ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

ゴジラ2000 ミレニアム(1999年)

DATE

1999年劇場公開

監督:大河原孝夫   脚本: 柏原寛司  三村渉  音楽:服部隆之

キャスト  篠田雄二:村田雄浩  片桐光男:阿部寛  一ノ瀬由紀:西田尚美  宮坂四郎:佐野史郎  篠田イオ:鈴木麻由

観客動員数:200万人  配給収入16.5億円

内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊





【解説・感想】

 前作『ゴジラVSデストロイア』から4年。この『ゴジラ2000 ミレニアム』では、過去の作品とは世界観を共通しておらず、過去1984年版『ゴジラ』でそうしたように、これまでの設定をいったんリセットした映画になっている。ハリウッド版ゴジラの公開を機に、日本のゴジラの復活を望む声が強くなり、ゴジラ復活となった。ハリウッド版のゴジラはモンスターパニック映画としては秀逸な作品だったが、ゴジラ映画としては不評だった。日本版ゴジラのスタッフが、本物のゴジラを見せてやろうという意気込みで製作した映画だったと思う。結果的に、結構酷評されている映画になってしまったが、個人的にそんなに嫌いな映画ではなかった。少なくとも、日本とアメリカのゴジラ(あるいは怪獣)に対する捉え方の違いが出た映画だったように思う。

 ……嫌いではないと言っても、ツッコミどころが満載な映画なのは間違いないと思う。まさか、現代の映画でウェルズの小説に出てくるようなタコ型の宇宙人を見るとは思わなかった。ストーリーは正直薄っぺらいなぁと思ったものの、特撮に関しては平成板ゴジラシリーズを凌駕している。ハリウッド版ゴジラや平成板ガメラ3部作の影響も強く受けていると感じるし、実際受けているだろう。画の見せ方などはガメラを彷彿とさせた。

 何よりも、ゴジラは生き生きと暴れまわった。F-16のミサイルで倒されたハリウッド版をあざ笑うように、ビルをなぎ倒し、宇宙怪獣をものともせず。ただ、絶対的な怪獣に対する畏怖がゴジラ映画の本質とすれば、ゴジラ映画とはゴジラの破壊のカタルシスを楽しむ映画にすぎないのだろうか。

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【ストーリー】

 北海道・根室にゴジラが出現した。民間団体の『ゴジラ予知ネットワーク』を主宰する篠田は、娘のイオ、雑誌『オーパーツ』の記者でゴジラ取材に同行していた一ノ瀬由紀とともにゴジラを追跡。破壊の限りを尽くしたゴジラは、再び海へと姿を消す。

 時を同じくして片桐内閣官房副長官が率いる危機管理情報局(CCI)が茨城県沖で、不思議な鉱物を発見。引き揚げ作業の途中で鉱物は自発的に浮き上がっていく。それはまるで、自らの意思を持っているかのようだった。

 ゴジラの次の上陸地点が判明した。ゴジラの次の狙いは茨城県東海村の原発。片桐は、東海村で自衛隊とゴジラの戦いの指揮を執るために、現地に向かう。そこで、ゴジラの上陸を予知して東海村にやって来ていた篠田と出会う。両者は、かねてよりの知り合いだったが、ゴジラに対する考え方の違いからか、決して仲の良い存在ではないようだった。ゴジラ抹殺に自信を見せる片桐に、篠田は思わず呟く。
「本当にゴジラを倒せると思っているのか?」 
 ゴジラと自衛隊の戦いは、秘密兵器であるフルメタルミサイルなどを有する自衛隊優位に進む。怒りの咆哮を上げ、ゴジラが放射能火炎を吐き出そうとしたその時、恐るべきことが起こった。茨城県沖で発見された鉱物が、突如動き出したのだ。それは、東海村へ飛来し、ゴジラを吹き飛ばした。

 それは、いわゆるUFOと呼ばれる存在に思われた。CCIと自衛隊は、UFOを厳重な監視下に置いてその正体をつかもうとするが、UFOは再び起動。銀色のUFOの姿をさらすと、東京へと向かう。そのころ、篠田と片桐の部下の宮坂は、発見されたゴジラの細胞から、その驚異的な復元力の秘密、オルガナイザーG1の存在を確認する。

