ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

亡国のイージス(2005年)

DATE

2005年劇場公開

監督   阪本順治  原作  福井晴敏(「亡国のイージス」)

キャスト  仙石恒史 海曹:真田広之  宮津弘隆 2等海佐:寺尾聰  渥美大輔:佐藤浩市  ヨンファ:中井貴一  如月行1等海士  ジョンヒ:チェ・ミンソ 他

内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊

【解説・感想】

 原作は1999年8月に講談社から刊行された福井晴敏の小説。刊行されたのはいわゆるテポドン・ショック(1998年8月)や、能登半島沖不審船事件(1999年3月)など、国防や自衛隊に対する注目が高まっていた時期であった。刊行されると現代日本の戦争や国家安全保障を鋭く突いた作品として注目され、ベストセラーとなった。2000年に日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞を受賞し、海洋冒険小説としても高い評価を得た。

 1999年の原作刊行直後に映画化の話は上がっており、2000年の公開を目指して防衛庁に企画を持っていったものの、現職の最新鋭護衛艦の艦長がこれを乗っ取り叛乱を企て、日本政府を脅迫するという内容に難色を示した防衛庁は、一度はこれを拒否した。再度、企画を持って行った時、防衛庁長官が安全保障に詳しい石破茂氏であったことから広報に再考が促され、制作サイドも脚本を変更するなどの調整を行い、協力を得られた経緯があるという。

 守るべき国の形とは何なのか。あるべき姿を失った日本を護る価値はあるのか。亡国の「盾」という言葉を使い、この国の在り方を問う、良質のポリティカルサスペンスである。映画を製作するにあたって、膨大な情報量の原作をそのまま映像化しようとしたらとても2時間程度で収まりきるはずもなく、当初のシナリオでは、普通に撮ったら5時間にもなるような膨大な分量であったという。大長編の映画化をしようとすると、どの部分を映像化し、どの部分を切り取るかという重要な判断を迫られる。それを遠慮なく削っていったのは他ならぬ原作者の福井晴敏氏であったという。プロデューサーはその様を、「あんなに割り切りのいい原作者は初めて見た」と語った。その甲斐あって、日本の映画としては非常にスケールが大きく最後まで緊張感を保った映画となった。

 その中で、不可解だったキャラクターは、女工作員のチェ・ジョンヒ。ホ・ヨンファの妹で、女の身でありながら格闘戦でも他の工作員や如月にも引けを取らない。作戦中に地雷によって喉を潰し喋ることが出来ない、というキャラクター。作中でも、ヨンファと野球場に行っているシーンや喉の傷を確認できるシーンはあるものの、映画をただなぞっただけではこれらの設定を読み解くのは難しいだろうなぁと思う。死ぬ直前の如月とのキスシーンも意味不明だし。いる必要あるのか? と思ったのだが、自衛隊や安全保障というテーマのため、画面が男臭くなってしまうことは避けられなかったため、それを緩和するための花として残したキャラクターだったという話もある。ジョンヒを演じたチェ・ミンソは、本作出演が決まった後、韓国では「日本の再武装を促す極右映画に出演した」と韓国メディアから批判されたり、決まっていた第4回光州国際映画祭の閉幕式の司会を下ろされることになった。

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【ストーリー】

 物語の始まりは、一人の防衛大学生の論文から。国を守るということの意味を見出せずにいた防衛大学生の迷いから始まるオープニング。そして、防衛庁情報局(DAIS)の渥美大輔もまた、陰から国を守る汚れ役に就きながら、守るべき国とは何かを悩んでいた。

 そして、遠く太平洋。訓練のため出港したイージスシステム搭載護衛艦「いそかぜ」の先任伍長の仙石と、乗艦したばかりの如月一等海士が出会う。仙谷は若い自衛官から信頼が厚く、如月は寡黙で不審な動きが時折見られた。スケッチブックを開いて絵を描いていた如月と、仙谷は、絵画を通じで友好関係を結んでいく。そんな折、溝口三等海佐をリーダーとする海上訓練指導隊(FTG)が由良基地(和歌山県日高郡由良町)から乗艦してくる。訓練中に一人の隊員が死亡する事故が発生した。

 ところが、訓練は続行されることになり、仙谷は副長の宮津二等海佐の所に抗議に行く。そこで知らされた真相はFTGは、DAISの人間であり、工作員の如月一等海士による暴挙を止めるためだと聞かされる。しかも、艦長がすでに殺害されており、その直前に艦長室に入る如月の姿が見られていた。その直後、如月が艦内に爆弾を仕掛けて立て籠もる。如月に会って投降を呼びかけようとする仙谷に、如月は自分がDAISの人間だと訴える。「いそかぜ」を乗っ取り、日本に攻撃を仕掛けようとしているのは、溝口三佐と宮津二佐だと。

