この頁の一首:  ・ 荒るる海眼下に見つつ朝餉摂る我が家の庭に寒椿咲く     愛馬伝師

わが家の庭の寒椿
■ フィリップの短歌集:「曲水の宴」:

 百首一人(ひゃくしゅ・いちにん)ですが、新たに設けました。

     ■ 「曲水の宴」と題しておきましたが、この題は、
フェイス・ブックのスレッドのスピーディな動きを、鑓水の流れに喩えてつけたものです。
フェイス・ブックのスレッドへの書き込みを短歌でと努力しています。その結果がこれらの短歌です。

     ■ 数年前までは、父の感化で、俳句を詠んでいましたが、
最近年をとって饒舌になったせいか、
十七文字の俳句より、三十一文字の短歌のほうに興味が移りました。
ここ数年間に詠んだ歌の数々を、ここに集めてみました。


■ 家族詠:

・001 ・母召され早二十年いつまでも     心の中に生き続けおり
・002 ・悩みつつ八〇年の人生を     生きしわが父今日の旅立ち

    ■ 父の天に帰った召天記念日(9/18)を迎え、詠んだ一首。「80年」と詠みましたが、それは数えで、満では79歳で閉じられた父の生涯でした。

・003 ・愛唱歌歌いつ天に天駆けし     義父の面影なお鮮やかに
・004 ・百歳を越えて今なおユーモアに   応えて笑う特養の(義)母
・005 ・川越に百歳越える義母訪ね     写真を見つつ昔話を
・006 ・妻待ちて只立ちおるは面映ゆし   カートを押して買い物の振り
・007 ・妻捜しスーパー中をウロチョロと  棚高くして視野遮らる

■ 季節詠:
鳥取砂丘ライト・アップ
 春:
・008 ・華やかな花のアレンジ大寒の    寒さ追いやり春を呼び込む
・009 ・木蓮の花芽膨らむその枝に     二羽のメジロのたむろしており
・010 ・恵方巻き食べて今年も運頼み    これではいかん奮起一番
・011 ・お雛様飾る季節の到来し      その表情に心和らぐ
・012 ・暦では今日は雨水となりおれど   朝のわが庭霜で真っ白

 夏:
・013 ・梅雨明けの宣言受けて夏休み    近くの浜は人で溢れぬ
・014 ・ベトナムの朝は如何にと思いつつ  迎えし朝は梅雨明けの青
・015 ・むくげ咲く庭を歩みし朝まだき   心の歌を声にしてだす
・016 ・パリの夏華やかなりと教えられ   パリへの想いつのるこの夏
・017 ・ガーベラの花の微笑むかに見えて  夏の暑さを乗り越えてきぬ
・018 ・突然の花火の音に箸を置き     食事中断スマホ手にする

 秋:
・019 ・台風の縦断予測       何事もなきよう祈る直前の朝
・020 ・株分けて春の開花を描きつつ    作業に励む十月の庭
・021 ・無花果の見事な大株贈られて    さてひと思案狭きわが庭
・022 ・落ち葉焚く白き煙のもくもくと   庭に流れて今日も始まる
・023 ・庭一面淡いピンクの野菊咲く    夕化粧とは誰が名づけし
・024 ・軒下に渋柿吊るし寒を待つ     因幡の国の晩秋風情
・025 ・残り火に細き白煙立ち昇る     加えし落ち葉燃えつあるらし
・026 ・庭仕事秋には春を春には秋と     半年先を生くるなり
・027 ・電線の唸る音色のひときわ高く     暴風圏に入るを知る

 冬:
・028 ・流氷の浜辺を洗う時期の来て     観光業者準備忙し
・029 ・下り坂アイスバーンでドリフトを     楽しむどころか怖さ一杯
・030 ・友人を迎えて共に大寒の     京都の町を嵐山へと
・031 ・久々に会議上京東京の     空青くして雪はなかりき
・032 ・十五度の最高気温を寒波だと言う     沖縄の人に呆れる

