ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

空へ〜救いの翼 RESCUE WINGS〜(2008年)

DATE

2008年劇場公開

監督:手塚昌明  脚本:内藤忠司  水上清資  手塚昌明  大森一樹  音楽:和田薫

キャスト  川島遥風 3尉:高山侑子  瀬南孝太郎 2曹:渡辺大  織田龍平 1尉:井坂俊哉  横須賀剛 1尉:金子賢  勝沼碧 整備小隊・空士長:鈴木聖奈   鷹栖美那 飛行班長・3佐:木村佳乃  菊田靖男 2佐:三浦友和   飯島艦長:中村雅俊

内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊

【解説・感想】

 2008年12月に公開された、航空自衛隊小松救難団を舞台に、初の女性救難パイロットになった川島遥風の成長を描く。原作はアニメの『よみがえる空 RESCUEWING』とコミックスの『レスキューウイングス』。海上自衛隊・航空自衛隊の全面支援のもと、本物の航空機や艦船、基地施設などを利用して撮影が行われたという。

 楽しみにしていた映画だったが、全体的にヌルい印象を受けたのは確か。監督の手塚昌明氏や脚本に名を連ねる大森一樹氏らはゴジラシリーズにも関わっており、自衛隊への関心・知識も深い方であろうと思う。出演陣が、どうにも自衛官になりきれていなかったというか……。もちろん、自衛官だって普段は人間。訓練や出動のない時は、普通の人だということを描きたかったんだと思うが、訓練や出動の時と待機の時とあんまり変わりなく見えるのはやっぱり気になるところ。

 もう一つは、ストーリー中のエピソードが「これアニメ版でもネタにしてたっけ」と思う場面が多かったのも気になった。クライマックスの艦船への着陸も、アニメ版ではあんなに簡単に済ませていたことを、こんなに引っ張られても……。正直、アニメの『よみがえる空〜RESCUEWING〜』の方がお勧めである。

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【ストーリー】

 幼いころに母の命を救ってくれた救難団に憧れ、自衛隊に入隊した23歳の川島遥風。目指していた救難ヘリのパイロットとして命を落としかねない厳しい訓練を続けていたが、まだまだ未熟な彼女は、階級が下の救難員の瀬南2曹にさえ叱責されるありさまだった。良くも悪くも救難団でも注目される遥風だが、救難ヘリ初の女性パイロットを見守る周囲の目は必ずしも優しいものばかりではない。

 そんなあるとき、嵐の中で出動命令が下る。座礁した漁船から生存者を救出する任務は、救難員の命がけの救出作業によりあと一人を残すまでになっていた。しかし、無情にも燃料は限界を迎えていた。その時、油まみれの男が甲板にはい出てくる。「もう一度アプローチを」と訴える遥風の目の前で男は高波にさらわれてしまう。

 落ち込む遥風に、瀬南が、自分も阪神大震災で妹を亡くしたこと、それでも感傷や憧れで救難をしていけないことなどを話し遥風を励ます。

 それから半月後、F転のパイロット、織田が操縦するヘリが強風の剣岳でバランスを崩し瀬南が岸壁にたたきつけられる。パイロットの織田や整備責任者の碧は強く責任を感じる。そんな彼らを救ったのは仲間の友情や信頼だった。もくもくと整備の仕事に力を入れる碧を見ながら、命を背負う責任や重みを改めて感じる織田。遥風のもとに先日、遥風が離島から輸送した少女が急死したことが知らされる。少女からの感謝の手紙を握りしめ、嗚咽をこぼす。

 一ヶ月後、瀬南が現場復帰。碧と戦闘機パイロットの横須賀1尉の婚約が決まり職場には明るい話題が舞い込む。ところが、その横須賀1尉の搭乗するF-15が、消息不明になる。待機中のUH-60は整備のために動かせない。すべては遥風の乗るUH-60に託された。

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【映画の中の自衛隊】

 救難団とは1958年に、不時着した戦闘機のパイロットの救出のために編成され、現在ではその能力は世界でもトップクラスだという。警察、消防、海上保安庁などでさえ対処できな重大な救難に出動する、まさしく「救難最後の砦」である。司令部は埼玉県の入間航空基地。海上自衛隊にも救難飛行隊という組織があり、救難任務が分担されている。 民間人の救出を自衛隊が行う場合は、災害派遣という形での出動になる。

 各救難団には3機の救難機(UH-60J)と2機の捜索機(U-125A)が基本編成となっている。映画の中では実機を見ることができるので、それだけでも見る価値はあるだろうと思う。映画の川島遥風のような女性の救難ヘリパイロットは映画が公開された2008年現在、存在しないようではあるが、門戸は開放されており、誕生はそう遠い未来のことではないかもしれない。

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