 如月はFTGに拘束され、仙谷たち乗員は救命ボートで離艦させられる。館に残ったのは溝口三佐たちFTGと、宮津二佐以下「いそかぜ」の幹部自衛官のみ。如月の言ったことは正しかった。仙谷は、叛乱を起こした「いそかぜ」に戻り、如月を救出し、艦を取り戻すことを決意する。そして、「いそかぜ」は、制止を試みた護衛艦「うらかぜ」にハープーンを発射。「うらかぜ」は撃沈された。それを見た溝口――いや、工作員、ホ・ユンファは一人吐き捨てる。

「よく見ろ日本人。これが戦争だ」

「いそかぜ」が東京湾に侵入していく中、宮津二佐は、内閣総理大臣以下、日本国の最高幹部らに『辺野古ディストラクション』の真相を公表すること、防大生・宮津隆史がDAISによって殺害されたことの公表、また彼が残した論文の公開であった。もしも受け入れられない場合、『辺野古ディストラクション』の原因となった化学兵器「GUSOH」を東京で使用すると迫る。政府はDAISの存在すら認めなかった。ヨンファらは捕らえていた如月を処刑しようとするが、仙谷の妨害によって艦内は混乱し、その隙に乗じて如月は脱出した。

 合流した仙谷と如月は、「GUSOH」を敵から奪い、「いそかぜ」を奪還するため、ともに戦うことになる。その頃政府でも、「いそかぜ」奪還と「GUSOH」の使用を阻止すべく対応が協議されていた。イージス艦の天敵は潜水艦だが、水深の浅い東京湾で潜水艦は使えない。米軍の特殊焼夷弾「テルミット・プラス」で「いそかぜ」ごと焼き払うため、F-2戦闘機の発進準備が始まった。阻止限界線まであとわずか。「テルミット・プラス」は使わせたくない渥美。祖国のために戦うヨンファ。そして父として叛乱の首謀者となった宮津二佐。それぞれの思惑が入り混じる中、仙谷と如月はわずかな希望に賭けて、孤独な戦いを繰り広げる。    

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【映画の中の自衛隊】

 専守防衛を国是とする自衛隊の理念を体現した存在と作中で語られ、物語の舞台となる海上自衛隊のイージス艦「いそかぜ」。原作では、第三世代ミサイル護衛艦(DDG)である「はたかぜ型護衛艦」の三番艦という位置づけであった。「はたかぜ型護衛艦」は現実には三番艦の計画はあったものの、建造はなされなかった。これを改装し、FCS-3(00式射撃指揮装置3型:射撃指揮装置(FCS)や艦載対空レーダーを統合した対空戦闘システム)とVLS(ミサイルは甲板下に格納され、発射の時は垂直に発射するシステム。発射されたミサイルは空中で方向を変え、目標に向かう。)を搭載したという設定で、作中では「ミニ・イージス艦」として扱われている。映画では、はたかぜ型護衛艦の後継艦である「こんごう型護衛艦」の三番艦「みょうこう(DDG-175)」が「いそかぜ」役で出演している。こんごう型護衛艦は、海上自衛隊で初めてイージスシステムを搭載した護衛艦である。「みょうこう」は能登半島沖不審船事件にも出動し、初めての海上警備行動に参加した艦としても知られる。なお、2018年4月現在日本が保有しているイージス艦は「こんごう型護衛艦」4隻と、「あたご」型が2隻。また「はたかぜ型護衛艦」の後継艦(8200t型護衛艦)2隻の建造が進められている。

 イージス艦とは、イージスシステムを搭載した艦艇のことを指す。イージスシステムとは正式名称イージス武器システムMk.7(AWS)。アメリカ海軍が防空戦闘を重視して開発した艦載武器システムを指す。イージス艦とは、イージスシステムを現地に運ぶための艦艇と言っても過言ではないのかもしれない。敵からの同時航空攻撃を想定して開発されたフェイズドアレイレーダーにより200以上の目標を同時に補足し、優れた情報処理能力・指揮統制機能により、迅速に複数の目標を処理することが可能になった。イージスの語源は、ギリシア神話に出てくるあらゆる邪悪や災厄を払うアイギスの盾から来ている。映画『亡国のイージス』が公開される前年の平成16年度より、ミサイル防衛システムの整備が始められており、イージス艦も重要な役割を果たしている。

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