「21世紀に向かう IGM宣教の展望」

宣教師会・講演:1999/10/27


  21世紀がどのような世紀になるのか、束の間の存在である人には、予測しかねる。それが困難な作業であることを弁えつつ、なお、それと取り組むことが要求されている。迎える次の100年間の全期間に亘っての展望をすることは無謀以外の何物でもない。それゆえ、展望は次の一世代くらいの範囲に限られる。

  総論的に:

  21世紀、既に今世紀後半に経験した民族主義の台頭、それへの関心の強さは依然として続き、その傾向は更に強まることであろう。それは、取りも直さず、それぞれに固有な文化に関心が向けられ、それはまた、それぞれの民族を形成してきた宗教のリバイバルにつながるであろう。福音の宣教にとって決してよい状況とは言えない。
  都市への人口集中、そして、それと比例しての都市から遠い地域の過疎化も、なお加速することが予測される。それに伴う失業、貧困、犯罪などの問題が、大きな課題となって、都市部の教会に圧し掛かってくるとともに、21世紀には、過疎地では都市部に勝って、老人対策が急を要する課題となる。少子化によって生じる労働力の不足が、福祉への労働力の集中によって更に増大される。伝道者・宣教師への献身者の興起は、現在にも増して、重たい課題となろう。
  IGMにおいては、今年(1999年)春改定された条例に基づく新しい体制がいよいよ来春始動し始め、指導者層の交代が頻繁になる。このことは、利点を考えれば、フレッシュな空気が群れ全体に流れる効果をもたらすであろうが、難点を指摘するならば、伝道・宣教方策の継続性が課題となりうる。方策決定の手順の選択とそのようにして決定されたものを継承してゆくことへの理解・合意が必要とされよう。国外宣教という分野の活動を推進してゆくには、指導者のビジョンと重荷、専門的な知識が不可欠である。
  現実の問題として、宣教師の何人かは年齢を加えてきている。もう後何期か奉仕を続けたとしても、協力団体であるウエスレアン、乃至、WGМの規定に従っての定年の年齢までもう手の届く年代に達しつつある。後継の宣教師を選び、整えて行くことは、宣教の継続のために必須といえよう。殊に、従来希望されつつも、なされてこなかった形態――即ち、後継の宣教師と先輩宣教師との共労の期間を設けるという形態――を取ろうとするなら、ここ数年が重要な意味を持つ。
  献身者数の減少、国内の伝道者諸師の高年齢化、また、逆ピラミッド型の人材構成に伴い、国外宣教のために人材を確保し続けるためには、与えられた使命に従って宣教を推進するための犠牲をよしとする姿勢が不可欠である。国内の必要を削ってでも国外の働きのために必要な人材を遣わすという姿勢がない限り、後退は免れない。
  こうした人材確保の困難に直面しつつ、現在働きがなされている(去る9月で、香港JCFでの当面の働きが終わったので)5カ国のステーションでの活動をベースとして、そこから更に周辺地域・周辺国へ働きを拡大して行くことが理想ではあるが、具体化への道筋は未だ見えてきていない。WGМのケニア・フィールドには、4人の宣教師が(2箇所に別れてではあるが)集中することとなり、IGМの宣教にとって大きな比重を占めることとなる。但し、医療宣教師など、直接宣教活動に従事しない宣教師の全宣教師数に占める割合は、絶えず心していなければならないであろう。ボリビア、台湾、フィリピンでの活動にしても、二組の宣教師がいてもよい状況で、現在の活動がなされてきている。
  ミャヤンマーのウエスレアンとは、将来の働きの展開を踏まえつつ、その関係を深めてゆきたい所存である。アメリカの日本語教会の働きの継承、そして、かってIGM宣教師が学び、また、労することが許された国、招きのあった国々――インド、パプア・ニューギニア、オーストラリア、ブラジル、インドネシアなど――への関心と重荷は依然として存在している。
  ここ数年、「広げた翼」の発行、宣教奉仕団の派遣、宣教師会議の開催、国外宣教局々員の増員、(そして、これは計画で止まったが)宣教師館の確保など、国外宣教を支援し、また、諸教会、個々の信仰者をそのために啓蒙する働きに重点をおいて、国外宣教局の活動をなしてきた。今後ともそうした面での活動は必要であろう。教団としても、帰国した宣教師を局長会に招き、直接報告に接したり、渡航前に会食を共にしたりして、理解し励ます機会が設けられたり、単に国外宣教局の働きではなく、全教団的な取り組みがなされている姿勢が、一層顕著になったことを感謝しなければならない。
  日本経済が常に右上がりの状態から、急下降線を辿り、銀行の不良債権処理など、なお立ち直るのに時間を要する現状にあって、以前のように、円ドル・レートの円高傾向に支えられて宣教師の生活費・活動費の手取りもまた増加する時代ではなくなり、宣教師へのサポート体制の見直しも必須となってきている。

各論的(各宣教地別)に:(この内容は転記・省略)

  多くの検討課題があるが、ビジョンと重荷のあるところには、また、道も見えてくることであろう。今回の「第3回宣教師会議」が、それに少しでも寄与するものであることを祈る。

■  神学小論文−そのW:伝道職の権威:「どこから、あなたはその権威を得ましたか」

■  神学小論文−そのX:「キリストの使節としての務めに任じられて」

■  神学小論文−そのY:「教職と信徒」

■  神学小論文−そのZ:「私たちの教会―教会論:その制度面から」

■  神学小論文−その[:「再び、教会の権威を巡って」

■  神学小論文−その\:「監督政体の理解」

■  神学小論文−その]:「監督政体について」

■  神学小論文−その]T:「祝祷について」

.                                   聖書の写本:日本聖書協会・前総主事の佐藤氏の提供


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