ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

ゴジラVSデストロイア(1995年)

DATE

1995年劇場公開

監督:大河原孝夫(本編)  川北紘一(特撮)  脚本:大森一樹  音楽:伊福部昭

キャスト  山根健吉:林泰文  伊集院健作:辰巳琢郎  山根ゆかり:石野陽子  山根恵美子:河内桃子  三枝未希:小高恵美  黒木翔:高嶋政宏

配給収入20億円 観客動員400万人

内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊



【解説・感想】

 平成VSシリーズの最後を飾った映画。1954年版の『ゴジラ』を除けば、唯一明確にゴジラの死が描かれた映画である。シリーズ最終作ということもあって、敵怪獣は1954年版『ゴジラ』で使用されたオキシジェン・デストロイアによって復活した怪獣・デストロイアが最後の敵として登場する。1954年のゴジラへのオマージュと思われる場面もちらほら。しかし、1954年版ゴジラの場面を挿入した演出は、映画としての格の差を見せられる結果になってしまった。さらにゴジラの死を前面に押し出してしまったために、敵役のデストロイアが情けない敵になってしまった感じがある。

 ゴジラ死すということもあって、1996年の邦画の興行収入一位を飾るなど期待の映画だったことがうかがえるが、残念ながら映画としては失敗作。特に、同じ年に『ガメラ〜大怪獣空中決戦〜』の後となると特に。人間ドラマも充分描けているとは思えず、特撮も、ガメラの後では、箱庭の中のように見えるし、車も買い物客もいる街並み風景にゴジラを合成させただけというのは。これまでのゴジラシリーズらしいといえばらしいのだが。

 第一作のゴジラとのつながりを意識したオープニングや、ゴジラジュニアへの世代交代を印象付けるラストは印象的。ただ、崩壊していくゴジラの最期は、しばらく頭に残った。公開当時自分は中学生だったが、これは子供に見せないほうがいいだろうと思った記憶がある。

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【ストーリー】

 ゴジラたちが暮らすバース島が、突如消滅した。ゴジラも、リトルも姿を消してしまい、調査に赴いた三枝未来にも、ゴジラもリトルも見つけることができない。ところが、それからしばらくして、香港にゴジラが出現。しかし、その体や背びれは赤く発行しており、これまでのゴジラとは大きく異なっていた。1954年のゴジラ出現の時に最初にゴジラに遭遇した生物学者の山根博士の孫(正確には養子の子)の健吉がアメリカのGサミットにネットで送ったゴジラに起きている異変の論文のことが日本のG対策センターに伝えられ、興味をもった国友長官が会いに行く。最初は、協力に乗り気ではなかった健吉だったが、三枝未来が、プロジェクトに関わっていると知り、プロジェクトに参加する。その、三枝未来とは、初対面でリトルの死を発言してしまい、険悪になってしまったようではあるが。

 今のゴジラを攻撃すれば、それだけで核爆発を誘発する恐れがある。健吉はゴジラを科学的に葬るしかないと、オキシジェン・デストロイヤの製造と使用を主張し、姉でキャスターの山根ゆかりに伊集院博士と連絡を取るように依頼する。伊集院博士の研究は、オキシジェン・デストロイアの製造にあと一歩のところまで近づいていると考えられていたからだ。しかし、伊集院は研究にあと一歩のところまで近づいていることは認めながらも、その一歩先が極めて遠い道程であると言う。

 同じころ、東京周辺では異常が多発。東京湾横断道路で工事用パイプが消失。しながわ水族館では、水槽の魚が突如白骨化。かつてオキシジェン・デストロイヤーを使用してゴジラを死滅させた時、海底に眠っていた古生代の微小生命体が無酸素環境下で復活し、東京湾横断走路の工事で大気に触れて活性化した、異常生物だった。さらに、臨海副都心のビルをデストロイアの幼体が襲い、警視庁の特殊部隊が出動。十体を超すと思われる幼体デストロイアとの壮絶な死闘が繰り広げられる。伊集院博士は、デストロイアに火を使うことは、かえってデストロイアの活性化を促すだけだと警告に向かうが、特殊部隊を蹴散らした幼体デストロイアは逃げ遅れたゆかりと助けに入った伊集院に襲いかかる。

