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スポーツドクター・コラム

それぞれのレースにドラマ

 1998年4月から1年間、スポーツドクター春夏秋冬のテーマで掲載された日本海新聞のコラムをあげてみました。
 桜が見ごろとなり、春の息吹を感じながら原稿を書き始めた。もう遠い昔のように思えるが、長野オリンピックが成功裏に終わった。自分自身、テレビの映像でしか情報は得られなかったが、湾岸戦争再勃発の危機も彼方に霞んでしまうくらいにテレビ観戦に夢中になった。
 なぜなら、それぞれのレースにドラマがあり、人生の縮図があったからだ。その中で気がついたことがある。日本選手の談話が生き生きとして楽しいのだ。少し紹介して見よう。
 「価値ある金メダルを獲得できましたが、これからはそれ以上に価値ある人生を生きていきたい」(清水宏保選手)優勝の報奨金300万円の使い道を聞かれ「一度でいいから20万円くらい握り締めて好きな物を買ってみたかった」(里谷多英選手)、「日本初とか騒いでいるうちは日本の殻を破れない」(船木和喜選手)、「有名な萩原健司と一緒に走っているのが信じられなかった。双子なのだから、おれが苦しい時は彼も苦しいと思いながら走った」(荻原次晴選手)。皆、本音を話して屈託がない。
 清水選手の談話は謙虚で勝っておごらず、しっかりとした生き方を感じさせる。彼にとって金メダルは通過点なのだ。人生こそ、だれもが平等に持つ超金メダルなのだろう。かつてモハメド・アリは人種差別への抵抗から金メダルを川に投げ捨てた。今では伝説になるほど有名な話である。
 メダルの価値は自分自身の生き方と取り巻く社会により成長していくものなのかもしれない。






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