ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

ゴジラVSビオランテ(1989年)

DATE

1989年劇場公開

監督:大森一樹(本編)  川北紘一(特撮)   脚本:大森一樹  音楽:すぎやまこういち

キャスト  桐島一人:三田村邦彦  大河内明日香:田中好子  三枝未希:小高恵美  権藤吾郎:峰岸徹  黒木翔:高嶋政伸  白神源壱郎博士:高橋幸治

観客動員数:200万人  配給収入10.4億円

内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊


【解説・感想】

  前作1984年公開の『ゴジラ』から5年。原案を一般公募で募集するなど、ゴジラに新しい息吹を吹き込もうとした意欲作であり、他のゴジラ映画と比べても、やや印象の異なる映画になっている。このサイトのタイトルである『ゴジラVS自衛隊』というテーマに対して、もっともふさわしい映画であり、ストーリーも、怪獣対怪獣の要素よりゴジラ対自衛隊の要素に力点を置いている。

 平成VSシリーズの第一弾であり、この後のシリーズで重要な役どころとなる小高恵さんが演じる超能力少女・三枝未来の登場第一弾でもある。

 核物質を食べるバクテリアから作られた対ゴジラ最終兵器。しかし、それを作るためにゴジラ細胞を手に入れなければならない矛盾。ゴジラを倒せたとして、核を頂点をする軍事バランスを崩壊させてしまう危険。子供向けの怪獣映画とは一線を画したテーマとなっている。その中で、先端技術の持つ危うさを危険視する若き科学者と、先端技術への理解なしに批判するマスコミに苛立ちをあらわにする老科学者の構図は、この映画のみならず科学というものが持つ永遠のテーマだろうと思う。行きすぎた科学への警鐘というのは1954年の『ゴジラ』以来、持ち続けているゴジラシリーズ全体に通じるテーマだと思うが、残念ながら、その重いテーマのためか観客動員数・興行収入において前作を下回り、次の『ゴジラVSキングギドラ』以降は、娯楽作品としての比重が強くなっていく。

 そのテーマや自衛隊の作戦行動・用兵描写がしっかりと描かれた映画ということから、一部のファンからは平成ゴジラシリーズ最高の傑作の呼び声が高い。

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【ストーリー】

 1985年。ゴジラは三原山の火口に封印され、廃墟と化した東京で自衛隊化学部隊の手によってゴジラ細胞が回収されていた。そんな中、ゴジラ細胞を入手しようと行動を起こした遺伝子工学産業バイオメジャーの工作員が自衛隊と銃撃戦を巻き起こす。しかし、自衛隊を撃退したバイオメジャーの工作員も、サラジア共和国のエージェントによって射殺され、ゴジラ細胞はサラジア共和国の手に渡ったかに思えた。バイオメジャーはすぐさま報復を行い、サラジア共和国で遺伝子工学の研究を続ける白神博士の研究室を爆破し、白神博士の娘、英理加が巻き添えで死んでしまう。白神博士は、これによって研究の第一線から離れることになった。

 それから5年。いよいよゴジラの復活が現実味を帯びてくる。かつて、ゴジラ細胞を研究し核物質を食べるバクテリア――抗核エネルギーバクテリアの研究に乗り出そうとした日本だったが、ゴジラに対して有効な兵器だったとしても核兵器を頂点とする軍事バランスの崩壊を招く恐れがあると、これを大河内財団の地下金庫に厳重に封印していた。しかし、ゴジラ復活が現実味を帯びるなか、研究は封印を解かれようとしていた。その研究にかかわるように依頼された研究者の桐島は白神博士のの招聘を求める。一度は断った白神博士だったが、なぜか気が変わり、一週間だけゴジラ細胞を借り受けるという約束で研究に協力することを約束する。その間に、白神博士は、植物とゴジラの遺伝子と英理加の細胞を移植した永遠の命を持つ生物――ビオランテを作っていたのだった。