 その頃ゴジラは愛媛県の伊方発電所に迫っていた。自衛隊は核戦争を想定して製造されたスーパーX3を実戦投入。冷凍弾と冷凍光線、カドミウム弾を使い、ゴジラの動きを一時的に封鎖する。ゴジラは、カドミウムによる核抑制がひとまず効果が出て、核爆発の危機は当面回避されたかに見えた。ところが、ゴジラの体内温度の急上昇が確認される。このまま、ではゴジラがメルトダウン(炉心融解)を起こし、地球は死の星になってしまう。

 デストロイアからゆかりを助け出した伊集院博士の忠告で、デストロイアに冷凍兵器を利用した攻撃が実施される。効果があったかに思えたその攻撃によって、幼体デストロイアは合体し、40メートル程度の怪物と化して東京を襲う。そのころ、ミニサイズのゴジラへと成長したリトルが御前崎沖で見つけられる。それはもはや、ゴジラジュニアと呼ぶべき存在だった。バース島を失ったゴジラとゴジラジュニアは故郷のベーリング海へと向かおうとしていた。しかし、ゴジラのメルトダウンまであとわずか。健吉はゴジラをデストロイアにぶつけることを提案する。ゴジラジュニアをデストロイアに向かわせれば、必ずゴジラも向かうはず。三枝未来は反対するが、アメリカGサミットの小沢芽衣がこれに同調。ゴジラを東京に誘き寄せるために三枝未来と小沢芽衣のテレパシーでゴジラジュニアは東京へ向かい、デストロイアにやられてしまう。泣いているかのような声をあげ、激昂したゴジラにデストロイアはなす術なしかと思われたが、デストロイアも成体へと成長。ついに、地球の命運をかけた戦いが始まった。  

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【映画の中の自衛隊】

 ゴジラVSデストロイアでデストロイアに最初に対峙するのは警視庁の特殊部隊SUMPである。現実の警察や海上保安庁にもSAT(特殊急襲部隊)をはじめ、SIT(捜査課特殊班)、機動隊の銃器対策部隊、海上保安庁のSST(特殊警備隊)などが存在し、現実のテロ事件などではこれらの部隊が最初の対応をすることになるのだろう。ゴジラVSデストロイアの特殊部隊の武装を見る限り、明らかに対怪獣を意識したものになっており、映画の世界でも、いきなり自衛隊出動というわけではないようだ。

 1993年の『ゴジラVSメカゴジラ』、1994年の『ゴジラVSスペースゴジラ』で、巨大ロボット兵器を駆使してゴジラと戦ったG-フォースもさすがに予算不足となったか、『ゴジラVSデストロイア』では自衛隊に対ゴジラ、体デストロイアの主役を持っていかれ、ただの調整役となっている。その自衛隊は、今回は冷凍兵器なるものを駆使して戦う。……液体酸素でもぶっかけたのだろうか? 怪獣相手でも何だか可哀そうだ。冷凍メ―サーの原理がどうとか考えずにおこう。今回は、『ゴジラVSビオランテ』で活躍した黒木翔特佐が再登場し、スーパーX3に搭乗し、ラストではメルトダウンが始まったゴジラに対し、一斉冷却で被害を最小限に収めるために出動する。デストロイアは、結局、とどめを自衛隊に刺されたため、VSシリーズ最弱の怪獣の汚名をかぶることになってしまったが、DVDでは特典映像として、自衛隊に撃墜されたのちゴジラと最終決戦となりとどめを刺される場面が収録されている。ゴジラの死の前に、これ以上見せ場を作ることができなかったのかもしれないが……最後まで気の毒な怪獣だった。

 ところで、『ゴジラVSデストロイア』では、黒木翔特佐を演じているのは、ビオランテで演じた高嶋政伸さんではなく、弟の政宏さん。ところが、高嶋政宏さんは、2年前の『ゴジラVSメカゴジラ』で青木一馬役で主演を務めていた。しかも、戦闘機のパイロット役。なので、最後まで(というか、翌年、テレビで放送されるまで)、青木一馬だと信じて疑っていなかった。その他、国友長官を演じた篠田三郎さんなど、シリーズの別の映画に、別の役で出ていたことが結構多い。しかし……もう少しキャラクターの重みは考えてほしいものだと思う。

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