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14. 真夜中の電話

十一月になった。秋も深まり、夜になると急激に冷え込む。リビングのエアコンは二十五度まで上げられていた。
真島は、ソファにずっしりと腰を下ろして書類を読んでいた。床暖房の温もりが、足に伝わってくる。
時計に目をやると、夜中の十二時を回っていた。
その時、携帯が鳴り始めた。ローテブルに置いてある携帯に手を伸ばすと、「」の表示を確認した。

「なんでちゃんが、こないな時間に?」
いつも真島は決まった時間に電話をかけている。桐生に見つからないようにするためだった。
真島は、急い通話ボタンを押して携帯を耳に押し当てた。

「どないしたんや、ちゃん?」
「遅くにごめんね」
「今、どこや?」
「アサガオの近くの砂浜にいる」
「なんで、そないなとこにおるんや?寒いやろ?」
「大丈夫。そんな寒くないから」
「ほんで、どうしたんや?」

真島は書類をソファに横に置き、身を乗り出した。
「あの、相談なんだけど……。私、高橋君に告白されたの。それで、きちんと断ったんだけど。高橋君のこと、私の親友が好きだったみたいで。それで、私が告白されたこと、バレちゃって……」
「高橋君って、あの席替えで隣りになったちゅうヤツか?」
「そう……」

真島には、高橋君の気持ちが少し分かるような気がした。の隣りに毎日いたら、惚れてしまうのは自然のことである。
そんな考えを振り払うように、真島は首を横に振った。
「ほんで、親友はどうなったんや?」
「私、その子にずっと無視されてるんだぁ。もう辛い……」
がすすり泣く声が聞こえてくる。
「泣かんでもええねんで。せやけど、なんでもっと早う言わんかったんや?」
「暗い話したくなかった……」
「何言うとんのや。よう聞いとき。俺、ちゃんのこと、おんぶした時に決めたんや。ちゃんの嫌なことや辛いことも全部背負ったるってな」
真島が携帯を握り締める手にぎゅっと力が入った。

「真島のおじさん……」
がひっくとしゃくり上げる声が聞こえ出した。
ちゃん、その友だちにメールや電話してもアカンのか?」
「全然ダメ」
「ほんなら一個だけ手があるわ」
「え?何?」
の声のトーンが上がる。
「あんなあ、手紙や」
「手紙?」
「せや、手紙をもろうたらなあ、字から誠意も伝わって来るし、その人の温度も感じるモンなんや。きっと、友だちもちゃんの気持ち、よう分かってくれるはずやで」
「手紙なら、子供の頃、お母さんや、おじさんによく書いてた。私、書いてみる」
真島は、の弾んだ声を聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。

「ほんなら、これでええか?早う帰り」
「うん。心配かけてごめんね……」
「うっ、うっ」と泣くのを我慢しているような声が聞こえてくる。
「なんや、また泣いとるんか?」
「ううん。大丈夫」
が間をおいてから言った。
ちゃん、心配せんでも、何も怖がることないんやで。本当は、すぐにでも、そっち行って傍にいてやりたいんやけどなあ。仕事が最近、メッチャ忙しいねん。堪忍やなぁ」
「真島のおじさん、ありがとう……」
「絶対、仕事がもうちょう楽になったら、また遊びにいくでぇ。待っといてな。それまでは、毎日電話とメールしたるからな」
「うん、……絶対だよ」
は、泣くのを必死で堪えるように鼻声で言った。

電話を切ると、真島は窓の外を見つめた。東京の夜景が宝石のように煌いている。
どうしては沖縄にいるのだろう。同じに日本にいるのに遠く感じる。
真島は、しばらく考えてから、また書類を読み始めた。
それは、少しでも仕事を早く終わらせて、に会うため――。
これが、今の真島に出来る精一杯のことだったのだ。

つづく

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