指導者のブザマな国、日本  平成10年2月15日 日本海新聞潮流に寄稿

社会戯評 続 天の法廷 

第一幕 祖先の神々の声

・・・裁いて欲しいとの声がしきりじゃが

・・・天の法廷は百年に一度だ、ダメじゃ
・・・誰を裁けと申すのか
・・・総会屋、政治家、高級官僚、銀行証券等々の声が多い
・・・日本には大人物がいないのか
・・・元総理達があの程度じゃから
・・・聖徳太子が見えられた
・・・予は新しい御触れを日本国の民に与えたい
・・・それでは今一度開廷する。   

第二幕 神々の協議   

・・・検事は日本国の現状を憂い父性溢れる織田信長殿か質実剛健で女人を避けられた上杉謙信殿は如何 であろう
・・・上杉殿が今の日本に相応しい
・・・弁護人は矢張り中国だが今回は老子殿にお出まし願う
・・・裁判官はローマ帝国の皇帝をされて古代最も倫理性の高い不朽の名著をお書きになられた哲人マルク スアウレリウス殿にご出馬願う
・・・被告は誰か
・・・政治家、総会屋、銀行証券公務員等々目白押しであります
・・・天は総会屋は裁かぬ。あれは影であり表がシャントすれば自然に消えるのじゃ。今回は人の上に立つ者 とする。

第三幕 天の法廷
  
検事  上杉謙信
 
上に立つ者 


人間は目上とか年長者のマネをして育つのじゃ。社会や組織が悪いのは社会の親たる人の上に立つ指導者の在りようが悪いからじゃ。日本は大決断が出来ないでおる。日本国ほど指導者がブザマな国はあるまい。志高く生きておらぬ。天の眼にかなうのは
中坊公平くらいか。   
 
親達  


一言で申せば父権の喪失じゃ。子供は男親のリリしさと母親の愛情でバランスが取れるのじゃ。両親とも子供に甘すぎる。いい加減に目覚めねば飢餓、地震、戦争を起し男の腕力が必要な時代に戻すぞ。 


 政府地方公共団体    


予算は民の汗血と思われよ。カラ出張、食料費、公私混同など詐取ではないか。彼らを捕らえない。これぞ国の乱れの大元じゃ。民は怒らない。寧ろここに日本の真の危機が潜んでおる。


 銀行証券  


公器である事を忘れておる。北拓、山一破綻で預金者が損失を被れば本物だが日本はまだまだ村の資本主義じゃ。これからはそうは行かぬぞ。

 
公職者  


公に奉ずると言う誇りを失い民間と同じくカネに毒されておる。なさけないのう。      


 財界  


役員会や株主総会は形骸化しておる。トップの気概と器量次第じゃ。 
 
弁護人  老子

古代日本は小国ながら我が国に対して申したものだ。日出ずる国の天子、書を日没っする国の天子にと。あの心意気は消滅したようだ。国の矜持を失い何時までも米国の属国に甘んじておる。これがあの君子と武士の国の末裔か。
・・政治家は図るに義を以てなすべし。人の恨みも甘受すべし。公職者共々良くなる事が国民の幸福への近道じゃ。勝れた哲学を持たれよ。我が国は張養浩の三事忠告でも参考にされよ。

・・まあ人間社会には色々ある。良いとか悪いとか、果たして絶対的な善悪是非があるものか、ありはしないが近頃日本国にはさかしらの人が多くなり混乱を極めておる。物が溢れ物に負けておる。無となり不言の教えを身につけた人材を発掘し登用すれば大きい仕事をするし国民も幸せなのだが。 
 
 多ければ即ち惑う  ワッハッハッハッ


裁判官
  聖徳太子

予の決めた[和を以て貴しとなす]を廃止する。二十一世紀の御触れを申す。

   
 [理知を以て貴しとなす]と致せ。但し人情の機微を忘るな。よいな。

裁判官  アウレリウス

2千年たつと指導者達はかくも堕落するものでありますか。私は皇帝になりましても正直の徳を守り簡素な生活をしまして日々瞑想し国民の事を考えました。個人の財宝も競売して戦いに備えました。指導者は廉潔の心と正義を基にした克己の精神です。その上に博愛、社会連帯感情を抱き真摯率先してやれば難関は突破できます。さすればお国は必ず良くなります。立派な国を再び創り世界へ貢献願いたいものであります。                              完    徳永圀典