今月の一句:そぞろ行く天橋立秋の風

高知県吾北・稲叢山の「五葉つつじ」
■ 「蛙水・艶子・伝馬」親子3人の句集:「句春秋」

・ 親子3人の句集の名称は、父が書いた「句春秋」から取りました。(実際に使われている漢字は、「火」偏に「禾」の部首からなる漢字です。読みは「しゅう」、「集める」の意味で、そこから「秋」の時期をあらわす字として用いられたようです。残念ながら、ワープロで打ち出せません)。2枚目の写真をご覧ください。右手は、母の俳句メモと、合同句集「睦月」です。
・ フィリップの俳句の幾つかは、英語に訳しましたので、他のページに移しました。


■ 蛙 水

・ 畳目の一目一目と日脚伸ぶ
・ 春雨や葉末葉末の銀の玉
・ 老い桜昔を偲ぶよすがかも
・ 子連れ行く桜並木の土埃り
・ 春風に散るや馬券の屑の山
・ 芍薬に見惚れてひとり庭に立つ
・ 口紅もつけぬ妻なり春は逝く

・ 夏の夜をテレビドラマに興じけり
・ 真夜中に夏掛け布団たくしあげ
・ 廃船に小波寄せる初夏の海
・ 晩夏の夜妻雑事に余念なし
・ 窓明けて晩夏のネオン楽しめり
・ 過労ゆえの脚のむくみか晩夏の夜
・ 捨て扇筆一筋に書きなぐる
・ 豪雨禍の報に倅へ便り書く

・ 新涼の今朝はネクタイ締めて行く
・ 菊活けて己が自慢の床柱
・ 耳鳴りは絶えずしており彼岸花
・ ビルビルに残業の灯ともりをり
・ 朝寝して読書に更ける初秋の夜
・ 素畳に初秋の冷えを覚えけり
・ 赤トンボ知らぬ都会の子らもあり
・ 背曲げて縁に瓜切る秋日和
・ 秋澄むや洪水(みず)去りし街々愁いなく
・ 納屋裏は荒れしままにて柿熟るる
・ 草に寝て初秋の空に絶叫す
・ よしず小屋今はさびれて秋の雲
・ 民宿もさびれ浜に人の影もなし
・ 里の庭今年もたわわ柿熟す
・ 純白のシーツ干しあり葉鶏頭
・  ・ 只今と玄関入ればちちろ止む
・ 座布団の欲しくなる頃夜の冷え

・ 豪雪のニュースしきりに駅混雑
・ 雪に明け雪に暮れ行く北の町
・ 妻と語るこたつのぬくみ寒の月

・ 路地裏に獅子舞の来る賑やかさ


□ 父と母、それぞれの俳句ノート見つかりました。これで「蛙水」、「艶子」、そして「伝馬」と3人の春夏秋冬の句が出揃いました。

■ 艶 子

・ 子は常に歩幅を合わせ壷すみれ

■ 母の一番お気に入りの句のようです。ここに詠われている「子」は、誰のことだったのでしょうか

・ 春愁や紅茶の砂糖溶け溶ける
・ 葱坊主斑の牛の昼さがり
・ ゆずられし席あたたかし梅雨の冷え
・ 網走の友のぬくもり梅雨の文
・ 好きな道曲がりて通る木の芽時

・ すそわけの又すそわけの新茶かな
・ 万緑や動き続けの万歩計
・ 解禁の川黙々と遠嶺かな
・ 意志曲げぬ朝顔の白水をやる
・ 夏休みハッピが似合うバイト生
・ 夏休み家具置きかえて風の道
・ 引越しの仔犬さよなら朝曇り
・ リヤカーの氷り切る音日本橋
・ 追いかけて紙魚逃したり阿呆なり
・ 鉄線の白のこぼれて喪の帰り
・ ゴキブリに一瞬の殺意読経中
・ 満たされし一と日を記す竹風鈴
・ 駆け込みて帯びとくひまの暑さかな