 UFOは東京へ飛来。シティタワーの屋上に陣取り、何かを調べているようだった。一ノ瀬はシティタワーに侵入し、UFOが何を調べようとしているのか調査に動くが、CCIはシティタワーに単一方向性爆弾『ブラストボム』でUFOを破壊しようと準備を始める。シティタワーから一ノ瀬を連れ出そうとした篠田は、UFOの目的を察知し、自らはシティタワーに残る。脱出した一ノ瀬とイオは、片桐に篠田が残っていることを伝えるが、片桐は意に介さずブラストボムの爆破スイッチを押した。

 しかし、UFOには傷一つついていなかった。シティタワーから生きて戻ってきた篠田は、UFOの目的が地球を自分たちの住みやすい世界にし、自分たちの国を作ろうとしていること。長い眠りの間に失われてしまった肉体をゴジラ細胞の中にあるオルガナイザーG1によって復活させようとしていることを突き止める。しかし、もはや人類に打つ手はない。そこに、ゴジラが東京に出現した。UFOへの復讐に燃えるゴジラ。ゴジラのオルガナイザーG1を狙うUFO。人類の想像を超えた戦いの火ぶたが切って落とされた。

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【映画の中の自衛隊】

 正直なところ、ゴジラシリーズの中で、ゴジラ対自衛隊をちゃんと描いた映画はこれで最後という感じがする。今回は、平成版ゴジラシリーズで出てきたような、メ―サー兵器とか冷凍兵器とか、トンデモ兵器は出てこない。貫通力を狙ったフルメタルミサイルが秘密兵器として登場しているが、実際に地下壕を爆破するためのバンカーバスターのような航空兵器も実在するので、対ゴジラ兵器としては結構、現実味のある兵器なのではないだろうか。ゴジラがこれまでにどのくらいの頻度で出現しているのかわからないが、こういった兵器が開発される(逆に対ゴジラ以外で使い道がある兵器だろうか)、あるいはゴジラ予知ネットワークのような民間団体(たぶん他にも同様の団体があるのだろう)が存在しているということは、ゴジラはかなりの回数出現しており、かなりのこと……少なくとも口から放射能火炎を吹くくらいのことは分かっているはずで、その割には、ずいぶん接近しすぎでは、などと思ったが。あんなに固まっていたらまとめてやられるだろうに。航空自衛隊の戦闘機が四方からミサイルを発射しさらにアクロバットで上昇していく映像は格好よかったが、いいのか……こんなに固まってしまって。

 映画の中で特筆すべき組織・人物として危機管理情報局(CCI)とその局長で内閣官房副長官の片桐光男の存在が挙げられる。内閣官房副長官は政務担当2名と事務担当1名で、事務担当は大抵旧内務省の事務次官経験のあるキャリア官僚から選ばれる。政務担当は当選回数の少ない国会議員がなる(時々閣僚経験のある国会議員が就くこともある)が、個人的にはこの片桐はキャリア官僚出身のような気がする。キャリア官僚出身ならたぶん警察庁出身だろう。このCCI、巨大な権力をもっており、危機管理と名がつけば原発を停めるほどの権限があるようだ。しかも、組織自体は片桐に私物化されているような感じがある。ひょっとしたらこの男、かつて、アメリカ大統領をはじめとする政治家や著名人のスキャンダルを盗聴や情報収集によって大量に集め、その情報をもとにFBI長官として何十年も君臨したジョン・フーバーのような人物だったのかもしれない。……仮にそこまでいかなくても、野心家の片桐にとって、CCIもゴジラも、自分の出世の足場くらいにしか考えていなかっただろう。人間にはどうしようもない圧倒的な災厄、畏怖すべき存在がある、というこのがこの映画のテーマだとすれば、片桐のラストシーンは、何となくあれしかなかった気がしてくる。自分の力がいかにちっぽけか思い知らされた男にとって、その力にたたきつぶされるラストは、ある意味本望だったのかもしれない。

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