4月--今日の格言・箴言12 大学--人を治める学
大学とは、勿論、四書五経の一つである。小学を人間の基礎学とすれば大学は人を治める学である。政治原論・政治哲学である。これから小学校・大学の命名が行われている。今や、名は体を現わさなくなっているわが国の学校教育と見えるが大学は指導者たる者の道と徳の在りようを示した儒教思想の真髄であり修己治人の教えである。大学では、明明徳・在親民・在止於至善を三綱領とする。これを実現する為に、格物・致知・誠意・正心・修身・斎家・治国・平天下の八ッを八条目という。
4月1日 | 大学の道は、明徳を明らかにするに在り。民を新たにするに在り。至善にとどまるに在り。(大学・経一章) | 社会で働き人から信頼されるには自己の能力人格の両面を磨かねばならぬ。君子の学であり冒頭にある。 「大学の道三綱領」1.天から頂いた徳を人欲で曇らせない、常に磨く。2.自分を磨いたら人々に波及する。3.その努力を継続し最高レベルに達せよ。 |
4月2日 | 止まるを知りてのちに定まるあり。定まりてのちに能く静かなり。静かにしてのちに能く安し。安くしてのちに能く慮る。慮りてのちに能く得。(大学・経一章) | このプロセスは修己の学と言える。まず志を立て目標を立てる。高い目標を立てて堅持して行くのは人生の生き方と通じる。 |
4月3日 | 物に本末あり。事に終始あり、先後する所を知れば則ち道に近し。(大学・経一章) | まず本を養ってそれから末に及ぼす。順序を追って進んで行けばその成果も期待できる。修己の学である。仕事でも根本を疎かにして枝葉末節をつついてはどうにもならぬ。 |
4月4日 | 古の明徳を天下に明らかにせんと欲する者は、先ずその国を治む。その国を治めんと欲する者は、先ずその家を斎-ととの-う。その家を斎えんと欲する者は、先ずその身を修ーおさーむ。(大学・経一章) | 著名な言葉。立派な政治を行うには、先ず自分の家を確りする。家族の支持も得られない男が国民や企業の指導者として協力を得られる道理はない。その為には何と申しても自分自身を磨く、つまり修身である。ここからすべて出発する。至言なり。 |
4月5日 | その身を修めんと欲する者は、先ずその心を正しくす。その心を正しくせんと欲する者は、先ずその意を誠にす。その意を誠にせんと欲する者は、先ずその知を致す。知を致すは物に格-いたる-に在り。 | 社会人として信頼されるには、能力と人格の両面で自分を磨く事が必須。それが修身であろう。格物到知が必要の所以。 |
4月6日 | 湯の磐の銘に曰く、洵に日に新たに日々に新たに、また新たなり。( 洵-まこと) | 湯は殷王朝の湯王。聖天子とされる。マンネリでは前進はない。常に意欲を奮い起こす。毎日の勉強こそ肝要。それも実践的勉強、それには日々に新たの覚悟を。 |
4月7日 | 力を用うるの久しき、一旦豁然として貫通するに至りては、即ち衆物の表裏精粗、到らざるなく、而して吾が心の全体大用も明らかならざるなし。(大学・伝五章) | この世の中の事物はすべて「理」が貫通している。理とは事物を存在させている根本原理である。人間、万物全てに存在、心の中にある理を極めるのが朱子学の言う格物到知である。 |
4月8日 | その意を誠にすとは自らを欺くことなきなり。悪臭を悪むが如く好色を好むが如し。(大学・伝六章) | 修身の第一歩は「誠意」。誠意とは自分を欺かぬ事。道徳意識を本能的なレベルに高めてこそ誠意が自分のものとなる。 |
4月9日 | 君子は必ずその独りを慎む。 (大学・伝六章) |
君子とは、能力人格兼備の社会人そのような人は人目のない場所でも、自分の心を正し、行為を慎む。「天知る、地知る、子-し-知る、我知る。」 |
4月10日 | 小人閑居して不善をなし、至らざる所なし。 (大学・伝六章) |
君子の反対が小人、独りいるとつまらぬ妄想にとりつかれて、人を怨んだり、よからぬ企みをする。人前ではとりつくろう。然し、隠しても隠し切れず態度に表れる。だから君子は独りを慎む。 |
4月11日 | 十目-じゅうもく-の視る所、十手-じつしゅ-の指-ゆびさ-す所、それ厳なるかな。(大学・伝六章) | 衆人環視で些細な事も人目にさらされている。自らの言動に留意。周りの人間も馬鹿ではない、怖い位の指摘なるかな。 |
4月12日 | 心ここに在らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず、食えどもその味を知らず。(大学・伝七章) | 心がしっかり確立されていなければ身心は正常に機能しない。大学は正心を修養の基本とする。 |
4月13日 | 人はその親愛する所において辟す。その賎悪する所において辟す。(大学・伝八章) | 辟すとは偏ること。自分の気に入った人間を愛するのは自然感情。然し偏ると公平さを失う。どうしても好きになれぬ人もいるが敬して遠ざければよい、嫌悪感を示さないのがいい。心のバランスが必要。 |