・ 久方の友三人と葛桜
・ 時の日や二階と下に鳴る時計
・ コスモスにコスモスの風昼の月
・ ころがりし空瓶の数秋深む
・ 在りし日の夫思いて萩の庭

■ 母が俳句を始めたのは、父が天に召されてからのことでした。俳句を読んだ歳月は、父よりずっと短かったですが、句のレベルは大変高いように思いました。父の句は素直すぎですが、母の句は正に俳句といえるものがあります。

・ 表札の変わりて鍵の手かじかみぬ
・ 手袋の手が泣いている夕の風
・ 今年もまた桟いたわりて障子張る


■ 伝 馬

墨絵:牡丹の花

・  元朝やみことば受けて主を仰ぐ
・ 年初めエリヤの神を望み待つ
・ 雑煮膳祝う朝や静かなり
・ 主の聖名に誉め歌歌い初日の出
・ 七草を祝いて想う主の恵み
・ 元旦やみことば語るわが務め

・ 元朝にみことば語るわが務めかく素晴らしくかく重きかな
・ 御父と御子イエスとを知ることに真のいのち在りと知りたり

■ 新春の雰囲気は、宮中ではお歌会などがあって、俳句より和歌のほうが似合うようです。新しい年、心気一転、私も三十一文字に挑戦しました。15日に持たれた歌会始めの儀、今年の題は「生」とのことでしたので、その題でも詠んでみました。

・ 梅の香を求めて歩む土佐の城
・ 戦場に桜と散りし若き画家
・ 絵手紙を遺して終えし春の雨

■ 高知県立美術館において高知新聞主催の「無言館」展が開催されていました。第二次世界大戦当時、20歳、年配者でも30歳を少し越えたくらいの、帝国美術大で学んでいた画学生、応召で戦地に駆り出され、あえ無く戦死した画学生たちが残した作品展です。優れた才能を示す作品とともに、ひとりびとりの戦死の様が説明としてつけられています。見終わって外に出た時、春の雨にしては冷たい雨がそぼ降っていました。

・ 七十路に今一年の春うらら
・ 小綬鶏の鳴く声繁し祈る朝
・ 黄砂舞い筆山霞む春朧
・ 春雷や負けじと祈る神の民
・ 桃の花生けてこの朝主にまみゆ
・ 花曇任命受けて主と語る
・ 主の園や母健やかに花の雨
・ 花見行卆寿を越えし母笑顔
・ 花吹雪憂いもすべて飛び去りぬ
・ 鯉泳ぐ都会の川や水温む
・ 年会に集ってみれば桃満開
・ 主と共に旅立つ春や恵み満ち

■ 3年間の短い高知教会での奉仕を締め括り、鳥取の地に移りました。私たちのとっては、見知らぬ土地ですが、主の同行を信じて。

・ 烏賊釣りのともし火遥か春の海
・ 桜散る手を伸べ少女花を追う
・ 補聴器に人工レンズ緑映ゆ

■ 高知教会に着任して間もなく、白内障の手術を受けました。それまでは運転に少し苦労していましたが、手術後は標識がはっきり見えて車の運転が楽しくなりました。

・ 新緑や眩しき土佐の3年過ぐ
・ 新緑や仁淀に泳ぐ紙の鯉
・ 学院の静けき日々や衣替え
・ キリスト者みことば学ぶ走り梅雨
・ 初物の枇杷日曜の朝餉かな
・ 初鰹食らいて土佐の人となる     かつをのたたき 
・ 七変化竜馬に学ぶ心意気       あじさい街道、坂本竜馬
・ 紫陽花や心そぞろに名月院
・ よもぎ餅新茶携え友来る
・ 呼ぶ声や山桃を手に友たてり

■ 春野町まで奥さんを連れ出されたとのことで「丁度農協で売っていたから」と、高知の特産品・山桃を届けてくださる。「洗わずに塩をまぶして、今日のうちにね」とことばを添えて。 ご馳走さまでした。

