ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

BEST GUY(1990年)

DATE

1990年劇場公開

監督:村川透  脚本: 高田純  村川透

キャスト  梶谷英男:織田裕二  深雪:財前直見  吉永:古尾谷雅人  名高:長森雅人  屋敷:黒沢年男


内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊

【解説・感想】

 日本版『トップガン』を目指して製作された自衛隊が撮影協力の下に制作されたスカイアクション。日本版トップガンというだけあって、悪い意味でトップガンとの共通項は多い。航空自衛隊千歳基地を舞台に、F-15イーグルパイロットの最高の栄誉とされるBEST GUYの称号を目指して競い合うパイロットの姿を描いている。

 自衛隊提供の空撮映像と特撮を組み合わせた特撮映画でもあったが、空撮映像があまりに素晴らしく、特撮部分との乖離がひどすぎたため、そればかりが印象に残っている。ドラマの部分は、トレンディドラマのようなノリに感じるものの、そんなに悪くなかったように思う。良くも悪くも、自衛隊の現実に関しても描けているのではないだろうか。

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【ストーリー】

 BEST GUYとは、人格・技量など全ての面において優れている、飛行隊の模範となるパイロットに与えられる最高の称号である。航空自衛隊千歳基地・第2航空団に属している第201飛行隊では、3年前にBEST GUYの選出を行うことができず、強化訓練を通じて再びBEST GUYの選出を目指そうという雰囲気ができていた。そこに第5航空団から梶谷という男が転任してくる。梶谷は幹部候補学校の劣等生ながら、イーグルパイロットとして抜群の腕を持つ男。しかし、その性格は奔放で、何度も飛行資格を取り消されかけたことがあった。

 着任早々、指定の時間に遅れた梶谷だったが、飛行隊班長の吉永に会うなり衝突する。実は、梶谷と吉永の間には、梶谷の兄を巡る確執があった。F-4ファントムの優秀なパイロットだった梶谷の兄は、飛行中の事故で死亡していた。その時、ファントムの後席にいて、1人生き残ったのが吉永だった。そのため、梶谷は吉永に一方的な敵意を持ち続けていた。

 着任直後から高い技術を見せつける梶谷だったが、周りは梶谷の勝手な行動に振り回される。ところが3週間の特別強化訓練が始まり、防衛大学出身のエリート名高へのライバル心が、あわやの大惨事を引き起こしかける。名高にも、仲間からも怒りを買ってしまった梶谷は、自分の中のやり場のない感情を、時を同じくして人気歌手のプロモーションビデオの撮影に来ていた深雪に、空間失調症(バーティゴ)にたとえて聞かせる。バーティゴとは、感覚を見失い地上と空との区別がつかなくなりパニックに陥ることだった。

 そんなある日、基地にスクランブルの警報が鳴り響く。ソ連の偵察機が日本の領空を侵犯。待機任務にあった梶谷と名高が空域に向かう。編隊長の名高が警告を行うが、その直後に最新鋭戦闘機スホーイ27が現れ、名高のF-15がロックオンされる。あからさまな挑発行動と自衛隊の領空侵犯対応への制約上、不利な中での対応となるが、2人は互いにサポートを続け、この任務を完遂する。生死のかかった任務をともにくぐりぬけたことで2人は互いの腕をわだかまりなく認め合った。ところがその帰途で、梶谷がバーティゴに陥った。パニック状態の梶谷は、後先考えずに機体を捨てて脱出する。

 幸いにも機体は海上に墜落し、梶谷も無事だったが、万が一機体が市街地に墜落していたら――。自信を喪失した梶谷は、吉永に自分は最低のパイロットだと吐き捨てる。吉永は、これまで秘密にしていた。梶谷の兄の死に関する事故のすべてを語る。吉永は梶谷の尊敬する兄の真実を語らず、あえて梶谷の憎しみを受け止め続けていた。しかし、梶谷が兄の幻影から放たれ、兄を超えるためには、今ここで真実を知らさなければならないと感じたのだ。梶谷が知った兄の最期――。

 全ての意欲を失い抜け殻のようになった梶谷は深雪を訪ねて東京へと向かう。深雪の仕事はスポンサーの撤退で頓挫しており、彼女もまた苦しんでいた。二人は言い争い、梶谷は最後に言葉少なく深雪を励まし、彼女の部屋を後にした。しかし、この時梶谷は今自分が成すべきことをはっきりと捉えていた。そして訓練最終日。BEST GUYをかけて、名高と梶谷の最終決戦が始まった。「おれはBEST GUYになると決めた」 名高に告げる梶谷。ライバルの復活に笑顔で応じる名高。自分の仕事を最後まで見届けるために機材を抱えて深雪も見守っている。最高のイーグルパイロットかけた2人の戦いが始まった。

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【映画の中の自衛隊】

 先にも書いているが自衛隊提供の空撮映像は本当に素晴らしい。しかし、特撮部分がイマイチであまりに落差が大きすぎる。これが一番目について仕方なかった。

 海に囲まれた日本は海上・航空の防衛はまさに生命線である。特に、領空侵犯に対しては細かくマニュアルが定められている。しかし、自衛隊が撃墜を行うのは領空侵犯機を確認し、警告を行い、威嚇射撃を行い、それでもなお相手がこちらに従わなかった場合になる。それでもなお、撃墜には多大な制約がある。領空侵犯に対し二機で編隊を組むのは、一機が撃墜されれば正当防衛で相手を撃墜できるからだと自嘲気味に語る航空自衛官もいるという。自衛官は、たとえ自分たちに危害が加えられようとも、自分たちから戦争を引き起こすような行動は絶対にしないのだ。

 ところで、映画の中で梶谷は自分のことを“国家公務員”と呼称している。確かに、自衛官は特別職の国家公務員ではあるが……。軍人ではない、自衛官という、あいまいな存在。それを自嘲気味に表現しているように思える。

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