ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

ゴジラ(1984年)

DATE

1984年劇場公開

監督:橋本幸治(本編)  中野昭慶(特撮)   脚本:永原秀一  音楽:小六禮次郎

キャスト  三田村清輝(内閣総理大臣):小林桂樹  牧吾郎:田中健  奥村尚子:沢口靖子  奥村宏:宅麻伸  林田信:夏木陽介

観客動員数:320万人  配給収入17億円

内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊


【解説・感想】

 ゴジラ生誕30周年目の1984年に、1975年の『メカゴジラの逆襲』以来9年ぶりにスクリーンに復活したゴジラシリーズ第16作。1954年公開の第1作『ゴジラ』を除いたゴジラシリーズをいったんリセットし、1954年以来、ゴジラは出現していない設定となっている。この1984年版『ゴジラ』以降、1995年の『ゴジラVSデストロイア』まで7作は世界観を共有した一連のシリーズとなっている。

 戦争のメタファであった1954年の『ゴジラ』に対し、1984年版ではゴジラは自然災害の一種のような描き方がなされ、人間の味方になりつつあったゴジラシリーズを軌道修正し、徹底的に人間の敵として描いている。怪獣上陸という災害に対する対応をリアルに描くために、各方面の専門家を招いているという。ストーリーも当時の国際情勢を反映し、ソ連の原子力潜水艦の活動やアメリカの戦略防衛構想の影響などが見て取れる。その中で、小林桂樹さんが演じる、三田村総理の存在は、普段は温厚な人物でいざというときにはリーダーシップを発揮し言うべきことは言う。ある意味理想のリーダーの姿を描こうとしたのかもしれない。

 怪獣映画としては少々首を捻る出来。ゴジラの迫力も伝わってこず、どこでどう盛り上がったらいいのかよくわからない映画。大人のためのゴジラ、新しいゴジラを描こうとしているのは伝わってくる。

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【ストーリー】

 伊豆諸島の大黒島で巨大な噴火が発生。噴火から3ヶ月後、大黒島近海で操業していた漁船・第五八幡丸が嵐によって航行困難となり、連絡を絶った。付近をヨットで航行していた新聞記者の牧は、遭難していた第五八幡丸を発見し、調査のために乗り込むと、船員の遺体を発見。さらに見たことの無い一メートルほどの生物に襲われた。生存者の奥村に助けられた牧は奥村から、怪物の話を聞かされる。奥村の大学の林田教授は、奥村が見た怪物こそ、30年前に東京に上陸し、甚大な被害を引き起こしたゴジラであると確信する。

 ゴジラの存在を日本国政府は一時隠そうとするが、ソ連の原子力潜水艦が何者かの攻撃を受け、撃沈された。アメリカの先制攻撃だと踏んだソ連は、関与を否定するアメリカと臨戦態勢に入る。一触即発の緊張状態により、東西に緊張が走った。自衛隊の調査により、原子力潜水艦の沈没はゴジラによるものと断定され、ついに三田村首相は全てを公表する。

 静岡県の井浜原子力発電所にゴジラが出現。施設を破壊し、太平洋へと消えていった。アメリカ、ソ連は、ゴジラを倒すには核の使用しかないと三田村総理に迫るが、総理は非核三原則を盾に核の使用は絶対に認めない方針を貫く。もちろん、日本国政府もゴジラの脅威をただ手をこまねいて見ているつもりは無い。自衛隊が独自に開発を続けてきた移動要塞スーパーXに核の制御にも使うカドミウムを込めた弾丸を搭載させ、発進させた。そのころ、林田教授は、井浜原発を襲ったゴジラの行動分析からゴジラを誘導することが可能と踏んで、三原山へと向かう。

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【映画の中の自衛隊】

 トンデモ兵器が次々投入されるのは東宝自衛隊のお約束で、この『ゴジラ』にもハイパワーメーサー車両やスーパーXなどが実戦投入されている。スーパーXのデザインについてはとやかく言うまいにして、それら以上のトンデモ兵器が、スーパーXに搭載されていたカドミウム弾である。カドミウムは二次電池(ニッカド電池)の電極など様々な用途に用いられており、中性子を吸収する性質から、原子力発電の制御棒にも使用されている。1950年代から1960年代にかけて産業の現場で盛んに使用されていたカドミウムだが、その毒性は深刻な被害をもたらし、現在は使用を控え使用する場合でも細心の注意を払って使用されている。有名なのは日本でも土壌や水質の汚染から米を介して人間の体内に入り込み慢性中毒化したイタイイタイ病である(参考:環境省ホームページ)。おそらく今回の攻撃によって、東京の土壌は広く汚染されただろう。いくら、怪獣の力が絶大でも、使ってはいけない兵器だってあるのだ。それは、核のみではない。

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