■ 自然詠:

(海)
・033 ・船舶の行き交う海峡波もなく     穏やかな朝繁栄の朝

(山)
・034 ・霊峰の湧き水汲みて茶をいれる     これぞ沼津の贅の極みか
・035 ・山並みの七重八重にと重なりて     青紫に染まりおりける
・036 ・大山の川原に張りしキャンプにて     虚弱な我を脱ぎ捨てにけり
・037 ・若き日を大山眺め過ごしたる     師の想い出は尽きることなし

(川)
・038 ・川面を真っ赤に染めて一日の     労をねぎらい陽の沈み行く

(街)
・039 ・古き街坂道多く情緒あり     されど住む人不便さ嘆く
・040 ・幾年を経たる椎の木     新しき場所に植えられ保存と決まる
・041 ・うどん屋の駐車場にはその店の     障子を通し明かり洩れ来る

(草花)
・042 ・朝露に濡れて首を下に向け     ひそり野に咲く青き花あり
・043 ・皇帝という名に恥じず青空に     真っ直ぐ伸びし紫の花
・044 ・苔むせる手水鉢にぞ紅葉散り     みどりと赤の織り成す模様
・045 ・名も知らぬ木なれど傍を通るたび     その黄色き実われの気を惹く

庭に咲いたシラー・ペルピアナ

■ 時事詠:

・046 ・香港の民主化叫ぶ学生の     数いや増して止どむ術なし
・047 ・中国船違法承知で近海に     宝石珊瑚求め集結
・048 ・ノーベル賞物理学賞受けたれど     平和文学両賞逃がす
・049 ・旅客機が打ち落とされて国々は     疑心暗鬼で非難応酬
・050 ・立ち退きを強いられ店を閉じる朝     35年の思い出後に
・051 ・ホンダ製国産ジェット機初飛来     日本の技術世界に誇る
・052 ・人の死はいつ訪れるか誰知らず     一人交通事故で俳優逝きぬ

     ■  終戦後、七〇年の歳月が経ったことを記念して、終戦前後の社会を歌にしてみました。

・053 ・被爆して七〇年の歳月が     静かに過ぎて今日も暮れゆく
・054 ・われの父キリスト信じ     この戦争は負けるぞが口癖なりき
・055 ・学童の疎開は群馬海蔵寺     スカンポ噛みて飢えをしのぎぬ
・056 ・桑の実で口を真っ赤に     染めし日は70年も前の出来事
・057 ・疎開地の蛋白源またご馳走は     山で捕らえし蛇のかば焼

・058 ・疎開より帰りて見れば東京は     見渡す限りただ焼野原
・059 ・学校は校舎も燃えて朝か午後     登校しても学ぶことなし
・060 ・箪笥より大島紬持ち出して     米に代えたり母の戦後は
・061 ・真昼間中学生の袖を引く     夜の女も闇市に立つ
・062 ・松葉杖つきたる白衣の元兵士     省線内に憐れみを乞う

・063 ・戦場にいのち捧げし義父と叔父     遺骨なきまま栄誉の帰還
・064 ・義母の手に手渡されたる箱一つ     桐にてあれど中は紙切れ
・065 ・わが家に復員したる叔父二人     下着の縫い目シラミ列なす
・066 ・大鍋に熱湯沸かしシャツ浸す     母の夜なべの果つることなし
・067 ・満州に倒れし叔父は軍医なり     その下の叔父知覧を飛び立つ
・068 ・戦争を再びせじと誓いしに     時代が変わり揺らぐ憲法

■ 信仰詠:

・069 ・礼拝を守り始めしこの週の営みすべて     主の手に委ぬ
・070 ・聖会の説教当務近づきぬ     主の前に出で憐れみ求む
・071 ・わが友の折れし心に添え木して     全き回復久しく待ちぬ
・072 ・病む友の便り手にしつ     戦いの中にある様知りて執成す
・073 ・信仰のまだ無きときに覚えたる     賛美歌今も心に響く

