ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

ULTRAMAN(2004年)

DATE

1955年劇場公開

監督:小中和哉  特技監督:菊地雄一  脚本:長谷川圭一  音楽監修: TAK MATSUMOTO(B'z)

キャスト  真木舜一:別所哲也  水原沙羅:遠山景織子  有働貴文:大澄賢也

内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊

【解説・感想】

 1966年の『ウルトラマン』第1話を下書きに、現代を舞台に置き換え主人公を航空自衛官に設定して制作された。ULTRA N PROJECT(ウルトラ エヌ プロジェクト)の企画の一つである。

 2004年10月から2005年6月にかけて放送された特撮テレビドラマ『ウルトラマンネクサス』の5年前の物語という設定になっており、ネクサスの中でも『ULTRAMAN』の映像が使用される場面もあった。

 ULTRA N PROJECTは、新たなウルトラマン像(ネオスタンダードヒーロー)の確立を目指した意欲的な企画だったものの『ULTRAMAN』の興行収入は1億5千万程度にとどまり、『ネクサス』も視聴率2〜3%と低迷し37話で打ち切りとなるなど不振を極めたため、プロジェクトは頓挫した。『ULTRAMAN』の続編の制作も予定され、2005年冬の公開を目指していたものの、『ULTRAMAN』の興行成績を受けて消滅している。

 現実世界を舞台に主人公を航空自衛隊員という設定にしたり、主人公は独身の青年ではなく30代で病身の子供を持つ父親だったり、これまでとは全く違ったヒーロー像を描こうとしていることは確かだと思うし、個人的には良作だったと思う。ただ、個人的にウルトラマンシリーズを全く見ていないのでそう思うのかもしれないなぁ、と思う。新しいものを創ろうとするのに、これまでの作品の良質の部分を捨てざるをえない場合もあるだろう。いずれにせよ、大人向けのリアルなウルトラマンにはまだ遠い、という作品だったと思う。

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【ストーリー】

 航空自衛隊の戦闘機パイロットの真木舜一二等空尉は、病弱な息子のために除隊を決意していた。そんな中、謎の飛行物体に対処すべくスクランブル発進した真木は赤い発光体「RED」と衝突する。その中で、謎の存在と接触した真木は、奇跡的に無傷のままで救助された。

 生還した真木は、理由も教えられないまま、防衛庁の特務機関「BCST」の監視を受けることになる。真木の事件から3ヶ月前、海上自衛隊所属の有働貴文は潜水艇で探索中に青い発光体「BLUE」と接触。保護された有働はすでにビースト・ザ・ワンと呼ばれる凶悪な存在に存在に記憶と人格を乗っ取られていた。有働が異形の怪物と化したように、真木にもまた何らかの変化が起こるのではないか……。

 特務機関BCSTの監察官の水原沙羅たちは、ザ・ワンを誘き寄せる材料に真木を使おうと考えていた。かくして、ザ・ワンがその姿を現す。応戦する自衛隊員たちも、ザ・ワンの前には無力だった。ザ・ワンに襲われた真木も負傷し倒れるが、その時、真木に変化が起こる。銀色に輝く巨人へと変身したのだ。真木もまた、「ザ・ネクスト」と呼ばれる未知の存在へと変化していた。

 水原沙羅には有働とは恋人同士だったという過去があった。有働の暴走を止めたい沙羅は、真木とともに新宿へと向かう。もはや、有働――ザ・ワンを止められるのは真木の中にいるザ・ネクストだけだ。そんな二人の前に再び有働の姿をしたザ・ワンが出現。その言動で沙羅の精神を激しく揺さぶり、二人を殺そうとする。ザ・ネクストへと変化した真木は、ザ・ワンに空中戦を挑む。

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【映画の中の自衛隊】

  『ULTRAMAN』は自衛隊の全面協力のもとで制作された作品であり、F-15Jの発進の場面など、目を引く場面が多い。しかし、現実にそのような事態が発生した場合、自衛隊はどのように動くのか、といった細部までこだわったリアルさにはやや遠く、かえってリアルさの追求にもう一歩踏み込んでほしかったなぁとおもう作品だった。

『時空要塞マクロス』の戦闘シーンなどで高い評価がある板野一郎氏を迎えて制作されたザ・ネクストとザ・ワンとのスピーディーで壮絶な空中戦がこの作品の最大の見所。ザ・ワンの前に劣勢に陥ったザ・ネクストの窮地を救ったのは航空自衛隊の戦闘機部隊。飛行隊を率いるのは真木の親友であった島倉。
ガメラ2でも思ったが、ヒーローと自衛隊の共同戦線というのは、個人的は好きな演出である。

 主人公の真木は退官を控えた戦闘機パイロットという役柄で、34歳という設定である。時には超音速の荷重にも耐えなければならない戦闘機パイロットにかかる負担は大きく、脊椎や腰椎を痛めてしまう人も多く、40代前半が戦闘機を降りる1つの関門であるらしい。真木の年齢は先任にひきまわしてもらう時期を終えて飛行隊の中心としてバリバリ働いてもらわなければならない段階だろう。戦闘機パイロットを一人養成するには全部あわせて8億〜10億の育成費がかかるらしい。それを考えると、病弱な息子のためとはいえ、そんな年齢で戦闘機を降りるのは無責任に思えてしまう。

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