・ 梅雨の入り孫も詠むなり五七五

■ 小学生の孫から来たメールには「しちへんげ梅雨の訪れ告げている」とあり、また、幼稚園児の女孫からは「おじいちゃんいつもえがおだやさしいな」とありました。

・ 隠れ湯の川面かすめて燕飛ぶ
・ 信玄や燕飛び交う阿智の里
・ 朝市のきゅうり手にして阿智の川
・ 浦富のビーチバレーや海開く

■ 7月19日、浦富海岸でビーチバレー大会が開かれました。礼拝に向かう途中で見た浜は、多くの若者で賑わっていました。牧谷海岸でも海の家の準備が整い、いよいよ本格的な夏の到来です。

・ 初蝉や鳴き声もなく地に生れぬ
・ 烏賊干しの網代港や夏陽射す
・ 夕闇や花火に見入るキャンプの子
・ 賛美あり花火もありてキャンプの夜
・ 聖会や肥後の朝顔露に濡れ     肥後の朝顔
・ 樹々静か風待ち月の暑き夕
・ 競い合う十七文字や夏の宴
・ 真夏日も四十九日で終わりける

■ 今年の高知の夏は、過去2年に比べて異常に暑く、7月4日に始まって、真夏日が49日間続きました。そして、1日途切れて、また翌日からは真夏日の再来です。

・ 大歩危峡下る二人の舟彩彩     大歩危・小歩危峡
・ 貫之の住処の跡や萩ゆれぬ     紀貫之、土佐日記
・ 国分寺お遍路憩う菊の庭       土佐国分寺
・ 朝焼けを横切て行きぬ雁の群れ
・ 孫迎え残暑厳しき庭に立つ
・ 孫と見る皆既月食雲切れ間
・ 鈴虫や籠あずかりて涼を待つ      鈴虫の飼い方
・ 禅寺や三門くぐり紅葉狩る
・ 教師会卓上飾る庭の菊
・ 手造りの味噌を味あう秋深し
・ 朝毎に柿味わいて友想う
・ 鈴虫の凛凛と鳴きて母ひとり
・ 五色台讃岐うどんに秋の空

■ 四国教区会が持たれ、今回は香川教会に赴きました。宿泊は「休暇村・讃岐五色台」で、部屋から見える瀬戸大橋の眺め、昼も夜も大変印象的でした。

・ 人去りてウミネコ浜に群れなしぬ<>br ・ しまなみの秋の陽浴びて海渡る
・ 金木犀香る夕暮れ城を出づ

■ 今治教会に奉仕に赴いた折、今治城しまなみ街道―その一区間を走ってみて―を見学してきました。

・ そぞろ行く天橋立秋の風
・ 雲に松海に道あり秋の夕
■ 車で川越に母を訪ねた帰途、京都府の天橋立に寄りましたが、往復5キロの道程を40分くらい、早足で渡りきりました。多くの観光客は、自転車で行き来していました。

・ 阿智の秘湯ひとり眺める朧月
・ 洗礼の恵み新たに秋桜
・ すすき立つ墓前に偲ぶ在りし日々
・ 木犀の薫る小道や土佐の宿
・ 蜜蜂も菊のトンネル潜り抜け
・ 一番の朝の冷え込み知事退任

・ 教会に亡き人偲ぶ冬浅し
・ 礼拝の朝蜜柑も色づきぬ
・ 異国の使者を迎えて冬立ちぬ
・ 聖誕の喜び溢れ歌となる
・ 恐れるな神偕にあり御子生れぬ
・ 聖誕のともしび揺れぬ奇跡の夜
・ 旅立ちの浴衣とどけし冬うらら
・ 貫之の日記始めし土佐の冬
・ 初雪の舞いし朝やラ・フランス
・ 遍路道雪を戴く県境
・ 骨拾う親子に迫る冬の夕
・ 渇水の早明浦ダムや春まだき     早明浦ダム

「句春秋」と父の俳句メモ


・ メニューの下にある小さな写真は、私が大学生時代に詠んだ句を、
私が外国に行って不在中に、父が毛筆で清書し句集として作ってくれたものです。
画面右手にある手帳は、父の俳句手帳で、ボール・ペン書きでびっしり、折々の句が書き記されています。



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 インマヌエル聖宣神学院教会 . . . Immanuel Bible Training College Church

武藤紀子の画廊。このリンクを辿ってゆくと様々な画廊のHPにリンクできます。

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