・074 ・引退の老骨なれど一つ群れ     預かり語る今日の聖日

■ 聖書詠:

・075 ・アモン人ダビデの使者の髭を切り     戦い覚悟で突き返したり . . .Uサムエル10:1〜7
・076 ・屋上で眼にせし美女を迎え入れ     他人の妻と知りつ交わる . . . .Uサムエル11:1〜4
・077 ・ダビデ王都を追われアブシャロム     彼に代わりてエルサレム入り . . . Uサムエル15:13〜18
・078 ・親子にて争い合える苦しみを     ダビデ家臣に打ち明け頼む . . . .Uサムエル18:1〜5
・079 ・シェバの女王ユダヤ訪れソロモンの     知恵に驚き宝石贈る . . . .T列王記10:1〜10

■ 作歌詠:

・080 ・厨房に立ちて野菜を刻む間も     心は歌の世界駆け行く
・081 ・旅すれば感性磨かれ新しき     歌次々に湧き出づるなり
・082 ・平安の都の人を想いつつ     日常会話歌にて交わさん
・083 ・無理難題押し付けられし思いして     歌のことばも見あたらざりき

岩美町・鴨の磯

■ 人生詠:

・084 ・誕生日迎えし君の祝福を     御前に祈る朝のひと時
・085 ・八歳の二度と来ることなき誕生日     おめでとう君おめでとう
・086 ・花活けて孫を迎える妻を見て     わが喜びも更に倍増
・087 ・仕事にも馴れて部活を楽しみぬ     ラケット求めテニス部に入る
・088 ・職安に通い見つけし仕事場は     社宅はあれど家に風呂なし
・089 ・焼きたてのロール整え子ども待つ     妻の気持ちの暖かさかな
・090 ・卒業の時を迎えしわが娘     登校前にその髪を結う

■ 動物詠:

・091 ・衰えを後姿に感じさせ     水辺に立てる愛犬のミカ
・092 ・巣を張れる蜘蛛を眺めてひと思案     払い除くか観察せんか
・093 ・ミカちゃんをホテルに預けこれで良し     明日の出立準備完了
・094 ・散歩道行く手決めるはガンボか人か     秋の陽射しをゆっくりと
・095 ・鳥になり飛んでゆきたし美味しげに     混ぜ合わされたるフィダーの餌
・096 ・喜んで迎えてくれた愛犬が     そっぽを向いて留守の不満を
・097 ・愛犬のつぶらな眼して見つめおり     何を求むかことばなきまま
・098 ・玄関に一羽の蝶の舞い来たり     あまりの暑さにしばし休みぬ
・099 ・百合の根を掘り起したるイノシシの     足跡見つけこの日始める
・100 ・温泉に浸りくつろぐニホンザル     何故かその顔知り人に似る

     ■  「愛馬伝師」 : これが短歌を詠んだときの私の作者名です。
宣教師名が「フィリップ」、「馬を愛する者」の意味だそうですが、
伝道者ピリポですので、それで 自称「愛馬伝師」 としました。

     ■  一応「百首」を選び、掲載しました。
これから、更に良いと思われる歌と入れ替える作業に掛かりたいと思います。

「句春秋」と父の俳句メモ


・ メニューの下にある小さな写真は、私が大学生時代に詠んだ句を、
私が外国に行って不在中に、父が毛筆で清書し句集として作ってくれたもので、和綴じになっています。
画面右手にある手帳は、父の俳句手帳で、ボール・ペン書きでびっしり、折々の句が書き記されています。



■ 印をクリックしてください。それぞれの箇所にリンクしています。

 インマヌエル聖宣神学院教会 . . . Immanuel Bible Training College Church
武藤紀子の画廊。このリンクを辿ってゆくと様々な画廊のHPにリンクできます。

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