4月14日 | 一言、事をやぶり、一人-いちにん-、国を定む。(大学・伝九章) | たった一人が身を正すことにより国が安定するという。上ほど発言を慎重には厳しく先哲の戒める処。上が利益を求めれば下も、上が礼を好むと下も好む。国も家も。 |
4月15日 | 身に蔵する所恕-じょ-ならずして能くこれを人にさとす者は、いまだこれ有らざるなり。(大学・伝九章) | 恕とは相手の気持ちや立場になって考える、つまり思いやり。上の者がこの心を持つこと。孔子に子貢が聞いた。生涯の信条の一言をと。孔子曰く「それ恕か。己の欲せざる所は人に施すことなかれ」 |
4月16日 | 衆を得れば即ち国を得、衆を失えば即ち国を失う。(大学・伝十章) | 治世に国民の心を掴むの要は古今東西変わらぬ政治の根本。 |
4月17日 | 徳は本なり。財は末なり。本を外にし末を内にすれば、民を争わしめ奪うを施す。(大学・伝十章) | 為政者の徳こそ根本。財は第二義。戦後は財が第一義となるから争いの根源となっている。米国様式は争いの見本。早く伝来の日本復活を。 |
4月18日 | 言、悖-もと-って出づる者は、また悖って入る。貸、悖って入る者は、また悖って出づ。(大学・伝十章) | 道理に外れるとか思いやりに欠ける事は同様なものが自分に帰るの意。金でも外道で得たものは出ていく。トップとか為政者の姿勢について語った言葉。 |
4月19日 | 賢を見て挙ぐる能わず。挙げて先んずる能わざるは、命-おこた-りなり。不善を見て退くる能わず、退けて遠ざくる能わざるは、過ちなり。 (大学・伝十章) |
人材登用のアドバイス。人材を登用しても重用できねば怠慢。良くない人物を発見しても辞職させ関係断絶できねば重大な過ちだ。 |
4月20日 | 必ず忠信以ってこれを得、驕泰以ってこれを失う。 (大学・伝十章) | 忠信とは自分を偽らぬ事。驕泰防止はトップ、政治家の心すへき徳目。 |
4月21日 | 隠れたるより見-あら-わるはなく、微-かす-かなるより顕-あきら-かなるはなし。故に君子はその独りを慎むなり。 ( 中庸一章) | 秘密にしようとすればかえって世間に知られる。要するに心の奥底に兆した事は形となって現われてこないので他人に察知されない。君子は、自分のみ独り知っているが故に慎重に対処の要あり。 |
4月22日 | 喜怒哀楽のいまだ発せざる、これを中という。発して皆節に中-あた-る。これを和という。中なる者は天下の大本なり。和なるものは天下の達道なり。 ( 中庸一章) | 朱子学の重要なテーマ。喜怒哀楽は外の刺激、心の状態は天から付与された本性そのもので偏向はない。それが中である。これが万物の根本。喜怒哀楽も過不足なければ道と言える。それが中節の和と呼ばれる状態。 |
4月23日 | 君子は中庸する。小人は中庸に反す。 ( 中庸二章) | 孔子曰く、「中庸の徳たるや、それ至れるかな。民鮮きこと久し。」中とは不変、庸とは不易である。 |
4月24日 | 君子は和して流せず、強なるかな矯たり。中立して倚たらず、強なるかな。 ( 中庸十章) | 矯も強で本当に強い。主体性を保ちつつ和する。中庸には強い意志力を要す。 |
4月25日 | 富は屋を潤し、徳は身を潤す。心広く体ゆたかなり。(大学・伝六章) | お金があれば家具、調度品で快適な住居に住めるように徳を身につけると体じゅうを潤して心は広々とし体ものびやかになる。 |
4月26日 | 人の悪む所を好み、人の好む所を悪む。これを人の性にもとるという。災い必ずその身に及ぶ。(大学・伝十章) | 為政者の心構え。国民の好む所に従えということ。 |
4月27日 | 上-かみ-に悪む所、以って下を使うなかれ。下に悪む所、以って上に事-つか-うるなかれ。前に悪む所、以って後に先んずるなかれ。後に悪む所、以って前に従うなかれ。右に悪む所、以って左に交わるなかれ。左に悪む所、以って右に交わるなかれ。(大学・伝十章) | 上司を見て嫌だなと思う事は部下にはするな。部下の態度に気に食わぬものあれば同様な態度を上司にするな。大学では、これを「給-けっく-の道」という。組織のまとめにはこれが必要。 |
4月28日 | 好みてその悪を知り、悪みてその美を知る者は、天下に鮮し。 (大学・伝十章) |
好きになると長所ばかり、嫌いは短所ばかり目につくのが普通。感情に左右されないのが信頼される社会人。 |
4月29日 | 物格-いた-って后ーのちー知に至る。知至って后に意誠なり。意誠にして后に心正し。心正しくして后に身修まる。身修まって后に家斉ーととのーう。家斉って后に天下平らなり。(大学・経一章) | 4月5日の逆から説いた。大学の八条目だが、格物→到知→誠意→正心→修身→斉家→治国→平天下となる。指導者の自己練磨が修身である。 |
4月30日 | 天子より以って庶民に至るまで、壱是ーいっしーに皆修身を持って本となす。その本ーもとー乱れて末治まる者は否ーあらーず。(大学・経一章) | 大学・経一章だが最後にした。壱是はすべての意。上に立つ人、組織人みなに必要な修身。自分で自分を磨く、社会人としての人格向上の自覚的努力の参考書ということで終わりたい。 |