小説内で何と呼ばれたいですか?
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*何も記入しない場合、澤村遥になります。




2. 再会

「結構で……あれ!真島のおじさん!?」
「あ…、ちゃん……か?」

人形のように整った顔立ちで、陶器のように白い肌の美しい少女が立っている。だった。真島が最後にに会ったのは、彼女がまだ小学生の時だった。天使のような雰囲気は今と変わっていない。
だが、長い間会っていないうちに、小さかったの身長は、真島の肩の高さまで伸びていた。ポニーテールに束ねてある黒髪は、顔の輪郭をはっきりとさせ、はぐっと大人びて見える。V字に開いている胸元をチラリと見た。白い胸が見えるようだった。真島はの成長に戸惑っていた。

ちゃん、えらいべっぴんさんになったなぁ。桐生ちゃんがちゃんをここまで綺麗にさせたんやろか……?)

「真島のおじさん?」
が真島の顔を覗き込む。白い肌に大きな瞳の黒さが目立つ。
「な、何や。ちゃんやったんか。久しぶりやなあ」
「うん。久しぶり!最後に会ったのって、私が……小学校三年生の時だよ?」
「そうやったか?大きゅうなったなぁ。なあ、ちゃん、今、いくつになったんや?」
「今ねえ、十七歳になったんだよ」
「ほう。なら高校に行っとるんか?」
「うん。今、高三だよ。受験とかあるから大変なの。ところで、真島のおじさん、何しに沖縄に来たの?」
「ち、ちょっと桐生ちゃんにお願いがあって来たんや」
「そっかぁ」

は、真島が焦った様子をちらりと見て、それ以上話そうとはしなかった。真島が、のエコバッグとトイレットペーパーを掴んだ。
「ほれ、貸してみ。こないなモン、ずっと持っとったらしんどいやろ」
そう言うと、真島は両手にそれを持ち、大股で歩き始めた。
「ありがとう、おじさん。実は、結構、重かったんだぁ」
はクスクス笑い、真島のあとを早足で追った。を振り返った真島は、ニッと笑うと歩調を合わせた。

十分程歩くと、真島は桐生が営むアサガオに着いた。その施設は、波音が部屋の中まで聞こえるぐらい海に近い木造の平屋だった。
(これが桐生ちゃんが言うとった施設かぁ。桐生ちゃんは堅気になって、こない立派なことしよるんか。ホンマ偉いで……)

真島は、桐生に会えるという期待に胸を膨らませ、ゆっくりと門をくぐる。中庭では子供たちが遊んでいた。男子はキャチボールをし、女子は柴犬と遊んでいた。だが、真島に気づいた途端、子供たちは凍った。
今まで何度かヤクザを見た子どもたちだった。琉球街にあった暴力団の玉城組には、目の前でアサガオを破壊されたことさえある。真島はその組員たちよりも、一層怖く迫力があった。真島は子供たちを見渡した。男子は棒立ちになり、女子は庭の隅に集まり、びくびく怯えている。
その中で正義心が強く体格のいい太一だけが、真島を睨みつけながら、近づいてきた。

「おう、坊主。桐生ちゃんおるか?」
「俺、坊主じゃないよ!太一だよ!」
「おう、スマン、太一」
「おじさん、誰だ?」
その時、が会話を遮るように太一の前にやって来た。
「太一、失礼でしょ。この人は、真島のおじさんっていって、おじさんのお兄さんみたいな人なの」
「え?お姉ちゃん、そうなのか?ごめん、真島のおじさん」
「ええって。それより桐生ちゃん、どこや?」
「僕がおじさんを呼んできてやるよ!」

太一はそう言い残し、家の中へ走って行った。しばらくすると、アロハシャツに白のパンツをはいた桐生が大股で歩いてきた。

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真島吾朗と澤村遥の恋愛小説「般若の素顔と極道の天使」電子書籍化しました。無料でお読み頂けます。
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■本の内容■

アジア屈指の歓楽街、東京・神室町。この神室町の中央に六十階建ての巨大ビル、ミレニアムタワーがそびえ立っている。このビルには店舗やオフィスが入っていて、五七階に事務所を設けるのが、東城会直系真島組だった。東城会とは、関東一の暴力団組織であり、真島組はその中でも最大の組だった。その理由とは、真島組が建設業を営んでいるからである。

組長室では、組長の真島吾朗は、山のような仕事を抱えていた。いつもは、どんなに多くの仕事でもこなす真島だが、八月のうだるような暑さで、はかどらない状態でいた。最近、食欲もなく、ついに自分も年を取ったのかと思い知らされる。    
こんな中、いつも相談相手になってくれる渡世の兄弟である冴島は、網走刑務所で服役中である。真島は、黒の革張りのソファに深く座って、テーブルに足を置いている。

(ハァ……もう若かったあん頃には戻れんのかのぉ。昔に戻れるような刺激はないんか……)
宙を見つめて考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「入れや」
「親父、ちょっと見てほしいものあって」
入って来たのは組員の西田だった。
「何やねん。早よ見せろや」
「これなんスけど。前にうちの組が関わった沖縄リゾート開発の資料、もう全部始末してもいいッスか?」
 真島の目に白い砂浜とオレンジ色の夕日の画像が飛び込んでくる。
「そんなん当たり前に決まっとるやないけ。そないなこと、いちいち聞くなや、ボケ!」
「すみませんでした!」

西田が慌てて部屋を出たあと、先ほど見た美しい沖縄の風景が瞼に浮かんだ。沖縄といえば、真島と兄弟同然の仲の桐生が住んでいる。桐生は、元東城会四代目会長であり、崩壊の危機だった東城会を再びまとめ上げた伝説の極道とも言われている。真島は、彼を可愛がると同時にライバル視もしていた。桐生は、現在、極道から足を洗い、沖縄でアサガオという養護施設を営んでいた。

「そや、桐生ちゃんなら、今の俺に力を絶対くれるはずや……」
真島は呟くと、急いで組長室を出て、資料をシュレッダーにかけている西田に命じた。
「おい、西田。今日行ける沖縄行きのチケットを手配せぇ!」
「親父、今日金曜日ですけど、何か仕事が入ったんスか?」
「ちょっと桐生ちゃんに野暮用じゃ。はよ、つべこべ言わんと、予約せんか、ボケ!」
こうして西田にチケットを予約させた真島は、急いで沖縄へ発った。