 ようやく完成した抗核エネルギーバクテリアだったが、バイオメジャーは日本政府に対して抗核エネルギーバクテリアの引き渡しを求める。要求が受け入れられない場合、三原山を爆破しゴジラを復活させるという。政府は、この要求を受け入れることを決め、桐島と自衛隊の権藤一佐が引き渡し場所に向かう。しかし、またしてもサラジア共和国のエージェントの妨害によって引き渡しは失敗。抗核エネルギーバクテリアはサラジア共和国の手に渡り、ゴジラは復活してしまう。

 対ゴジラの指揮を執るのは防衛大出身の若きエリート・黒木翔特佐。浦賀水道沖で護衛艦隊と自衛隊の秘密兵器スーパーX2によりいったん退いたゴジラだったが、なぜか芦ノ湖へと向かっていた。芦ノ湖では、白神博士によって作られたビオランテがゴジラを待ち受けている。両者の最初の対決はゴジラの勝利に終わり、ビオランテは焼き尽くされた。しかし、この戦いでゴジラは大きく力を失ったと踏んだ黒木特佐はエネルギーの充填に若狭の原子炉に向かう、と読んだ。最短を行くなら次の出現先は名古屋。黒木特佐は、自衛隊の戦力を伊勢湾に結集させるが、ゴジラは名古屋には現れず、ゴジラの行方も見失ってしまう。黒木特佐は、精神開発センターの三枝未来にゴジラの探索を依頼。ゴジラは大阪へと向かっていることが分かる。今から大阪に部隊を移動させても勝ち目はない。若狭で再度体勢を立て直しゴジラに対することを決める黒木。三枝未来は単身ゴジラに立ち向かう。

 そのころ、権藤一佐と桐島も抗核エネルギーバクテリアを追って大阪へと向かい、無事奪還に成功する。大阪へと上陸するゴジラに、再びスーパーX2が出撃。権藤は抗核エネルギーバクテリアの撃ち込みの準備に入る。ゴジラはスーパーX2によって権藤らが待ち構えるビル群に誘導する。撃ち込みには成功したものの、権藤一佐はゴジラにより破壊されたビルの倒壊に巻き込まれて死んでしまう。しかも、ゴジラに撃ち込まれた抗核エネルギーバクテリアはいつまで経っても効いてこない。

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【映画の中の自衛隊】

 何だかんだいってこの映画は黒木翔特佐の映画だったなぁと思う。情報操作をしてみたり、ゴジラに裏をかかれたら大阪で17歳の少女を単独でゴジラに当たらせてみたり。セリフも「勝った方が我々の敵になるだけです」「私の仕事は敵に勝つか負けるかです」などなどなど。自衛官というよりも、軍人的なキャラクターではあった。それだけ、インパクトが強く、印象的なキャラクターだったと思う。

 この映画の中の自衛隊はよく戦った。オープニングの銃撃戦はさておくにしても。ゴジラと護衛艦隊の戦いなど、対ゴジラを想定した戦略シミュレーションを志向した映画のように感じられた。スーパーX2、抗核エネルギーバクテリア、サンダー・コントールシステムなど秘密兵器を次々に繰り出し、ビオランテは弱いとまでは言わないまでも物語の繋ぎに過ぎなかった感じがある。個人的にはビオランテのデザインは好きだったが。

 気になったのは、スーパーX2が遠隔操作のリモコン兵器だったということ。これは後になったからそう思うことだが、湾岸戦争があったのはこの翌年のこと。イラク軍のスカッドミサイルを多国籍軍のパトリオットが撃ち落とすシーンが次々テレビの画像で映し出され、最もクリーンな戦争などという言葉が使われた。もちろん、どんな戦争であってもクリーンなどという言葉が通用する戦場はあり得ないが、当時はそんな風に思いこんだものだった。ゴジラVSビオランテのスーパーX2のオペレータが、スーパーX2を操作しゴジラを追い詰める様は、まるでゲームセンターでシューティングゲームに興じる小学生のようで、まさに“クリーン”という言葉が相応しい。しかし、その数分後、抗核エネルギーバクテリアを撃ち込んだ権藤一佐はゴジラにより帰らぬ人になる。なんだか、とても暗示的な演出に感じたものだった。

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