ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

ゴジラVSモスラ(1992年)

DATE

1992年劇場公開

監督:大河原孝夫(本編)  川北紘一(特撮)  脚本:大森一樹  音楽:伊福部昭

キャスト  藤戸拓也:別所哲也  手塚雅子:小林聡美  安藤健二(丸友商事社員):村田雄浩  手塚みどり:米澤史織  三枝未希:小高恵美

配給収入22.2億円 観客動員420万人

内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊



【解説・感想】

 1992年12月に公開されたゴジラシリーズ通算19作目。平成VSシリーズで最大の観客動員を誇る一作。かくいう管理人もこの映画がゴジラシリーズの中では一番好きだったりする。……平成ゴジラシリーズは駄作ぞろいだと思っていらっしゃる方は、どうか、この『ゴジラVSモスラ』を初めて見た当時の管理人が小学校の高学年程度だったことを加味していただきたい。大スクリーンで見たゴジラの迫力。キャッチフレーズの「極彩色の大決戦」のテーマ通りの煌びやかなモスラの姿に、環境問題というテーマや、モスラの歌などボーカルを多用した素晴らしい音楽、モスラとライバルのバトラとの和解。環境問題がテーマということもあって、大新聞が好感度高めの宣伝をしてくれたこともあって、公開前から楽しみにしていたのだ。大人になってから見たら、印象は確かに変わるが、あの時にわくわくしながら見に行った、そして、不覚にも感動してしまった(ゴジラ映画で!)……よくいえば純粋、悪く言えば単純だった、あの感覚まで否定したくはない。

 モスラという人気怪獣の登場で、今にしてみれば、良くも悪くも観客に媚びた映画だったなという気がする。マスコミ受けするように環境問題というテーマを選び、旧作を知っている大人のファンのためにモスラや小美人の設定に大きな手は加えずに、母親層受けするように別れながらもいまだ未練のある元夫婦とその娘を人間ドラマの中核に持ってきたり。その結果としての大ヒットであり、そういう意味では成功だったのだろう。

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【ストーリー】

 太平洋の小笠原沖に巨大隕石が落下。海底で眠りについていたゴジラが復活した。南洋でも巨大な嵐が発生し、被害を受けたフィリピン近海のインファント島で巨大な物体が現れたことが衛星写真から判明する。明らかに、地球のバランスが崩れ始めていた。

 そのころ、タイで遺跡破壊と窃盗の罪で逮捕されていたトレジャーハンターの藤戸拓也は国家環境計画局から、無罪放免と引き換えにインファント島での調査を命じられる。元妻の手塚雅子、インファント島の開発を進める丸友商事の安藤と共に、インファント島で巨大なモスラの卵と2人のコスモス(小美人)と名乗る手のひらに乗るほどのサイズの女性と出会う。彼女らはバトラの復活を警告する。丸友商事社長の友兼の指示で日本にモスラの卵は護送されることになった。コスモスもまたモスラの卵とともに、バトラの脅威を警告するために日本向かおうとする。

 しかし、すでにバトラは復活。日本に甚大な被害を及ぼしていた。そして、モスラの卵を運ぶ輸送船は、海上でゴジラと遭遇する。モスラの卵が割れ、モスラの幼虫が卵から出てくるものの、生まれたばかりのモスラの幼虫に勝ち目はない。しかし、そこにバトラも出現。ゴジラと戦闘の間にモスラはどこへともいなくなり、ゴジラとバトラは海底で戦い、海底火山の噴火に巻き込まれた。

 友兼からの命令を遂行できなくなった安藤は、その代わりとしてコスモスを誘拐して友兼のもとに連れていく。会社のPRにはこの上ないと思い喜ぶ友兼だが、しばらくしてコスモスがいなくなってしまう。コソ泥も同然のトレジャーハンターに嫌気がさした藤沢が、コスモスを誘拐し、売り払った金で再出発をしようと外国企業に売り込みをかけていたのだ。しかし、この時、事態は最悪の方向に向かっていた。コスモスを追ってモスラが日本に向かっていたのだ。海上・航空自衛隊の応戦をものともしないモスラは、ついに日本に上陸する。雅子は、娘のみどりや、国家環境計画局に出向していた超能力少女の三枝未来とともに、藤沢の潜伏先を発見する。しかし、このとき、すでにモスラは目前に迫っていた。コスモスの奪還に成功したことでモスラは引き上げようとするが、陸上自衛隊はモスラに攻撃を開始する。傷ついたモスラは、国会議事堂へ向かう。コスモスは、モスラが幼虫の時を終え、成虫に成ろうとしているのだという。

 国会議事堂に貼られた繭の中から、モスラの成虫が出現。そのころ、富士山が噴火を起こし、海底火山から1500度のマントルをくぐりぬけてゴジラが出現。モスラは、同じく成虫になったバトラと決着をつけるべく横浜へと飛来する。モスラとバトラの激しい攻防の中、自衛隊の抵抗をものともせずに、ゴジラが横浜に到着する。地球の運命を懸けた三つ巴の戦いが、今始まった。

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【映画の中の自衛隊】

 ゴジラの敵は、モスラ・バトラであり、なかなか自衛隊の活躍の場面は出てこないが、現実の、あるいは架空の兵器が次々に投入され、自衛隊の車両や兵器が登場する場面がかなり多い。ひょっとしたら登場車両の量だけをみればゴジラ映画史上でもトップクラスではあるまいか。といっても、1989年の『ゴジラVSビオランテ』のように戦略的な優位性を保ちながらゴジラ(あるいはモスラ・バトラを)圧倒するというところまではいっていない。悪い言い方をすれば行き当たりばったりで、具体的な用兵、戦術というのは見えてこない感じがする。とはいえ、実際に怪獣が出現し、警告しようが何をしようが盲目的に突っ込んでくる場合、どうしようもない、というのも事実かもしれない。

 この映画では、メ―サー光線搭載の攻撃ヘリが登場してくる。そういう武器が開発されたなら、機動性が高く小回りが利く攻撃ヘリに搭載したいと思うのは当然だろうが、見た感じ、小回りや機動性を犠牲にした形状になった気がするのだが……。それにしても、1500度のマントルを泳いで渡るような奴相手に、どんな攻撃も何の意味があるのだろう。自衛隊はそれでも戦わなければならないのだ……。

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