、固定翼機には不可能なホバリングや垂直離着陸が可能になった。

 オスプレイは1980年代から研究開発が始まっていたが、新機軸の軍用機であったため開発は難航し、開発段階や量産の初期段階では事故も多発した。事故の原因は技術的な問題もあったが、パイロットにとって複雑な操作系統を持つためのミスや、特殊作戦に運用される運用が困難な場面で使用される機種であるという面もあった。一部では、未亡人製造機などという呼ばれ方までされたが、安全策が講じられ、本格的な配備がなされてきてからは、運用期間が短いという点を留意する必要があるがヘリコプターよりも事故率は低いとされている。

 自衛隊でも災害派遣や輸送業務や離島防衛などへの対応のためにオスプレイの導入が決まり、合計17機が購入され、陸上自衛隊へ配備されることになった。しかし、安全性への懸念から反対運動も根強く展開されている。

 表題の言葉は2019年3月2日に東京都内で開かれたイベント「ガーベラ革命で共生社会を実現しよう」で講演した立憲民主党の川内博史衆議院議員の発言。

 報道によるとこの講演の中で川内議員は、

「オスプレイって重さ15トンなんですけど鉄1トンはオーストラリアで買うと1万円です。
 それが15トンですからホントは15万円ですよ。
 いろいろ加工して、人手がかかっているから、いくらかは付加価値がつくかもしれないけど、15トンの鉄の塊は15万円なんです。だいたい。それがなんで200億にもなるの? と。どこがどうなったら200億になるんですかと、全部皆さんに請求書が回るんです」

 と発言したという。この発言は、まとめサイトなどで拡散され、「経済をわかっていない者が議員をやっているのか」と指摘されることになった。川内議員は3月11日にTwitterで、

「私のオスプレイ発言が話題になっていますが、鉄の塊15トン15万円が、なぜ200億円になるのか?経済的には、それを付加価値と呼ぶ訳ですが、その付加価値なるものの中味を詳細に分析する必要があるのでは、という問題提起です。なぜなら、国民の皆さんの税金で買う物だからです」

 と釈明した。とはいえ、「オーストラリアでは鉄1t1万円で買える」というのは鉄鉱石の値段を指しているものと思うが、製鉄にかかる費用を始め、研究開発費やら加工・組立にかかる費用やら、輸送費やら、もちろんその中に含まれる諸々の人件費やら、あまりにもすっ飛ばしすぎて、果たして問題提起になったのだろうかと首をひねる。

 そもそも、現代航空機の素材の多くは複合素材である。価格が適正か否かを問うのであれば、オスプレイの構造を理解し、その性能を詳細に分析したうえで行われなければならないだろう。それを鉄の塊という認識しか持っていないと思われては、説得力を失ってしまう。嫌味とか皮肉というのは、うまく使わないと、自分が馬鹿だと思われる諸刃の剣なのだと改めて思わされる発言である。

 ところで、オスプレイ1機が200億というのも、疑問符が付く。2015年5月5日にアメリカ国防安全保障協力局(DSCA)がオスプレイ17機を30億ドル(当時のレートで約3600億円)で売却すると米議会に通知した。それを受けて、30億ドルを17機で割った約1.76億ドル(約211億円)という値段は、大きな衝撃をもって世間に広まった。ところが、この30億ドルの中には、予備部品として「外線前方監視装置40基、ミサイル警報システム40基」、さらにアメリカでの訓練費用も含まれている。

 問題提起は大いになされるべきだと思うし、議論は活発に行われるべきだと思う。しかし、前提条件を誤ったまま、結論ありきの問題提起や議論に意味があるとは思えない。

自衛隊・安全保障をめぐる言葉