ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

MM9-MONSTER MAGNITUDE-(2010年)

DATE

2010年7月〜10 毎日放送系列TVドラマ

監督:樋口真嗣   脚本: 伊藤和典  音楽:斉藤恒芳  特技監督:田口清隆

キャスト  藤澤さくら:石橋杏奈  朏(みかづき)万里:尾野真千子  灰田涼:高橋一生  森橋光一郎:中村靖日  山際俊夫:松尾諭  室町洋二郎:皆川猿時  氷室真琴:平山浩行  案野悠里:加藤貴子  二田良秋津:橋本愛  久里浜祥一:松重豊  オープニングナレーション:石坂浩二




内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊





【解説・感想】

  山本弘による人気SF小説の映像化作品。2010年(平成22年)7月から9月にかけて毎日放送系列にて放送された。全13話。現代日本に非常に似た世界が舞台。しかし、“怪獣”が普通に存在し、怪獣に対応するためのセクションも存在する。怪獣という存在が実際に現実に存在したらさまざまな矛盾があることは「空想科学読本」などで指摘されているが(そもそも、体長50m級の怪獣や火を吐いたりする生物など、SFや特撮映画などに存在する存在が現実に存在すると思っている人間はまずいないと思うし、誰もがないと思っているものをないと言っているだけなのでそういう指摘があるなどと言うこと自体ナンセンスな気がするが)、MM9の中では多重人間原理という理論でこれを説明している。この理論が原作の最後に大きな意味を持ってくるが、このドラマの中ではそのあたりの説明はばっさりと削除されている。

主人公たちが所属するのは、怪獣災害に対応するために、気象庁の中に設置された「気象庁特異生物対策部」、通称“気特対”。彼らは、怪獣を観測し、周辺に警報を発令し、自衛隊などに助言を行う組織である。そのため、戦闘部隊は有していない。物語は、怪獣災害の第一線で対応する公務員、気特対を、時にシリアスに、時にコミカルに描いている。

 監督に『平成ガメラシリーズ』で特技監督を務め、『ローレライ』『日本沈没』では監督を務めた樋口真嗣氏。脚本に、『機動警察パトレイバーシリーズ/機動警察パトレイバーthe Movie/機動警察パトレイバー2 the Movie』『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』 『平成ガメラ3部作』の伊藤和典氏を迎えた作品。特撮・軍事・自衛隊ものに造詣の深い両者が、これまでとは異色の特撮ものに挑戦している。

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【ストーリー】

 千代田区にある気象庁特異生物対策課――通称「気特対」。怪獣による災害から人々の生活を守るため日夜、対処を行っている。怪獣による破壊力の規模は便宜上MM(モンスター・マグニチュード)という単位であらわされ、これまで発見された最大級のMMでさえ8であり、9以上はまさしく神話や伝説に登場するレベルの怪獣である。MM0以上の存在を「M」それ未満の存在を「S」と呼称する。Sは妖怪、妖精、精霊などといわれるような超自然的な存在であり、林野庁や環境省が管理している。

 気特対では新たに配属される19歳の女性新人の話題で盛り上がっていた。配属4年目の朏万里は新人教育を任され浮かない顔をしている。生意気な新人と、過去に大規模なM災害を経験した中堅班員のダブルヒロインを中心に物語は進行していく。いつ訪れるか分からないM災害に備え、実際にM災害が起こると監視や分析を行い、予測されうる進路や、Mの特性を割り出しなどなど忙しさに追われるメンバーたち。 使命感に燃えつつも、Mが出現すると家庭に帰れない不満が漏れ、時に上司の愚痴をこぼしたりする。ある意味、“普通”の公務員、サラリーマンと変わらない怪獣との戦いの最前線を、ユーモアを交えつつ描いている。

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【映画の中の自衛隊】

 原作においては、互いの役割分担が明確にされて、信頼関係がある中で協力している自衛隊と気特対だが、ドラマ版ではオリジナル要素の一つとして自衛隊と気特対の微妙な距離感に言及される場面が出てくる。自衛隊は、いざM災害が発生するとその対処に全責任を負う以上、M災害対処の全ての権限を手に入れたいと考えており、その微妙な距離感を体現するキャラクターとして、防衛省から気象庁へ出向の氷室真琴が登場している。また、第5話で出現した怪獣8号(しっぽん)の行動を予測した藤澤さくらが自衛隊が巣ごと爆破しようとしていることを知り、「こんなことのために伝えたんじゃないのに」と呟き、案野悠里が「それが自衛隊の仕事なのよ」と返す場面などは、殲滅にこだわる自衛隊と被害を最小限に抑えればそれでよいと考える気特対の温度差も垣間見える。

 深夜枠のドラマなので予算面での制約は大きかったと思うが、その中で、よくやったと感じる特撮ドラマになっていると思う。とはいえ、対Mに対する自衛隊の用兵・戦略はほとんど描かれておらず、もっと派手にやってほしかったなぁと思わないでもない。

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